ドルス魔国へ
「無自覚ドMって、何でそんな事が分かる」
「……あれは…拷問の訓練をしていた時だった…」
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「今回の訓練はかなりキツい!心してかかれ!」
「「「「はっ!!!」」」」
今日は魔人族の兵士が全員参加の、魔王様直々のご指導を受けられる有り難い日だ。とても喜ばしい事なのだが、面倒だと思っている者がいる、という噂を聞いた。本当にあり得ない事だが、今日の午後調査する事にしよう。
拷問の訓練とは、主に痛みや苦痛などの訓練だ。捕縛された時などに、情報を渡さない様にする為だ。この様な訓練をするのには理由がある。
最近、魔王様が人の国との同盟を結びたい、と国民全員に宣言された。これが成功すれば、魔人族の立場は飛躍的に上がる。そうなれば戦いも減るだろう、と魔王様は仰っていた。現実はそこまで甘くはないのだが、その『理想』を叶える為に魔王様は頑張っておられる。
ならば、『私』がそれを反対する意味は無い。その『理想』を叶える為にも、実力を上げておくのは無意味じゃない。『理想』を叶える為には、多少の犠牲が必要だ。その犠牲を減らす為にも、日々の訓練を怠ってはならない、と思っている。
そして、拷問の訓練が始まった。なお、訓練によって付いた傷は各自が『魔力状態』を発動するので問題無い。人の世界では『魔力状態』を使える者は少ない様だが、魔人族の兵士達は全員が発動出来る。
「…!?」
「ん?何だ?」
その最中、予想だにしない事が起こった。私達『四天王』や、魔王様は気付いるのだが、少々異変が起こっている。
『四天王』の1人で、『黒氷の魔人』と呼ばれるイリア・サナサードだ。爪を全て剥ぎ取られ、片目を抉られ、胸に深々と剣が突き刺さっているというのに、痛がったり苦しんだりするどころか、顔を赤らめて、呼吸が荒くなっている。
「一体どうなって…」
明らかに異常なのだが、訓練中なのでどういう事か聞く事も出来ない。いや、そうだと気付いているのだが、信じたくない。そうであって欲しくない、という思いで、みんな聞かないのだ。そんな心境なので、顔が少し引きつっている。魔王様でさえ。ここにシーナ様がいなかったのは、不幸中の幸いといえるだろう。
取り敢えず、他の兵士にバレる前にここから離れて貰おう、という事を魔王様や残りの『四天王』とアイコンタクトを取り、最初からそうするつもりだった様に全員で動く。
「こ、今回の訓練はこれで終了だ!各自、帰還しろ!」
「え?ほ、本当ですか!魔王様!」
1人の兵士が声をあげた。今は午後2時。いつもは夜中まで訓練をしているので、疑問を持つのは当然だろう。
「あ、あぁ。今回の訓練はこれで終了だ…」
歓声があがった。正直全員ぶん殴ろうかと思ったが、今はそんな事をしている場合じゃない。速く全員をここから離れさせなければ。
そんな心配をしている間に兵士は1人残らずいなくなっていた。殺意がこみ上げてきたが、なんとか気持ちを落ち着ける。
その後、イリアから剣を引き抜き、魔王様が傷を癒す。イリアは大量の汗をかいて涎を垂らしながら気を失っていた。普段のイリアからは想像もつかない姿だった。
いつものイリアは、冷静沈着でクール。THE頼れる女の人、という感じの女だ。戦闘中でも、常に冷静。相手を分析して、勝利への道を探し出す、というバトルスタイルからしても、その人間性が分かる。
取り敢えずイリアをベットに運び、意識が戻るのを待つ。
数分後、イリアが起きた。何も無かった様な顔で話し始めるので、こいつヤバイな、と思った。
そこで、私はアイコンタクトで自分のメッセージを魔王様に伝える。それを感じ取られた魔王様は我々を解散させた。私の考えた事は、このことをイリア自身にも知られない様にすることだ。その方が何かと都合が良い。
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「つまり………お前の所為か…」
「なぜ私の所為になるっ!!ふざけるな!」
「お前がイリアにきちんと自覚させていれば、こんなふざけた事にはなっていない」
「くっ…」
丁度、俺がリュークを言い負かしたところで、シーナが話しかけてきた。
「コウヤ君、これからどうするの?」
「…『四天王』二人と合流出来た。一先ずドルス魔国に行こうと思うが…」
「そ、そんなんだ…ふう〜ん、そうなんだ……」
シーナは嬉しそうにしながらも、俺に知られまいと必死で隠している様だ。バレバレだが…。
「良いな?」
リュークはともかく、イリアにはちゃんと確認を取っておく。
「はい。構いません」
(こんな人格者が…残念だ…)
「はぁ…」
周りの人間を見てると、本当に溜息が出る。
第2章完結です。




