朝比奈 裕翔
「…朝比奈?」
俺の動揺はかなり大きかった様だ。自分ではそこまでとは思わなかったが、少なくともリュークには俺の動揺に気づいた様だ。
「…知っているのか?あの男を?」
「…あぁ。俺の…」
「俺の?」
「友だった男だ…」
「なに…?」
リュークと会話をしていると、話が終わらないうちに、『朝比奈』が話しかけてきた。
「コウヤ、僕の言いたい事は…分かるよね?」
「…お前の言いたい事は、分かっているつもりだ…」
「そう。なら、」
すると、『朝比奈』は掌に青黒い色の剣を創り出した。そして、その剣をコウヤに向けた。
「死んでくれるよね?」
「…悪いが」
俺も魔力破壊で剣を創り出す。
「ここで死ぬ訳にはいかない。あいつとの約束の為にも…」
「あいつだと…」
俺の言葉を聞いた『朝比奈』は、明らかに声色を変え、怒りを露わにしていた。
「お前が…彼女を語るなっ!」
その咆哮は、リューク達『四天王』や、シーナに恐怖を与えるものだった。その咆哮は、今までに俺が聞いた事のないものだった。明らかに、俺が知っている『朝比奈 裕翔』ではなかった。
「そんな事を言う権利は…お前には無い」
そのコウヤの声は、裕翔を超える恐怖をシーナ達に与えた。
「お前は俺を殺したいと、そう思っているのか?」
「そうだ。もう、あの時とは違う!」
そう言うと、裕翔は自分の周りに青黒い球体を創り出した。
「分かるだろう。この『魔力封印』の力を!」
(あの『朝比奈』とかいう男のアレは…確かにこいつの力と似ている。…一体、どういう関係だ?)
リュークがそんな疑問を持っているが、コウヤはそんな事を考える事は無かった。唯、
「そうか…奇遇だな。俺ももしお前が生きていたら、殺そうと思っていた」
瞬間、空中で2人の剣が激突した。爆音が鳴り響き、その振動が離れていたシーナ達にすら伝わる。
「なんて力のぶつかり合い…ここまで衝撃が伝わるのか」
その力のぶつかり合いは、『四天王』のそれすら凌駕するものだった。これは、魔王様に匹敵するかもしれない。そうリュークが考えた時だった。
「そ、そんな…まさか…こんな……」
「シーナ様?どうしました?」
そのリュークの問いに、震えた声でシーナは答えた。
「あの人、似てるの…」
「?…誰に?」
「…!」
剣の衝突と同時に蹴り。
「…」
その俺の蹴りを直撃された裕翔は吹き飛び、地面に激突する。
「終わりだ」
そのまま拳銃を取り出し、『魔力破壊』の銃弾を放つ。
「『封印の盾』」
それを裕翔は青黒い盾を創り出し、防いだ。
「…!」
「甘いよ、コウヤ。言ったはずだ。前とは違うって」
その言葉が聞こえたと同時に、周りに青黒い球体がいくつか浮かんでいるのに気づいた。
「これは…」
「『封印の爆散』」
その宣言と同時に全ての青黒い球体が爆発した。その威力は、コウヤの『破壊の爆散』の威力を超えていた。
「『破壊の盾』」
自分を覆う様に発動し、攻撃から身を守る。
「破壊の盾』を解くと、
(っ!後ろに…!)
裕翔は既に俺の背後にいた。それを気配で感じ取った俺は、振り向きざまに『破壊の剣』で首を狙う。それを予想していたのか、裕翔は身体を逸らして俺の攻撃を避け、その勢いで俺の顎を蹴ろうとする。
俺の顎を狙ってきた裕翔の右足を、左手に持っていた拳銃を瞬時に手放して掴み、左側に投げ飛ばす。その隙に俺は『魔滅』を抜き、『破壊の剣』を裕翔に向かって投げ飛ばす。
「『封印の波動』」
裕翔は直ぐに体制を整え、青黒いビームを放ってきた。その威力は、投げ飛ばした俺の『破壊の剣』を消滅させる程だった。瞬間的に『魔滅』に『魔力破壊』を纏わせる。
「『破壊の斬撃』」
裕翔の青黒いビームを切り裂き、斬撃は青黒いビームを抉りながら裕翔に向かって進んでいく。
「『封印の斬撃』」
その攻撃で、俺の斬撃が2つに割れる。そして、裕翔の放った斬撃が俺の首を刈り取った。と、同時に裕翔の近くにあった2つに割れた『破壊の斬撃』が爆発し、裕翔の両腕を吹き飛ばした。
「「…!」」
瞬間、コウヤの頭と裕翔の両腕が再生する。
「確かに…昔とは違う様だな…」
「コウヤもその強さ。最早人間のレベルじゃないね」
「ぬかせ。少なくとも、俺より強い人間を俺は知ってる」
「へぇ。そんなのがいるんだ。会ってみたいな」
「…1つ質問をする。お前が――
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少し時間は遡り、先程のシーナの会話に戻る。
「あの人、似てるの…」
「?…誰に?」
「…お父様を殺した…黒いローブの人に…」
「「「なっ!」」」
その言葉を聞いた『四天王』の3人は、全員が驚きの声をあげた。無理もない。何故なら、彼らはシーナを除けば、最も先代魔王と親しいものたちだからだ。だからこそ、彼らは『人魔大戦』を始め、全世界を敵にまわしたのだ。
とすれば、あの『朝比奈』という男が、この100年間の魔人族の不幸の元凶と云える。その答えに辿り着いた時、3人には、個人差があれど、殺意を抱いた。
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――先代魔王を殺したのか?」
その問いは、裕翔にとって意外なものだった様で、驚いた様にこう発言した。
「へぇ。流石だね」
「…そうなんだな?」
「あぁ。僕が先代魔王、デスト・ロードを殺した。ついでに言うと、シーナ・ロードの死体偽装をやったのも僕だ」
「…『神』についたってことか?」
「…あぁ。僕は今、『神』の命令で動いている」
数秒間の沈黙が訪れる。コウヤと裕翔は、互いを見つめ会ったまま、動こうとしない。だが、先に動いたのは裕翔だった。
「もう、今日の任務は果たした…帰るとするよ」
「…」
「…次会った時、その時こそが、君の死だ」
「…その言葉。そっくりそのまま返してやる」
「…じゃあね。コウヤ」
裕翔がそう発言した後、裕翔の右側に『穴』が開かれる。その『穴』に裕翔は入っていく。そして、裕翔がコウヤの視界から消えた時、『穴』は消滅した。
初めて、地球にいたコウヤを知っている人間であり、かつての友、朝比奈裕翔の登場回でした。裕翔は、コウヤと深いつながりを持っており、物語の最重要キャラクターの1人で、最強レベルの実力の持ち主でもあります。唯、当分登場しません。




