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魔力ゼロの無敗者  作者: マンタS
第2章 赤い悪魔と大監獄
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シーナの過去

第2章スタートです。1話はシーナの過去編です。

 白髪の『異常者』原口コウヤ。彼が『神のゲーム』に参加し、この次元に来て僅か15日目。



 最初の1週間は、分からない事だらけの別次元の情報を集めることに集中していた。



 次の1週間はずっと『迷宮(ダンジョン)』に篭り、『魔獣』を猟り続ける事で、実戦経験を積むと共に、目覚めた力『魔力(マジック)破壊(ディストラクション)』のコントロール力を上げていた。



 そんな風に、コウヤは『神のゲーム』に参加してからゲームに優勝する為に必要な事しかしてこなかった。



 ――――――――――――――――――――




 コウヤは問い掛けた。自らを魔王と名乗った、シーナ・ロードと名乗った少女に。



「…聞きたい事がある。()()()()()()()()()()()()()()()()()?」



 その疑問は最もなものだった。恐らくこの次元の人間なら殆どがそう問い掛けただろう。



「…」



「答えろシーナ・ロード。100年前に()()()()お前が何故こんな所にいる?」



「やっぱり……知ってるんだね…」



「…むしろ知らない奴の方が少ないだろう。あんな()()()を引き起こした直接の原因なんだからな」



 コウヤがそう呟く様に答えると、シーナの表情が変わった。そしてまるで恐れる様な口調と声でコウヤに尋ねた。



「どう…いう事?…大…事件…って…」



「…元凶とも言えるお前が知らないわけないだろ。『戦争』の事だ」



 それを聞いたシーナは絶望の表情を見せていた。身体も小刻みに震わせ、その瞳から涙が溢れた。



「うっ…やっぱり…起こっちゃったんだ…うぐ…私の…せいで…」



 少女が発した声はとても震えていて、弱々しくて、悲しみに溢れていた。



「…おい…まさかお前…知らなかったのか?…あの…戦争を…」



「…ひっぐ…うん。地上にいる人達が私が死んだと勘違いした時、私は多分もう、此処に居たから…」



「お前…()()は100年前だぞ…それはつまり、お前は迷宮(此処)に100年以上居たってのか?」



「…うん」



「……そうか…」



 先程まで泣き喚いていたシーナは直ぐに表情を戻した。魔人族の寿命は人の10倍。また、成長スピードは人の10分の1である。簡単に言えば、人の1歳と魔人の10歳はほぼ同じ身体と精神年齢を持つ。



 それを知っていたコウヤはシーナが100年以上生きている、という事には疑問を持たなかったが、100年間迷宮(ダンジョン)に居られた事に驚いていた。



 迷宮(ダンジョン)には常に魔獣がおり、飲食物が一切存在しない。存在するとしても、魔獣の血肉くらいだが、そんな環境下では100年どころか1ヶ月も生きていられるとは思えない。



 コウヤが1週間迷宮(ダンジョン)にいられたのは、その『異常性』と、ちゃんとした準備のお陰なのだ。



「…教えてくれないか?お前の事を…」



「えっ!…わ、私の事を?」



(…何故、頬を赤らめる…?)



 コウヤの問いを聞いたシーナは何故か頬を赤らめ、オドオドしている。それをコウヤは全く理解出来なかった。その為、コウヤは勝手にこう解釈した。



「OK…お前の言いたい事は分かった。俺の事も教えてやる。それでいいだろ」



「えっ…う、うん。そ、それでいい…よ…」



 少しシーナの反応が気になったが、シーナが話し始めたので気にする事では無いと判断した。



「な、なら話すよ…わ、私の事…」


 赤らめた頬を引っ込め、真剣な顔で少女は話し出した。自らの人生を。




 ――――――――――――――――――――




 100年前『ドルス魔国』:王宮



「お父様!見て下さい!氷!出せました!」



 シーナは60歳、人年齢で6歳の少女だ。固有魔法『全属性(オールエレメント)』で掌程度の大きさの氷を作ったシーナは、その出来を自分の父親に、現『魔王』デスト・ロードに見せつけていた。



 それを見たデストは微笑み、シーナの頭を撫でた。



「流石だな。この分なら、私が死んでも国は安泰だな」



 その声と表情は重く、何かを()()()()()様だった。



「もう、不吉な事を言わないで下さいお父様!」



 だが、それを察する事が出来るほど当時のシーナは大人ではなかった。だが、知らない故のシーナの無邪気な笑顔に、デストは救われていたとも言える。だからこそ、()()()が来てもシーナだけは守り通そうと決めていた。



