第27話.デート1
モノウラにもあったデート回です!
ミリレオとの違いにもご注目。
お買い物に行こうと言うことになった。
それはいい。
だけど、事あるごとに私を揶揄うのはやめてほしい。 あれだ、私の精神衛生上よろしくない。
……揶揄ってる、のかな?
どっちかって言うと、本心なような気がしなくも……。 アルフって基本的には本心を表に出さないタイプだったはずなんだけど。
まぁ、溺愛モードに入ったら息を吐くように本心を漏らし始めるんだけどね〜……。
はぁ………。
「さて、まずは雑貨屋でいいかな?」
宿屋さんを出たところでアルフがそう口にした。
その言葉に私は首をかしげた。
「なんで? 武器とかを買うなら、先にそっちに行ったほうがいいんじゃないの? 武器屋さんの方が近いし」
たしか武器屋さんはすぐそこの角を曲がったところの大通りにあったはず。 それで、雑貨屋さんは大通りを渡った反対側の路地裏にあるらしい。
旅人向けと言うよりも街で暮らす人向けのお店だから、一見すると不便そうなところにあるみたい。 実際は街の人の生活圏に近くなし、地元の人くらいしか行かないわけだから、むしろ便利らしいんだけど。
ちなみに全部レイチェルさん情報。 本当に有能なメイドさんだよねぇ。
とにかく、近いところから順番に行った方がいいと思うんだ。
それに、武器を選ぶのとか時間がかかりそうなイメージだから先に行っておいたほうがいいと思うし。
「でも、武器とか防具って重くて邪魔にもなるから、それを持って後の買い物をするのが大変になると思うんだ」
「あ、あ〜……。 なるほど〜」
そっかー。
買ったものはその後ずっと持ち歩かないといけないのかー。
いくら戦闘になったらそれを持って走り回ることになるとは言っても、そんなんじゃゆっくり買い物なんてできないよね。 そもそも、私なんかは武器を持ったことすらないから、練習しないといけないし。
うぅ……。 こんなことなら剣道でも弓道でもやっておけばよかった。
……って、なぜにアルフはそんなに可哀想な目で私のことを見るのさ!
「いや、分かってたからね!?」
「うんうん、そうだね〜」
くそぅ、こいつ全然わかってない。
そもそも、私はアルフよりも頭いいし!
だって前世では普通に社会人をやってたんだよ? そりゃ確かに、たまに『ちょっと抜けてるね』なんて言われることもあったけど、それでも大人だったし!
まだ精神年齢はアルフの三倍以上あるし!
だからそんな目で私を見ないで!
……ご、ごほんっ。
ちょっと取り乱しちゃったかな?
いやぁ、大人としてここは子供のする事にいちいち動揺してちゃいけないよね。
たとえ歩きながら頭を撫でられてても、私の方が大人なんだもん! ……『もん』ってなんだ?
心の声でよかった……。 アルフに聞かれてたらまた微笑ましい目で見られてしまうところだった。
………ねぇ、ところでもしかして歩いている間ずっと私の頭を撫でているつもりですか?
側から見ればちびっ子が戯れてるようにしか見えないんだろうけど、私的には十分恥ずかしいんだけど?
そう思って私よりもほんの少しだけ高いところにあるアルフの目を見ると、にっこりと笑みを返されてしまった。
こいつ……、私が恥ずかしがってるのを見て愉しんでやがるな!
ぐぬぬぅ……。
いっ、いいし! たしかティルリアーナは背が高かったはずだ。 アルフよりも大きかったかは忘れたけど、私の方が大きくなったら存分に頭を撫でてやろうじゃないか!
同い年の女子に頭を撫でられて存分に恥ずかしがるがいいさ!
