合流
『光速』と呼ばれる当代騎士団団長。どんなスピードかと思っていたが、せいぜい音速に届くか、というところだ。当然、光とのスピードの差は天地以上の開きがある。
俺の視覚は、発砲された銃弾を捉えられる。それも、魔力破壊に目覚める前、地球にいた頃からそれぐらいは出来た。更に今は魔力破壊によって五感が強化されている。今の俺に捉えられない訳がない。そして今の俺の実力であれば、タイミングを合わせてカウンターを打ち込める。
俺はヘルトの腹に膝蹴りを喰らわせた。殺してしまう訳にはいかないので適当に手を抜いた。
「がっ…」
蹴られたヘルトは口から血を吐き出した。そしてその威力から少し空中に静止。そこに今度はかかとで蹴りを喰らわせた。ヘルトはもう一度口から血を吐き出し、今度は地面を抉りながら数十メートル後方まで吹っ飛んでいった。
まぁ、これで死ぬとは思えないので、そのまま固まって動かないでいる他の騎士団達に向かって、こう言う。
「もう一度言おう。魔王は復活した!ドルス魔国も復活する!かつての様な栄光を取り戻す!大国のトップ共に伝えろ!魔王復活を!ドルス魔国再興を!この、死神の名を!」
それだけ言うと、俺は『黒土の魔人』を抱え、シーナ達の元に向かった。シーナ達の元に向かう途中、唯の1人の追っ手も俺の元には来なかった。
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「どういうつもりだ!」
『黒炎の魔人』リューク・トライエルの怒りの言葉が俺の耳に入ってくる。と、いっても大きな声ではなく普通の会話程度の大きさだ。だから、シーナやイリアには聞こえていない。
彼女らは、今『黒土の魔人』ルドー・トーラーの容態を見ている。魔力が尽き、『魔力状態』を発動出来ない状態で、重傷を負っている。このままでは死んでしまうだろうと思ったので、イリアの傷を治した時のように、俺の血液を使って傷を癒した。命の心配は無いが、それでも心配な様で、色々やっているのだ。
だが、リュークは別だ。俺を完全には信用していないので、ここまでの経緯を聞いてきた。これが普通の人間の反応だろう。彼女らが人を信用し過ぎるのであって、リュークの反応が普通だ。
元々話すつもりだったので、包み隠さず話した。で、今の発言だ。
「魔王復活?ドルス魔国再興?死神?ふざけるな!お前は魔人族では無い!」
何も分かっていない様なので、こんな事をした理由を伝える。
「…とりあえず聞け」
強めに言うとリュークは黙ったので、そのまま話す事にした。
「いいか、俺やシーナの目的を達成するには幾つか条件がある。そして、ドルス魔国を復活させる事が1番の近道になる」
まず俺達、いや、俺の目的を達成させるには、『神』に直接的に接触する事が必要となる。その為の条件だ。以前、シーナにも話した通り、『神』の目的である魔人族の絶滅を防ぐ事で『神』の刺客を呼び寄せ、その刺客を殺し続け、『神』自身が出て来ざるを得ない状況を作り出す、というものだ。
このプランの第一段階、神の刺客を出来るだけ早く呼び寄せる為に、ドルス魔国を復活させる。これが成功すれば、餌1人より、遥かに早く刺客を呼び寄せる事が可能だ。
それを何故、大国のトップ達に伝えるのか?それは、100年前と同じく大国と同盟を結ぶ為だ。目標としては他の3つの大国全てと同盟を結びたい。その為に、『死神』という実力者の存在、『四天王』の集結をアピールする事で、国力も見せつけ、同盟を結び易くした。
では、同盟を結べればどうなるのか?かつて『神』は『人魔大戦』を引き起こし、人間同士で戦争を起こさせ、魔人族を滅ぼそうとした。今回の『神のゲーム』もそうだ。『神』は出来るだけ、自分と関わりの無い人間を使って魔人族を滅ぼそうとしてきた。
今回も、最初はそんな方法で魔人族を滅ぼそうとしてくるだろう。そこで同盟を結ぶ事で、『『神』の刺客、または『神』自身が出て来ざるを得ない状況』を作り易くする。
あとは戦力、という点でも同盟は結んでおきたい。仮にも相手は『神』。俺には予想もつかない力や、俺達を圧倒する力を持っているかもしれない。
と、いう様な内容の話をリュークにした。
「…確かに…お前のいう通りなのかもな…魔王様の長年の夢を果たす、という意味でも…」
「まぁもう色々したし、そうするしか無いんだがな」
「だが、他の皆が納得するかどうかは…」
「多分大丈夫だろう」
「何故言い切れる?」
「イリアは、少なからず俺に恩を感じているだろう。同じく『黒土の魔人』も俺に助けられた、という借りがある。4人中3人が賛成なら、残る1人の『四天王』、『黒風の魔人』も了承するだろう」
「…流石だな」
そこまで話し終えると、イリアとシーナにもリュークにしたのと同じ話をした。当然シーナは了承したし、俺の予想通りイリアも了承した。まだ『黒土の魔人』の意識は戻らないが、そのうち起きるだろう。いつまでもここに居ては見つかる可能性があるので、移動する事にした。




