プロローグ〜ゲームスタート
夏の風物詩である蝉の鳴き声とともに、この教室では沢山の生徒達の笑い声が混じった話し声が響く。
そんな楽しそうな話を教室の隅で聞きながら表情一つ変えず本を読み続ける男が一人。
名は原口コウヤ。高校2年生で高身長。成績優秀、スポーツ万能、かなりのイケメン。
その中でも1番の特徴は白髪であることと、その『異常性』である。彼は誰とも話そうとせず、彼に話しかけようとする人間さえいない。少し目立つというだけで、こんな状態になった訳ではない。
理由は、彼が編入してきた4月にさかのぼる。彼は自己紹介の最後の一言で、
「俺はお前等と仲良く友達ゴッコをする気はない。だから俺はお前等に話しかけない。お前等も俺に話しかけてこないでくれ」
と言った。
彼にとって学校とは、空いた時間を埋める為のもの。1年半程前の大事件で、彼は生き甲斐を無くしてしまった。クラスメイトと談笑したり昼食を一緒に食べる。そんな事をする気にはなられかった。だから彼は一人になる為にあんな発言をしたのである。
そしていつも通り、同じ時間に下校する。それが、彼の今の日常だった。
だが、彼の『異常性』は、彼に平穏な日常を送らせる程普通では無い。
何も無い、いつも通りの日が終わると思っていた。そんな日に、その『穴』を見つけた。
多くの人の喧騒が、その『穴』を誰にも発見させなかった。華々しい高層ビルの間の路地の奥。『穴』は、そこにひっそりと存在していた。
その『穴』に、コウヤは近づいて行った。もしかしたら、彼女への手がかりになるかもしれなかったから。その可能性があったから。
『穴』は、空中に空いていた。その『穴』は、虹色の光を放っていた。直径2センチメートル程の、小さな『穴』。まるで、そこだけ世界から隔離されている様な、そんな感覚がした。
すると、突然その『穴』が拡張した。人1人が通れる程の大きさになった。と、思えば中から人が出てきた。
美しい水色の髪を靡かせる女性だった。あまりにも神々しく、羽を生やし、優しい目で見つめてきた。
その姿は、天使の様に見えた。そして、その天使らしき女はこちらを見て、少し笑みを浮かべながら口を開いた。
「あなたが原口コウヤね」
「…そうだ」
そして少し笑いながら、
「おめでとうごさいます!」
「…何の話だ?」
「あなたは神に選ばれたものだけが参加出来る『神のゲーム』に参加する権利を得ました」
「…」
「私はソレイ。神の使い。天使という存在です」
『普通』の人間であれば慌てふためき目の前の天使と名乗る女を質問責めにしてしまうだろう。だが、原口コウヤは『普通』ではない。空間に『穴』があることを視認した時点で、常識は通用しないという事を瞬時に理解し、目の前の女を天使と判断した。
その上で、
「お前と神、そして『神のゲーム』がどういう存在か、どういうものか教えろ」
と、言い放った。その問いの後、ソレイは驚きと少しの笑みを浮かべた。
「ご理解がお早くて助かります。神とは、天使とは何か?まずはその問いにお答えします。
この世界はいくつかの『次元』にわかれています。ここもその1つです。
神とは全ての『次元』を作った存在のことです。そして天使とは、神が最初に作った生物であり、その眷属でもあります。
そして『神のゲーム』とは?という問いにお答えします。『神のゲーム』とは、こことは違う次元に行ってもらい、その次元に存在する最後の『魔人』を誰よりもはやく殺すことを目的としたゲームです。
そして優勝者には、神がなんでも願いを1つだけ叶えさせてくれます。
以上が質問の答えになります。何か質問があればお話下さい」
「…」
当然の反応。非科学的にも程がある。が、次の瞬間に、
「その『神のゲーム』とやらに参加した後、こっちの次元に帰って来れるのか?」
と、質問した。先ほども言った通り原口コウヤは『普通』ではない。だからこその、この質問だ。そしてソレイが、
「はい。優勝者は、ですが。優勝者に与えられるのは1つの願いと元いた次元への帰還ですから。優勝者以外はゲームが開催された次元で死の瞬間までいてもらいます」
(つまりゲームに優勝すれば一つ願いを叶えることが出来、出来なければ死ぬまで異世界に放置ってことか)
一瞬考えた後、コウヤは答えた。
「いいだろう。参加してやる。『神のゲーム』とやらにな」
するとソレイも笑いながら、
「いいでしょう、原口コウヤ。『神のゲーム』の参加を認めます。では、この中にお入り下さい。この『穴』が『神のゲーム』の開催される次元に繋がっています」
ソレイは、『穴』を更に大きくし、俺の前まで移動させた。
コウヤは少しの笑みを浮かべながら、
「さぁ、行こうか…」
そう言って、コウヤは『穴』の中へ入っていった。全ては、彼女の為に。
この時、この世界は、神をも予想だにしなかった事態を招くことになってしまう。
人間でありながら人間でない存在。
人の皮を被った化け物をこの『神のゲーム』に参加させたことを、開催者はこの後、後悔することになる。
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