大監獄
「それから私は復讐心に駆られ、『四天王』の『黒炎の魔人』として『人魔大戦』を引き起こし、今も『赤い悪魔』として騎士団を壊滅させる為に動いている」
「「…」」
「これが…あの日から100年間の、私のやってきた事です」
案の定、シーナは号泣していた。当然と云えば当然なのだが、これも予想通り過ぎて、全然驚けない。しばらくそっとしておこう。
そして、俺は兼ねてから聞きたかった事を口に出した。
「『黒炎の魔人』、お前に問う。何故お前ら魔人族は、『人魔大戦』に敗れた?」
それを聞いた『黒炎の魔人』は少し驚いていた様だ。けど、直ぐに冷静になった様で、それを話した。
「…確かに、私達は戦争に勝っていた。いや、勝つ筈だった……奴が現れるまでは…」
その言葉に、コウヤは少し顔を歪ませた。
「…奴…?」
「…奴は突然現れた…私達の目の前に…」
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私がシーナ様を見つけてから、10年以上が経った。あの光景は、今でも夢に見ている。あの光景は、私の目にこびりついて、恐らく一生消える事は無いだろう。
だが、そんな事はどうでもいい。人を絶滅させる。今はそれだけで良い。
今、私達『四天王』は騎士団と戦闘を行なっている。だが、幾ら騎士団と云えど、『四天王』が全員揃っている以上、私達に負けは無い。
「ん?」
(なんだ?)
そんな時、突然上空に『穴』が開いた。その突然の出来事に私は目を奪われた。見ていると、中から何かが出てきた。
人間の姿をしているが、明らかに異質な存在だという事ぐらいは、見ただけで分かった。
(なんだ…あれは…魔人でもなければ、人でもない。何者だ?)
それを見続けた一瞬、隙が出来た。それを狙ってか、その何かは俺達の方に手をかざした。
次の瞬間、その何かは無数のビームを放ってきた。
「なっ!」
その攻撃で、草原だった戦場は焼け野原に変わった。平地に幾つも穴が空き、山が平地になった。
文字通り、地形が変えられていた。
「くっ!なんだ!あいつは!」
すると、その何かは、一瞬で私の目の前に現れた。
「っ!?」
私は何かの蹴りで、数キロ以上吹き飛ばされた。
――――――――――――――――――――
「そこで私の記憶は途絶えている。そして、目を覚ました時には全てが終わっていた…」
その話を聞いて、俺はその奴について、1つの結論に辿り着いた。
「『神』…か……」
「何?!」
そう、これが俺の結論だ。『天使』ソレイと同じく、『穴』から出て来た点。圧倒的な力を持っている点から考えて、これはほぼ確定だ。
「…それも踏まえて、俺達の持っている情報を教えよう」
そして、俺はリュークに話した。『神のゲーム』に関する事には一切触れず、シーナに話した範囲だけを。確実に反感を買うだろうという判断だ。
「…そうか…シーナ様がお前に同行するというのなら、私も同行させてもらう。いいだろう?」
「まぁ、別に良いが。俺を殺そうとしてきたら、確実に殺すからな」
「…良いだろう…」
リュークは渋々受け入れた様だ。まぁ、こいつの性格からして、この判断をするのも分かっていた。
「…で?これからどうするつもりだ?」
「戦力増強だ。具体的には、取り敢えず『四天王』を集める」
「…誰からだ?」
「『黒氷の魔人』だ。居場所が分かっている分、1番難易度が低いからな」
『黒氷の魔人』は『人魔大戦』以降、『四天王』で唯一捕縛され、『大監獄・デスタード』に幽閉されている。勿論セキュリティは万全なのだが、居場所がわからない他の『四天王』より、遥かに難易度が低い。
『赤い悪魔』よりも先に向かっても良かったが、それ以外の情報を先に得たかった。結果としては、どちらでも良かった事になるが。
「そうか……どうします?シーナ様?」
ちなみに、今までで一切口を挟んでこないシーナはというと、リュークの話を聞いてからずっと泣いている。俺達の話は聞こえていなかった様で、俺とリュークの顔を見て、不思議そうな顔をしている。
「…え?……どういう事?」
――――――――――――――――――――
「成る程!そう云う事か!」
今まで俺達が話していた事をもう一度シーナに説明し直した。
「つまり、リュー君が仲間になって、今から大監獄に行くって事だよね!」
「簡単に言えばな…」
「で、大監獄ってどんなの?」
「「…」」
俺とリュークは言葉が出なかった。まさか、この世界に居て、大監獄を知らない人間がいるとは。
大監獄は常識中の常識だ。人間ランク黒の人間が捕縛されると、全てその大監獄に収容される。大監獄には常に騎士団が見張りをしており、侵入は極めて困難だ。犯罪者は殆どの場合その場で殺されるが、人間ランク黒以外の犯罪者が捕縛されると、基本的に奴隷に堕とされる。
幾ら長い間世界に触れてこなかったとはいえ、こんな常識を知らないとは思わなかった。
「…悪い奴らが大勢いる場所だ」
「…成る程…そう言う事か…!」
「「…」」
「つまり、イーちゃんを助けに行くんだね!」




