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魔力ゼロの無敗者  作者: マンタS
第7章 大国会談と四獣
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覚悟

「おとーさまー!」



 その小さな体を、『人間最強』たるデスト・ロードに思いっきりぶつけた。『魔王』たるデストにとってそんなものが痛みになる訳が無く、微笑みながらそれを受け止め、そのままシーナの身体を自分の頭上に持ち上げる。



 それだけで、シーナは大喜びだ。キャッキャと高い声を出して、この時間を楽しんでいる。何故なら、この時間は滅多に味わえないという事を、幼いながらも理解しているからだ。



『魔王』であるデストは多忙であり、シーナに構うことが出来る時間は少ないのだ。今の魔人族の現状を変えようと、人間の国の中でも最も巨大とされる国、『大国』レースティリ王国との同盟を目指している。



 故に、多忙なのである。だから、何時もシーナは母親と一緒にいるのだが、今日は久しぶりに時間が取れたので父親たるデストと遊んでいるのだ。



 これらの理由により、何時もクールに振舞っているデストも、微笑みを隠せない。それだけでは無く、



「高い高ーい!!」



 などと明るい声で、年甲斐も無くはしゃいでいる。



 そして、そんな様子を微笑みながら眺めている女性がいた。シーナに似た黒髪ロングで、誰よりも優しく、穏やかな目をしていた。その微笑みは、誰もが心を穏やかにするものだ。



「貴方。はしゃぎ過ぎですよ」



 そして、発せられた声もまた、誰もが心地良いと感じる音色だった。そして全てを包み込む様な大きな器の持ち主だった。



「まぁ…確かに…そうだな…」



 その一言で我に帰ったデストは、ゆっくりとシーナを地面に降ろす。



「ねぇねぇ!もう一回!もう一回!」



 無邪気な笑顔を浮かべて、デストに再び『高い高ーい』をリクエストするシーナ。



「ダメですよシーナ。貴方はいつの日か『魔王』と成る身。我慢をする事も覚えなさい」



 だが、流石は母親。優しくも、厳しい口調で注意を促している。しかし、それを聞いたシーナはぷくっと頬を膨らます。



「まぁまぁ。いいじゃないか、たまには」



 だが、デストの口調は反対に優しい。元来デストはこういう優しく、緩い性格なのだが、『魔王』である間は厳しく振舞っているのだ。



「はぁ…貴方って人は……」



 その様子に半端呆れているものの、知っていた事なので大して驚きはしない。



「大丈夫。仕事の時はきちんと切り替えているから。これでも『魔王』なんだ。安心して良いよ、()()()



 デストがレースティリ王国との同盟を結ぼうとしているのは、『大国』の1つである事に加え、()()()()()()()()()だからだ。



「それで、王国との同盟は出来そうなの?」


 

「ああ。順調だよ。君のお陰でね」



 そう。レースティリ王国との同盟を結ぼうと考え、実行を始めたのは、クレハの存在が大きい。彼女無しでは、交渉する事も出来なかっただろう。



 ()()()()()()()()()()()()()()()である彼女の人脈が無ければ。



「ねぇ、とおさま!」



 先程まで膨らませていた頬は縮み、少し赤らんでいる。と、同時に、目も輝かせている。



「何だい?」



 明らかに声色が高くなっている。



「とおさまは『まおう』なのでしょ?『まおう』って、何をするのですか?」



「うん。そうだね…何をするかは決まっていないんだけど、簡単に言えば国の皆を守る。それが、『魔王』のすべき事だ」



「わたしにもなれますか?!」



 更に目を輝かせたシーナは、デストに詰め寄る。



「ああ!」



「ほんとですか?」



「ああ。本当だ。ただ、それには条件があるんだ」



「じょうけん、ですか?」



 首を傾げ、不思議そうに質問を続ける。



「ああ。それはね―――



 ――――――――――――――――――――――――



 ―――自分の全てを賭けてでも、民を守る()()を持つ事だよ」



「…覚悟………」



 それを思い出すと、時が止まった様に感じた。物事が全てスローモーションに見えた。簡単に言えば、凄く落ち着いていた。



 自分への怒りも、悔しさも感じなくなった。ただ、冷静になった。



 そうだ。覚悟が足りなかったのだ。今までも、誰かの言う通りに行動して来ただけ。だから自分が『魔王』である、と云う事を自覚する事も、その地位に立つものとしての覚悟を持つ事もなく、ただ流されて来た。



 だが、そんな事ではダメなのだ。父様が言っていた様に、覚悟を持たなければならない。



 自分の全てを賭けてでも民を守る、と云う覚悟を。



 そこまで考えたところで、時間の流れが戻った。不死鳥(フェニックス)がイリアに向かって、炎を吐こうとしているところが、目に入った。



 驚く程簡単に身体が動いた。先程まで全く動かなかった身体が、本当に簡単に動いた。そして、いつもよりも速いスピードが出た。



 不死鳥(フェニックス)が炎を吐く瞬間には、イリアの前に立っていた。そして吐き出された炎を、巨大な雷で吹き飛ばした。



 そして、何故か雷が黒かった。そして、それがどう云う事か、シーナは直ぐに理解した。



 そして背後にいたイリアが、シーナのその状態を見て、呟いた。



「『魔王』様の…【黒の状態(ブラック・モード)】…?」

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