2人の安否
「良かったぁぁー」
部屋中にシーナの声が広がる。此処は魔王城の中の一室。永らく使われていなかった様で、少々埃っぽいが綺麗な部屋だ。この部屋にはベッドが2つあり、1つずつにリュークと、『黒風の魔人』ことライア・クローラーが寝かされている。勿論、きちんと傷の処置はしてあるが、まだ2人とも意識が戻らない。
その間に俺達は、『人魔大戦』後のドルス魔国の事を聞く事にした。俺とリュークの戦闘が終わったすぐ後に様子を見に来た、『四天王』を除く現最強の魔人、『幻影』の二つ名を持つテノム・コーアに聞く事にした。
テノムは紫色の長髪をしており、280歳のスタイルの良い女性で、大人の女、という感じの女性だ。彼女の案内で魔王城の一室を借りて、応急処置を施した、という事だ。
やっと命が繋がったので、シーナが声を上げたところだ。
「早速聞かせてもらうが、この国に何があった?」
「…まず、『人魔大戦』から数年、ドルス魔国は崩壊し、『四天王』も散り散りとなってしまい、国の復興は不可能に思えました。ですが、ライア様の賢明な努力の結果、魔人族が1人1人集まり、やっと1つの街程度には復興しました。が、国力は以前の4分の1もありません」
「…成る程な。此処まで国が回復しているのは『黒風の魔人』のおかげってことか。そういえば、ルドーはこの100年何やってたんだ?」
「私はこの数十年、ドルス魔国再興の噂を聞きつけ、機会を待つためにずっと逃げ隠れしてきた。実力を高め、各地の情報を集めていた。そんな時に、イリアが脱獄したという話を聞いて…」
「探してる所を、騎士団に居場所がバレたって事か…」
少しの沈黙が流れる。
「ですが、貴方方が来られる少し前、あの『朝比奈』という男が現れたのです」
少し前、テノムは魔王城内のとある一室で、ライアをはじめとした現ドルス魔国の中心人物達での会議を行っている。議題は、『黒氷の魔人』イリア・サナサードの脱獄についてだ。絶対に脱獄不可能と呼ばれる『大監獄・デスタード』からの脱獄。
何故、100年程経った今、脱獄したのか?それとも、やっと脱獄できた、という事なのか?それは分からないが、この脱獄についての事を話していた。
そんな時に、部屋の窓から何者かが侵入。けたましい破壊音と共に、机の上に着地した黒いローブを羽織った侵入者は、ライアの方を向き、青黒い剣を創り出し、ライアに斬りかかった。ライアはそれを躱し、蹴りを入れようとするが、それを侵入者は容易く受け止め、ライアを投げ飛ばして魔王城外まで吹き飛ばす。それを追って、侵入者も外に出ていった。
「それから、少しの戦闘が続き、結界外までライア様が吹き飛ばされて、そこまで行ってみると…」
「成る程な…」
そこで少しコウヤは考え、1つ策を考えついた。その時、
「ねぇ」
シーナが話しかけてきた。
「ん?なんだ?」
「これから、どうするつもりなの?」
まぁ、当然だな、と思いながらもきちんと答えてやる。
「既にプランはある。だが、取り敢えずリュークと『黒風の魔人』ライアが意識を戻すまでは此処に居ようと思う。色々見て回りたいしな」
そう、此処ドルス魔国は、この次元の国において、俺が唯一正確な情報を得ていない国だ。他はレースティリ王国の図書館で知っているのだが、ドルス魔国だけは情報が無かったかのだ。だから、情報を得ておきたいというのもあるし、さっきから気になっている事があるので、それも調べることにする。何故情報が無いかというと、一般的には情報規制とされているが、実際は違う、と前にルドーに聞いた。
なんでも『人魔大戦』時、ドルス魔国に人族は誰1人として足を踏み入れていないという。理由は、どんな危険が待っているのか分からないので、遠距離魔法のみを使用して国を破壊したのだという。それが幸いして、ドルス魔国に潜んでいた魔人族によって魔王城を守り切ることに成功したとの事。『幻影』と呼ばれるテノムが魔王城を破壊した様に見せかけた事もあり、それ以来ドルス魔国に人族が来る事はなくなったという。
「そ、そうなんだ…」
なんかシーナの顔が赤くなっているが、泣いていたからか、と結論付けると、イリアの顔も少し赤くなっている様に見えたのだが、これは気の所為だろう。
次回、三章最終回です。