「…!」



「…誰?」



 その時、部屋の扉が開いた。そこから入って来たのは、黒いローブに身を包んだ得体のしれない奴、というのが当時のシーナの見解だった。



 だが、デストは違った。大きく眼を見開き、その黒ローブに見入っていた。それを見たシーナは、心底不思議に思っていた。生まれてから、ずっと父親と一緒に居た。ずっと父親を見て来た。



 だが、父親のこんな表情は見た事がなかった。



「現魔王、デスト・ロード…お前を殺す」



「…」



 それを聞いたデストは、まるで知っていた様に落ち着いていた。また、それを聞いたシーナは心身共に落ち着きを失っていた。



 何故なら、これは緊急事態と言えるからだ。ドルス魔国自体、吹雪が吹き荒れ、簡単に見つける事が出来ない。



 更に、国には厳重な結界が貼られ、騎士団(ナイツ)レベルの実力を持つ者でもなければ壊す事が出来ず、壊されたとしても直ぐに気づく事が出来、そんな事が起きれば直ぐに魔王であるデストに伝えられる。また、伝えられなくても、デスト自身が気付く。



 しかし、今回は違う。デストが気付けず、王宮内にまで入られ、それを伝えようとする者が誰も来ない。



 それが意味するのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、魔王の前に現れた、という事だ。



「問おう。何ゆえ私を殺す?そして…何者だ?」



「『神』だ」



「っ!?」



 その答えにデストですら驚いていた。シーナも()()()()を知ってはいたが、唯のおとぎ話の登場人物だと思っていたので、黒ローブの答えには疑問しか持たなかった。



「そして私が魔王(お前)を殺すのは、世界の為、というやつだ」



「…この国の厳重な警備をかいくぐり、誰にも気付かれず私の前まで来れる。こんな事が出来るのは、神に等しい力を持っている様な者でなければ不可能だ。そしてお前はそれをやってみせた」



 するとデストはおもむろに玉座から立ち上がった。



「確かにお前は神に等しい力を持っているのかもしれない。だが、お前が『神』である確証など無いし、なによりも私は今殺されるわけにはいかない。我が国民の為にも、()の為にも…」



 そう宣言すると同時に、デストは魔人族特有の黒い輝きを放つ『魔力状態(マジックモード)』を発動する。更に、デストの身体が黒い衣に包まれ、その目からは黒い光が放たれている。



「そうか。なら、力をもって殺すとしよう」



(…この姿。お父様、本気なんだ…)



 瞬間、2人の姿が消えた。正確に言えば、シーナが視認出来るスピードを超えたスピードで2人は戦っているのだ。



 シーナにはそれが分かっていた。だから、あちこちで爆風が吹き荒れたり、炎や氷が部屋に出現しても驚きはしなかった。



 シーナの父、魔王デスト・ロードは歴代最強の魔王と呼ばれている。彼がそう呼ばれるのは、その固有魔法が大きく影響される。



 彼の固有魔法は『魔法創生(マジッククリエイト)』。その名の通り、魔法を創り出し、自在に操る固有魔法だ。魔王の一族は属性魔法を持たない。



 だが、それ故に属性魔法ではなく、()()()()()()()()()のだ。覚醒した彼の固有魔法は、発動する魔法を全て黒く染め、その効果と威力、また、『黒』の能力を得る。



 彼はこの魔法で、現在確認されている魔法を全て操る。更に魔力は無限。歴代最強の魔王と呼ばれているが、実質、この時は『人間最強』であった。



 だからこそ、シーナは自分の父親が勝つと信じていた。相手が本当に()()()でも、父なら勝てる、シーナはそう信じていた。



 戦闘が始まって数分後。シーナの背後から爆音と爆風と共に土煙が噴き出し、視界が潰される。



「うっ…」



 すると、シーナの顔に何か液体が降りかかった。



「ん?なにこれ…血?」



 そう呟きながら後ろを振り向くと、丁度土煙が収まって、視界が戻ってきた。土煙の発生源に眼を凝らす。



 そこには、信じられない光景があった。



「あ、あぁ…そんな…お父様っっ!!」



 シーナが見たのは、左腕を捥がれ、血だらけになって、壁にもたれる様に座り込んだ、『人間最強』と呼ばれた魔王、デスト・ロードだった。

シーナの過去編は次回で終わります。



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