「さて、着いたよ」
そう言いながらアルフは私の頭をポンポンと軽く叩いた。
もうその辺りはスルーする事にして、目の前にあるお店に目をやる。
「雑貨屋さんって言う割にはオシャレな雰囲気じゃない……」
もっとガラス張りでオシャレな木の食器とかレトロなポットとかが置いてあるのが私の中の雑貨屋さんのイメージだったんだけど、なんかごちゃごちゃしてる。 お店の前にも棚が置かれていて色々な商品が所狭しと並べられてるし。
「当たり前だよ、雑貨屋だもん。 ティナが想像するようなオシャレなお店じゃないよ」
これがこの世界の雑貨屋さんなのか。
そういえば、私の意識が目覚めるまでは市井になんて興味がなかったし、私の意識が目覚めてからは破滅回避のための魔法道具作りのせいで市井に出る暇なんてなかったからなぁ。
「いらっしゃ〜い」
「でも、ある程度の必要なものはここで揃うと思うよ」
アルフが言う通り、店の中には店先以上に色々な商品が陳列されていた。棚は天井近くまで伸びていて、ほとんど壁と化している。 そのせいか魔法の光がだいぶ遮られていて、明るさが不安定だ。
でもその分、品揃えは良さそうだ。
「なんか、どっちかって言うとドン・◯ホーテみたい」
このごちゃごちゃした感じと、ちょっぴり狭く感じる感じ。 嫌いじゃないんだよなぁ。
こう、狭くて薄暗い所の方が落ち着くって言うか。 家族にはネズミみたいって言われたっけ。
「鈍器放ってみたい……って、いきなりなに? ………ストレス、溜まってるの?」
感慨に浸っていた私に、いきなりアルフがわけわからないことを言ってきた。
ドン・◯ホーテってそういえばこの世界にはない言葉だったね。 お店の方はもちろんだけど、シェイクスピアか誰かの本のタイトルの方も存在しないわけだし。
「誰もそんな物騒な話はしてません」
「いや、でも今……」
「こ、こう言う雰囲気のお店のことをそう言うの」
とりあえず強引に誤魔化す。
いい言い訳も思い付かないし、力技しかないよね。
「鈍器放ってみたいって?」
「鈍器放ってみたいじゃなくて、ドン・◯ホーテですっ!」
お店を見て『鈍器放ってみたい』とか言いだしたら完全にヤバイ人じゃん。
どこのサイコパスですか。 赤い帽子の配管工さんのゲームに出てくるハンマーを投げる亀じゃないんだから。
「そうなんだ……。 ふふ、相変わらずだなぁ」
「バカにされてるわけではないよね……?」
この流れだと、とてもいい意味には思えないんだけど。
「まさか。 ティナは相変わらず可愛いなぁって」
まったく。 アルフはよくもまぁ、ここまで恥ずかしげもなくそんなに恥ずかしいセリフを言えるよなぁ。
どう言う思考回路をしてるのか、いっぺん頭をかち割って見てみたいところだよ。 いや、きっと半分以上はお花畑なんだろうなぁ。
よく転生ものだと、残念王子様を残念になる前に矯正させるってのがあるけど、ウチのは既に残念だからなぁ。
「はぁ……」
「ふふふふ」
この残念王子をどうしようか……。
って、どさくさに紛れて人の頭を撫でるでない!
「それで? 雑貨屋さんには何を買いに来たの?」
「生活に必要な細々としたものだね。 最低限のものはあるけど、女の子なら必要なものは多いでしょ?」
「今ので事足りてるけど……?」
服はあるし、タオルなんかもあるし。 まだ10歳にもなってないから必要なものは少ないんだよね。
「そう? 櫛とか鏡とかあった方がいいんじゃない?」
アルフがそう問いかけてくれるけど、私は首を横に振った。
「ううん。 手でやれば何とでもなるし、ヘアゴムも持ってるしね。 そもそも、セットしてもどうせ走り回るんだから崩れちゃうし」
「まぁ、それもそうだけどね」
そもそも、私としての意識が目覚めてからは、人に長い時間かけて髪の毛をセットされるのって苦手だったんだよね。 美容院とかみたいにたまにならいいんだけど、毎朝毎朝やられるのは疲れる。
私の────と言うかティルリアーナのトレードマークである、両サイドの縦ロールは何のお手入れもしていなくても健在みたいだし。 癖っ毛の一種なのかな?
「こんなこと言うのもアレかもしれないけど、今の生活にさほど不自由を感じてないんだよね〜」
旅をしていた時と比べて、衣食住はバッチリ保証されてるから快適だ。 前世の記憶のおかげで自分のことは自分でできるしね。
「そう、なの?」
「うん。 だから必要最低限のものだけ買って次に行っちゃお?」
まずは石鹸とかかな〜。
体を洗う用のものと、衣服を洗う用のもの。 それから、出来れば髪を洗うやつも買いたいよね。
昨日とかは宿屋さんで売っていたものを買ったけど、あれって割高だからね。 前世のホテルみたいにアメニティが無料のところなんて、高級宿くらいじゃないとないみたいだし。
あとは────
「ははは、そうだね。 ティナらしいや」
頭に伸ばされたアルフの手を避けて、私はお店の中に歩みを進めた。
まったく、お前の頭はお花畑か!
時間、作者のモチベともに少ないので、更新頻度を3日に1回とさらに落とさせていただきます。
本当に申し訳有りません。
次回更新は3/6です。




