再戦
「殺すって…なんで!?」
シーナの悲しみのこもった声は、普段のリュークであれば相応の対応を確実にとっている筈だが、今のリュークにはその余裕は無いようだ。
「シーナ様。今の話を聞いて殺意を抱かない魔人族の方が少ないでしょう」
「っ!?イーちゃんは?!」
シーナの焦った声がイリアに問いかける。イリアは少しうつむきながら、答えた。
「…殺意が無い、と言えば嘘になります…ですが、私は彼に助けられています。本心で助けようとしたのではないのかも知れませんが、私が彼を殺す事は出来ません」
「私もです。彼の本心がどうであろうと、私は彼に命を助けられました。私が彼を殺すのは無理です」
イリアに続いてルドーも本心を話した。
「そうか…だが、俺はこいつを許す事は出来ない。ここで殺す」
リュークのその言葉を聞いたシーナは、それ以上何も言えなかった。
「…そうか。なら、殺してみろ…俺を…」
俺は『魔滅』を抜き、戦闘態勢をとる。
「お前が俺を倒せたら大人しく死んでやる。だが、俺が勝ったら言う事を聞いてもらう。いいな」
「…良いだろう。再戦だ」
その言葉と共に、リュークも戦闘態勢をとる。それを見たシーナ達は俺達の周りから離れた。
「…いくぞ!」
リュークはそう叫び、『魔力状態』を発動して向かってくる。
「『剣威装・魔力破壊』」
俺は向かって来たリュークを【炎の剣】ごと『魔滅』で両断した。
だが、両断されたリュークは粒子状になって、消滅した。
「これは…」
次の瞬間、地中から黒炎がコウヤを襲った。それをコウヤは後方に跳んで避けた。
「この地中からの攻撃、仕返しのつもりか?」
コウヤがそう言うと、コウヤを攻撃した黒炎が徐々に形態を変え、リュークになった。
「まぁ、そうだな」
「…」
リュークの【火の状態】の能力をもう一度振り返る。
奴の【火の状態】は文字通り自らの身体を火に変える魔法。発動する火属性魔法の威力が跳ね上がり、一切の攻撃が通用しなくなる。あくまで魔法なので、コウヤの『魔力破壊』は通用するのだが、身体の攻撃を受ける部分だけを消失させる事で避けてみせた。
だが、今リュークが使用した火が黒。これは、火属性魔法の覚醒であると考えられる。『四天王』達は雷以外のそれぞれ違う魔法属性を持っており、全員が属性魔法を覚醒させている。
レースティリ王国の図書館にあった情報が正しければ、リュークが使用する黒炎は、発火した物が燃え尽きるまで消えないという。奴の【火の状態】さえ覚醒するのだとしたら、厄介なことこの上無いだろう。
あの黒炎がもし俺の全身を包めば、『自動再生』でも再生し切れない。
(…こいつは…俺を殺しうる数少ない人間の一人…か…)
「それ、なんて言うんだ?」
その魔法名を聞いてみた。
「【黒・火の状態】だ」
「…そうか」
「【黒・炎の剣】」
黒炎の剣を2つ創り出したリュークは、先程と同じ様にコウヤに迫る。それを見たコウヤもリュークに迫る。そしてそのまま、2人の剣が重なるかに思われた。
「…!」
(剣がすり抜けた?)
コウヤの剣がリュークの剣をすり抜けたのだ。そして、そのままリュークの剣がコウヤの胸に迫る。同じ様に、コウヤの剣がリュークの胸に迫る。だが、剣がすり抜けた瞬間、リュークの剣が伸びる。いや、リュークが伸ばした。
(こいつ、これが狙いか)
リュークの剣がコウヤの胸に突き刺さる、というところで、コウヤが胸の部分に小さな『破壊の盾』を発動し、リュークの剣を消滅させる。
「チッ…」
今度はコウヤの剣がリュークの胸に突き刺さろうとするが、リュークはその部分だけの身体を消滅させ、攻撃を避ける。
「…」
「【黒・炎の爆散】」
「っ!」
コンマ数秒後、リュークは自分の身体を爆散させた。コウヤは『破壊の盾』でそれを防ぐ。
「…」
(なるほど、爆煙で俺の視界を潰すのが狙いか…)
すると、周りに炎のビームが降り注ぐ。コウヤは自分に直撃するものだけを魔力破壊で消滅させる。徐々に煙が晴れてゆくと、コウヤの周りには数百人のリュークが居た。
(こいつ、分身も出来るのか…)
そう関心していると、リュークの分身全員が【黒・炎の光線】を放ってくる。コウヤはその全てを『破壊の盾』で防ぐ。
「【黒・炎の網】」
すると、上空に居た1人のリュークが大きい黒炎の網を放ってきた。それも同じ様に『破壊の盾』で防ぐが、更に【黒・炎の網】を放ってくる。それもコウヤは防ぐが、今度は大量に【黒・炎の網】を放ってくる。
(なるほど、常に広範囲攻撃を行うことで俺の『魔力破壊』を常に発動させる事が出来る、か。で、あれば次は…)
更に、リュークは地中を含めた全方位から【黒・炎の網】を放ってくる。それを予想していたコウヤは、上空に跳ぶ。
「『破壊の球体』」
自分を覆う様に魔力破壊の球体を発動し、リュークの全ての攻撃を防ぐ。そして、
「『乱・破壊の爆散』」
『破壊の爆散』を無数に発動させ、リュークの分身体を全て消滅させ、残りは傷ついたリューク本体だけとなった。
(それを…)
「待っていたぞぉぉぉ!」
そうリュークが叫んだと共に、コウヤの『破壊の球体』内に黒炎の球体が現れる。
「っ!?」
(なに…!?)
「【黒・炎の爆散】」
黒炎の球体が全て爆発した。
(どうだ!)
赤黒い球体はその爆発と共に消失。そして、その内側に居ると思われるコウヤの姿が煙の中から出てくるのをジッと待つ。
「残念」
「っ!?」
背後からその声が聞こえた瞬間、自分の胸から赤黒い剣が突き出てきた。
「なん、だと…」
吐血し、そう呟いた。意味が分からなかった。何故此処にこいつがいるのか、分からなかった。
「…教えてやろうか?」
「まさか…」
「そう。分身だ」




