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魔力ゼロの無敗者  作者: マンタS
第2章 赤い悪魔と大監獄
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神への疑惑

今回、シーナの過去編が終了します。

「『人間最強』デスト・ロード。排除完了。これより帰還する」



 黒ローブはそう呟き、窓から消えていった。だが、この時のシーナにそんな事はどうでもよかった。今は父親の事しか、考えられなかった。



 片腕を吹き飛ばされ、身体中から血液が溢れ出た、『人間最強』と呼ばれる魔王。デスト・ロード。だが、今の彼の姿からはその権威が感じられない。



 そんな自分の父親に涙を流しながら近づく。



「お父様っ!お父様っ!大丈夫ですかっ!」



「ゴホッ…ゴホッ…ハァッ…シー…ナ…わた…しは…もう…生きられそうに…ない…だか…ら…」



「そんな事言わないで下さい!魔法でならこんな傷、簡単に治せます!私じゃ無理だけど、他の皆なら…」



「無理だ…今の私は魔力を()()()()()()()



「…っ!」



「…だから……私の…最後の願い…聞いてくれないか?」



 デストの声はどんどん弱々しくなっていく。その姿には、『人間最強』と呼ばれた面影は感じられない。



 その弱々しくなった父親の姿と、父親の言葉に、まだ幼いシーナも()()を悟った。



 大粒の涙を流しながらも、シーナは父親の顏をしっかりと見つめる。



「…分かり…ました…ひっぐ…なんでも…言って下さい!」



 そのシーナの言葉を聞いたデストは、自分が出来る限りの笑顔を作った。



「…まず…私の【空間直結輪(ゲート)】で…お前を…この国の外に…送る…それから…超迷宮(スーパーダンジョン)で力を…つけろ…」



 シーナは何も聞かなかった。父親の最後の頼みを聞くと決めたのだ。涙を止める事は出来ない。だが、声は出さない。



「…あと、1つ…人と魔人で…戦争が起こるかもしれない…だが、お前は絶対に…()()()()()…分かったな…」



「はい!…お父様の、最後の願い…絶対に…貫いてみせます!」



「…フッ…頼んだ…ぞ」



 これが『人間最強』デスト・ロードの最期の言葉だった。



 ――――――――――――――――――――



「それから私は直ぐ超迷宮(スーパーダンジョン)に潜った。100年間ここで修行して、今日地上に出ようと思っていたの。それで殺されそうになったところを貴方に助けられた、って感じ」



 コウヤはシーナの話が全て()()だという事が分かっていた。自分の知っている情報と照らし合わせても、今自分で確認出来たシーナの表情や、呼吸、心音などの様々な情報と合わしてみても、それは間違いなかった。



 だが、最も重要なのはそこでは無い。シーナの言った言葉が本当に全て真実なのだとしたら、少なくとも神と関わりのある人物が先代魔王を殺し、戦争の火種を作った、という事になる。



 先代魔王を殺し、更に()()も神の仕業なのだとしたら、戦争が起こる事ぐらい簡単に予想がつく。



 これから分かるのは、『神』が人と魔人との間で戦争を引き起こしたと共に、『神のゲーム』が単なる『神』のお遊びでは無い、という事が確定した。



 何故確定したのか。まず、戦争に関しては簡単だ。



 今から100年前は、魔人と人が、詳しく言えばドルス魔国とレースティリ王国が、同盟を結んだ年だ。当時の両国のトップである魔王デスト・ロードと、今から4代前のレイリ王は共に温厚な性格で、共に人と魔人との関係の歪みをどうにかしたいと考えていたらしい。



 そんな2人が、『大国』のトップに立つ存在に同時期になったのは()()だったと、後世の歴史書に書かれている。



 人にとって魔人とは『悪』の象徴であり、忌むべき存在だった。その大きな理由は『神話』だ。『神話』のストーリーは、簡単に表せばこうなる。



 ――――――――――――――――――――



 昔、1人の男がいた。



 男は『特別』だった。



『力』が無限にあったから。



 全ての『力』を使えたから。



 故に、男は『特別』だった。



 ある時、男の居場所に『魔』の者が攻めてきた。



『魔』の者達は1人1人が強かった。



 だが、中でも強かったのは『魔』の『王』だ。



『魔』の『王』は男と同じく無限の『力』を持っていた。



 両者の戦いは熾烈を極めた。



 男は自分の大切な物の為に、全力で戦った。



 だが、男は戦いの後倒れてしまった。



 数百もの命と共に倒れた。



 男に護られた者達は彼を『神』と呼び、崇めた。



 ――――――――――――――――――――



 こんな感じだ。簡略化し過ぎたが、要点は全て抑えている。初めて知った時は、()()()()()が多過ぎる、と思った。



 だが、あくまで作り話。そう思い、余り深くは考えなかった。



 だか、今思い返してみると、この『神話』には『神』への手がかりがあると考えた。少なからず、()()があると、感じた。



 話を戻すが、人はこの『神話』で魔人に対して偏見を持っている。多くの人はこの『神話』のストーリーを理解すれば、『魔』の者達の事を魔人族だと思うだろう。『魔』の『王』を魔王とも。



 だが、そう名義はされていない。そして、『魔』の者達が悪い、とも言い切れない。不確定要素が多いと言うことは、この物語の主観次第で展開が無数に存在する。



 そんな事は誰でも考えられる。が、人間と言う生き物は単純だ。自分達が正しい、向こうが悪い、そう思いたいだけに過ぎない。



 そして片方がそう思えば、もう片方もそう思うのは必然だ。そんな関係が数百年続き、もう絶対に分かり合えない。それが常識になりかけた時に、その()()が起きた。



 トップ同士がそう思い合っていたとしても、その溝は簡単に埋まるものでは無い。両者の様々な努力の記録は、現代にも残っている。そして、その両者の努力が報われ、同盟が成立した。



 そしてその矢先にシーナの話した事件が起こった。当然その犯人探しが行われたのだろう。同族を最初は疑うだろうが、誰にも不可能だったという事がいずれ分かった筈だ。



 そして、シーナも行方不明。何者かが魔王を殺し、シーナを連れ去った、と考えるのが妥当だろう。だが、ここまでなら彼らも踏みとどまれたのだろう。まだ、()()と決まった訳ではないし、魔王の気持ちを汲んだという事もある。



 だが、()()が起こった事で、魔人達は怒りを抑えられなくなったのだろう。そうして、10数年間にも及ぶ『人魔大戦』が勃発した。

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