魔力の龍
『青龍』は倒す事が出来た。だが、最も倒さなければならない『玄武』は倒し損ねた。
『破壊の全・波動』で右腕だけにしたが、直ぐに全身が再生してしまった。
直ぐに戦闘態勢を整えたが、残った3体の『四獣』は全て、硬直していた。と、次の瞬間、
「キャァァァァァァァ!!!」
「グォォォォォォォォ!!!」
「ブォォォォォォォォ!!!」
3体の『四獣』が、同時に叫んだ。驚くほどの音量で、ここまで大きな音は今まで聞いた事が無い。
そこまでは良かったのだが、3体は叫んで行く内に、身体から奇妙なオーラが現れ始めた。そして、そのオーラは一定に保たれ、それはまるで『魔力状態』の様に見えた。
3体の声が止み、再び戦闘態勢を整える。また、変化した3体の『四獣』の様子も伺う。
3体は、それぞれの色のオーラを放っていた。『玄武』は黒、『朱雀』は赤、そして『白虎』は白だった。『魔力状態』に似ているが、『魔力状態』の色は、発動者の魔法属性と同じ色となり、魔法属性を持たない魔人族は黒となる。魔獣の場合も黒となる。
よって、今奴等が使っているのは、『魔力状態』の様であって『魔力状態』では無い、と考えられる。
そのぐらいは一瞬で判断できたが、どこまで強くなったのかは分からなかった。だから、それはこれから始まる戦闘で判断していく、と判断した。
瞬間、『朱雀』が飛び出してきた。
「っ!」
そのスピードは、これまでとは明らかに違うものだった。その嘴による攻撃を、何とか『魔滅』で受け止める。だがその衝撃も大きく、足裏に展開して足場としていた『魔力破壊』すら破壊された。
足場が無くなり、『朱雀』の攻撃を受け止めながら地面へ急降下していく。
「ぐっ…!」
そのまま地面に足が付くが、それでも勢いは止められず、更に後方へと押されて行く。
地面に押し込まれた両足が地面に沈み、後方に押される事で、タイヤ跡の様に地面が抉れていく。
「な…めるなっ!」
両手で『魔滅』を支えていたが、左手を離す。当然『朱雀』の攻撃が来るが、それを半身になって避け、それと共に左手を右手の下に持ち、
「『破壊の全・斬撃』」
『朱雀』の全身を、縦に両断した。だが、『朱雀』は両断された体を一瞬で繋げて上空へ舞い上がった。
と、いつのまにか地面に降り立っていた『玄武』が地面に尻尾を突き刺し、再び大地を操る。だが今回は、今までのものよりも速く、そして見る限り明らかに強固になっていた。
避ける事も裂くことも容易である、と云う事に変わりはなかったが、なかなか抜け出せない。それでも、辺りを確認する事ぐらいは出来た。
上空を見ると、思わず目を丸くした。『白虎』が、風属性魔法で竜巻を創っていた。口から吐き出された風が渦を巻き、巨大な竜巻へと化していた。
そして、それを俺めがけて飛ばしてきた。巨大な竜巻が、俺を目掛けて飛んできたのだ。辺りにある『玄武』の操る大地すら、その風圧で吹き飛ばしながら向かって来る。瞬時に両手を掲げて、『破壊の全・波動』を放つ。
だが、その巨大な竜巻にいとも容易く破壊されてしまう。だが、この程度は予測していた。直ぐに『魔滅』を持ち直し、今度は『破壊の全・斬撃』で、竜巻の中心を直接攻撃する。
だが、この攻撃だけに気をとられ過ぎてしまった。地面で何が起きているかを、確認してしていなかったのだ。
それ故に、地面からの火山の噴火に、発生後にしか気づけなかったのだ。
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「怪我人を早く運べ!」
「誰も死なせるな!」
そんな声が沢山聞こえてくる。全員、助かって!そんな想いを持ちながら、雨露 沙霧は戦場を駆けていた。
と言っても、どこが戦場になるか分からないこの状況下では、世界中の人々が戦場にいるとも言える。
地震による地割れで、迷宮内の魔獣達が蟻の様に這い出てくるのだ。それも、SSS級の魔獣も珍しくない。
怪我人も死者も出る。沙霧は国中を駆けて魔獣を殺し回っているが、無限に居るかの様に這い出てくるのだ。
いくら自分の魔力が無限だといっても、体力的な限界はある。既に満身創痍で、いつ倒れてもおかしくない状態だ。
今沙霧は『魔力状態』に加え、固有魔法『魔力の龍』を併用発動している。体力の消費が激しいのだ。
固有魔法『魔力の龍』は、自らの魔法属性の龍を創り出す。だが、生物として龍を創ると云う訳ではなく、飽くまで魔力として、だ。
魔力の塊として龍を創り出す。故に自律行動は出来ず、必ず使用者が操作しなければならない。そしてその身体は魔力属性の色で透明となっているが、体表面が硬く、爪などの攻撃は強力だ。
今沙霧は、火の龍の中にいる。こうして中に入る事で、外敵からの攻撃を防ぎ、強力な攻撃も出せる、と云う強力な状態だが、その分体力の消費が激しい。
だが、解除するわけにはいかない。今の上空からの魔法攻撃が、魔獣を倒すのに最も効率が良いのだ。今止めれば、それこそこのドルス魔国が崩壊してしまうかもしれない。
と、大きな音がした。その音の方向を見ると、
「竜巻と、火山の噴火?」
それを確認出来た。だが、今それを気にしているわけにはいかない。直ぐに戦闘に戻る。
そして、祈る。
――コウヤ、無事でいてくれ――




