少女の正体
今回は少し多めです。あと1章最終回です。
その鳥は炎そのものだった。唯一の弱点を破壊されても、身体を全て消し飛ばされても、炎と共に復活した。
「そんな奴は不死身…いや、不死鳥って言えるだろ。で、不死鳥。良い名だと思わないか?」
コウヤはそう言いながら不死鳥に向かって歩んで行く。
「…」
その様を見ながら、シーナは困惑していた。何故こんなところに人がいるのか?何故自分を助けたのか?分からない事や疑問が沢山あるが、分かることもある。
彼が強いという事だ。少なくとも『魔力状態』を使わずに目の前の化け物の爪を切断出来る、というレベルに。
「まぁ、どうでもいいか…いくぞ?」
コウヤは不死鳥の核を狙い、拳銃で『魔力破壊』の銃弾を撃ち出す。
それを容易く不死鳥は回避する。コウヤは不死鳥の下まで、空中を走って向かう。
靴の裏に『魔力破壊』を展開し、空中に一体時間固定する事で足場とし、空中での歩みを可能にしている。
「『剣威装・魔力破壊』」
『魔滅』に『魔力破壊』を纏わせる。
対象の目前まで来たコウヤはそのまま『魔滅』を振るい、核を断ち切ろうとする。
が、
「…避けたか」
不死鳥が後方へ飛んだ事によって核を切断しきる事が出来なかった。不死鳥はそのままコウヤと距離を取り、コウヤも地面へと降り立った。
「流石にそこらのSSS級とは違うな。が、俺なら不死鳥を殺せる」
「…え?」
小さな声を漏らす少女。その声が聞こえていながらも、コウヤは思考を巡らす。
(あの不死の力は魔力、いや魔法だな。この特異な魔法は固有魔法…いや、炎を用いているという事は覚醒した火属性魔法か?…いや、違う。属性魔法と固有魔法を合わせている…という事か?だが、そんな魔法は王国の図書館にも情報がなかった。つまりこれは不死鳥のオリジナル)
「…『複合魔法』ってとこか」
「…複合魔法」
数秒で不死鳥の力の分析を終えたコウヤは、すぐさま行動に移す。
「『破壊連続銃撃』」
コウヤは『魔力破壊』で薄い板状の円を作り、その円から無数の『魔力破壊』の弾丸が放つ。
不死鳥は弾丸を超スピードで避け続けるが、全て避けきる事は出来ずに数多くの傷を作っていく。
「これでも殺しきれないか…なら、全方位からならどうだ」
そう言い放ったコウヤは、不死鳥を囲む様に先程の円をいくつも創り出し、それら全てから弾丸を放つ。
「…!」
(避けない?いや、これは…)
不死鳥は動きを止め、身体の中にある核だけを移動させ、致命傷を避けている。
「流石だな。だが、これで終わりだ」
『破壊連続銃撃』として発動させていた円状の『魔力破壊』全てから、ビームが放たれる。
「『破壊の波動』」
だが、この技は『破壊連続銃撃』より、遅い。
なので、不死鳥は超速で上空に飛び上がり、コウヤから100メートル以上離れる。
「…速い」
そう呟いた少女の言葉は、炎の鳳に向けたものではなかった。
「【破壊の斬撃】」
コウヤは、不死鳥のスピードを上回るスピード移動。不死鳥の進行方向を遮る様に移動した後、その核を容易く両断した。
剣の切断力を飛躍的に上昇させ、振るったところから斬撃を飛ばす事もできる。それが、『破壊の斬撃』という技だ。
「やはり俺の『魔力破壊』でなら、再生しないな。それにしても『複合魔法』か…こんなのを使うのはもうSSS級なんてレベルじゃない。SSSS級といっても良いレベルだ」
久々の強敵との戦闘に少し、楽しさを感じていたコウヤだが、1番確かめなければならない事を見失ってはいない。
あの少女の正体である。全ての魔法属性を持ち、数々の『合成魔法』を1人で扱い、『魔力状態』を発動出来る技術と魔力レベル。はっきり言って強すぎる。
相手が複合魔法を使う、伝説を超えた強さを持つ魔獣でなければ、まず負ける事はなかっただろう。
とは言え、ここまでの才能を持ち、一般には知られていない実力者。大体の正体は予想出来る。
『魔滅』を鞘に戻し、近くまで歩み寄って少女に話しかけた。
「取り敢えず、傷は大丈夫か?結構深手だったと思うが…」
「…え?う、うん。大丈夫。貴方が戦っている間に『魔力状態』で再生したから…それより、私に何か聞きたいんじゃないの?」
少女はコウヤの問いかけに少し戸惑いつつもきちんと対応した。だが、コウヤが少女に返した言葉は、少女にとって意外なものだった。
「いや、先にクリスタルを見せてくれ。それで大体知りたい事は分かる」
「え?そ、そうなんだ…じゃあ、はい。これが私のクリスタル」
本来クリスタルは他人に不用意に見せる様な物ではない。人間ランクや魔力レベル。魔法属性などは基本的に他人に明かす事はない。
明かすのは家族や親しい友達。国の兵士や冒険者のパーティー同士ぐらいだ。信頼している人間ぐらいにしか話せないからだ。
また、仲間同士であれば、連携や信頼関係を築く為にも見せる。何故かという理由は、多くの人間は知らない。人間が眠くなることや、お腹がすく様に常識とされているからだ。何故眠くなるのか?何故お腹がすくのか?あまりに常識すぎて多くの人間はわざわざ調べようとは思わない。
それと同じなのだ。そんなクリスタルをシーナがコウヤに簡単に渡したのは、立場と力の差を理解しているからである。自分が殺されそうになった魔獣を簡単に倒したコウヤの言う事を聞かなければ殺される。
そう悟った結果であり、この答えはこの次元では常識的な範囲のものとなっている。
「…」
少女のクリスタルを見たコウヤは数秒考え、言葉を発した。
「やはりな…」
「え?…どういう…」
「お前の戦闘を見ていた時から、ずっとお前が何者かを考えていた。
まず全ての属性魔法を使える点。これは確実に固有魔法だ。属性魔法を複数持つ人間は存在しない。
次に魔力レベル。お前は俺が見ていた限り戦闘中ずっと『魔力状態』を発動していた。『魔力状態』は短時間発動するだけで莫大な魔力を使用する。あれだけの時間ずっと発動し続けるのはレベル5以上だろう。
そしてお前の強さ。ここまで強く、でかい才能を持ってる奴だ。確実に人間ランクは金以上。人間ランク金以上の人間は殆どいない。
加えて、迷宮に入る時にはクリスタルを確認されるから確実にバレるし記録にも残る。
俺は人間ランク銀以上の奴らの名と顔は全て覚えている。その中にお前はいなかった」
「…」
シーナは言葉が出なかった。この男には既に自分の正体がバレている、そう悟ったからだ。
「そしてこのクリスタルを見て確信した。お前は先代魔王の娘。シーナ・ロードだ」
「…うん。そうだよ。よく分かったね」
「簡単だ。お前は魔力レベル6。クリスタルを見ても分かる通りな。そして魔法属性を持たない。そんなのは俺の知る限り魔王しかいない。そして魔王の娘なら、魔王と同じ特徴を持っていてもおかしくない」
「そう…私は先代魔王デスト・ロードの娘。現魔王、シーナ・ロード」
「…聞きたい事がある。何故死んだ筈のお前がこんな所にいる?」
次回はキャラクターについての解説回です。




