侵入
『四天王』2人目、登場です
『黒氷の魔人』イリア・サナサード。『四天王』の1人として『人魔大戦』に参戦。数十年前、騎士団との戦闘に敗れ、捕縛。以来数十年間『大監獄・デスタード』に幽閉されている、人間ランク黒の女。
そんな奴をイーちゃんなんて呼び方をするのは、俺の目の前にいる馬鹿な魔王ぐらいだろう。
「それでコウヤ君。どうやってイーちゃんを助けるの?簡単に入れないと思うけど…」
「ああ。『大監獄・デスタード』は、今まで囚人を1人も脱獄させていない。それどころか侵入出来た奴すらいない。まさに、鉄壁ってやつだ」
「居場所が分かっていると言っても、あそこへの侵入は容易では無い。どうするつもりだ?」
怒気を含んだ声で、リュークは俺に問い掛けてきた。俺を試そうと言う事なんだろう。
「『大監獄・デスタード』が鉄壁足り得るのは、騎士団による24時間365日による見張りと、監獄を常に覆う『感知結界』によるものだ」
「そんな事は分かっている。俺はどう侵入するかを聞いている」
結界は魔力そのものを放出して発動する。その種類は多く、無色透明なものや目視出来るもの。普通に通り抜けられるものや触れるだけで腕が吹き飛ばされるものもある。結界は魔力を放出しているだけなので、あくまで魔法ではない。
数十人によって常時監獄には『感知結界』と呼ばれる結界が張られている。無色透明、触れたという感覚はない結界だが、触れた者がいれば直ぐに結界の発動者が気付く事が出来る、という結界だ。リュークの言う通り、それを潜り抜けて監獄に侵入するのは至難の技だ。
「いいか?『感知結界』は接触した魔力を感じ取るんだ。つまり、魔力を持たない俺は結界に引っかかる事なく、監獄内に侵入出来る。後は、見張りの騎士団目を誤魔化せばいいだけだ」
「…そう云う事か…だが、それなら監獄に入るのはお前だけと云う事になるが…」
「あぁ。元よりそのつもりだ。監獄に侵入して、その後『黒氷の魔人』を連れて脱出するんだから、人数は出来るだけ少ない方が良い」
「…本気…なのか?」
恐らくこの問いは、人である俺に魔人族に本気で協力する気があるのか?と云う問いだろう。これをしてしまえば、恐らく俺の人間ランクは黒に変わってしまう。
そうなれば、人の世界で生きていく事は出来なくなる。それでも良いのか?と云う問いでもあるだろう。
「当然だ。『四天王』を集めなければ、…俺に未来は無い」
「大丈夫なの?コウヤ君?」
多分こいつは何も気付いていないだろう。だが、俺やリュークの態度や声色から空気を読んだ、と云うところだろうか。こいつは頭で考えるのは苦手の様だが、洞察力や戦闘センスはかなり高い。魔王の血筋と言ってしまえばそれまでなのだが、それでも凄い事には変わらない。
「あぁ。安心しろ。俺は約束は違わない……2度とな…」
コウヤのその表情は、シーナには深い何かがあると感じた。だが、それをこの場で問う程、子供では無かった。
「なら、行ってくる」
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『大監獄・デスタード』は『白の領地』に隣接している。騎士団が護り易い様に、と云う事だ。
コウヤは数10分間、全速力で走り続けている。そのスピードは、普通の人には目視する事も出来無いレベルだ。
「…見えた」
呟いたコウヤは『魔力破壊』を足裏に発動し、更にスピードを上げ、空中を蹴り上がる。それにより、監獄の10メートル程まで近づけた。
『大監獄・デスタード』には当然、窓など無い。代わりに全ての壁が鉄で出来ている。更にその壁には魔法が纏わされている。魔法での攻撃も、武器による攻撃であっても、その壁を傷つける事は難しい。
だが、それは通常であれば、の話だ。『四天王』や魔王であれば破壊する事は出来る。だが、結界内に侵入すればその存在は知られるし、遠距離からの魔法であれば、騎士団が撃ち落とす。
つまり、気付かれずに監獄に侵入する事は出来無い。コウヤでさえなければ、だが。何故なら、コウヤは鉄壁を撃ち抜く拳銃を持ち、纏わされていた魔法を破壊出来る『魔力破壊』を使いこなす。
コウヤであれば監獄への侵入は容易い、と云う事だ。
「『破壊の銃弾』」
『魔力破壊』で銃弾を創り出し、それを拳銃に装填する。瞬間、拳銃で鉄壁を円を描く様に撃ち抜き、鉄壁をくり抜く。
くり抜いた円から獄内に侵入したコウヤは、獄内を見渡す。
(まずは手頃な兵を捕まえて、情報を聞き出すか…)
そんな事を思いながら、獄内をぶらぶら歩いていると、1人の兵を見つけた。
「だ、誰だ貴様!どうやってここに!」
「…運が良いな…俺は…」
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捕まえた兵から聞き出した情報によれば、『黒氷の魔人』は地下に幽閉されていると云う。どんどん地下に降りていくが、兵に目視出来無いスピードで降りているので、見つかる事は無い。
1番地下の階に降りてきたコウヤは、この階に『黒氷の魔人』がいる、と直感した。コウヤはその階を走り回る。
すると、一際大きな牢に青色の髪をした女がいた。両手両足、首に鎖、目隠しをされた状態で、無数のナイフや剣が突き刺さっていた。凶器が刺さってなければ、少しキツイぐらいだが、凶器が突き刺さっているので、正直かなりグロくなっている。
直感した。こいつが『黒氷の魔人』イリア・サナサードだと。聞こえるか分からなかったが、取り敢えず話しかけてみた。
「『黒氷の魔人』イリア・サナサードだな。現魔王、シーナ・ロードが呼んでいる。一緒に来てもらうぞ」




