黒炎の魔人
(…強かったな)
「残念だが、今回は俺の勝ちの様だな…」
コウヤは『赤い悪魔』に聞こえる様に呟いた。
「コウヤく〜ん!」
コウヤの元にシーナが手を振りながら近寄ってきた。
「シーナ…」
すると、その言葉を聞いた『赤い悪魔』は明らかに動揺した様子で声をあげた。
「…シーナ…様?」
その声を聞いたシーナも明らかに驚いていた。
「えっ?…もしか…して…」
そのシーナの驚いた様子を、コウヤは注視していた。
(…そうか……やはり…)
「知っているんだな?」
その疑問にシーナは恐る恐る答えた。
「うん…確証は無いけど、多分そうだと思う…顔を見れば確証を得られる…と思う」
「…そうか……なら、見せてもらうぞ…『赤い悪魔』の顔を」
シーナの言葉を聞いたコウヤは『魔力破壊』を操作し、『赤い悪魔』のフードを引き剥がす。引き剥がす時には何の抵抗も無かった。
そして『赤い悪魔』の顔が露わになった。現れたその顔は整った容姿で、赤い髪をしていた。
「…どうだ?やはりそうなのか?」
「う、うん…間違いないよ」
その声は震え、その目からは涙が溢れていた。
「そうだよね?リュー君?」
シーナに『リュー君』と呼ばれた『赤い悪魔』は、シーナと同じく目から涙を流し、震えた声をあげた。
「…はい…『四天王』……『黒炎の魔人』…リューク・トライエルです…」
『黒炎の魔人』といえば、魔人族の中でもトップクラスの強さを持ち、『属性魔法』を『黒』に覚醒させた4人の『四天王』の内の1人であり、『人魔大戦』を引き起こし、『人魔大戦』の最大の被害者とも言える人物だ。
その首には、他の2人の『四天王』と同様、『赤い悪魔』など比べ物にならない程の懸賞金がかけられている。
コウヤは元々『赤い悪魔』の正体が魔人族であると予想していた。だから、シーナと繋がりがあるかもしれないと考え、『黒炎の魔人』である可能性も視野に入れていた。
「…やっぱり、リュー君なんだね…」
「シーナ様…」
「良かった…生きててくれて…」
その言葉を聞くと、コウヤは『赤い悪魔』を拘束していた『魔力破壊』を消滅させ、拘束を解く。
「っ!?」
拘束を解かれた『赤い悪魔』は空中に投げ出されるも、上手く身体を動かして着地する。
「コウヤ君…!」
「…何のつもりだ?」
コウヤを睨みつけながら、そう問うリューク。
「俺がお前を解放したのは、お前を逃してやる為じゃ無い」
「…情報か?」
「そもそも、お前とわざわざ接触したのはその為だ。少しでも妙な真似をすれば、お前の肉体に付着している『魔力破壊』を使って瞬時に殺す」
「っ!!コウヤ君!!」
驚き、コウヤに詰め寄るシーナ。
「悪いが、俺はそう簡単にこいつを信用し切れない……少なくとも、こいつに情報を吐かせるまではな」
俯き、顔を隠すシーナ。
(俺の言っている事が理解出来ない程、こいつはバカじゃない。きちんと理解しているはずだ)
だが、それでも気持ちがついていかないことがある。理屈抜きで、感情に流されてしまう時というのが人間には誰しもある。俺にそんな時は、来る事は無いだろうが。
「分かった。殺さないことにしよう」
「っ!?」
「それでいいんだろ?」
「うん!ありがとう!」
その会話を聞いていた『赤い悪魔』ことリュークが言葉を挟んできた。
「おい!」
「…なんだ?」
「これは、どういうことだ?」
「…何の話だ?」
何を言ってるんだ?という疑問を持って質問をした。
「…助けてくれた事には感謝する。だが…」
「だが?」
「何故お前の様な頭のおかしい奴がシーナ様と一緒にいる!?」
「…それは……殺されたいという事か?」
「なに…!?」
コウヤとリュークが喧嘩をし始めたところで、シーナが止めに入った。
「2人とも!もっと仲良くしよ!」
その笑顔は地球でいうアイドルの笑顔とほぼ同じ輝きを放っていた。大抵の男はこの笑顔で堕ちてしまうだろう。
「も、申し訳ございません!シーナ様!」
それとは関係無く、リュークは主従関係を絵にした様な対応をして見せた。だが、『異常者』コウヤには、そんな笑顔は効かない。
「なぜ俺が、お前の言うことを聞かなければならない」
「貴様っ!!」
「ふ〜た〜り〜と〜も〜!!」
「は、はっ!!」
「…まぁいい。それより、聞かせてもらうぞ」
「…何が聞きたい?」
俺の声のトーンで、真面目な話だという事を理解した様だ。
「今の魔人族の事と、『人魔大戦』の真実だ」
「…『人魔大戦』の真実?」
シーナは不思議そうに首を傾げる。
「…分かった。シーナ様にも話さなければならない事だ。話してやる。真実を」
次回、リュークの過去編です。




