出発
パカラ、パカラと響かせながらレンと時雨を乗せて馬車は走る。ここ中立国であるイラス国は独自の外交路線で他国との接触をあまりしない。現在の王は紛争を好まない王である、その為どこかの国との過度の接触をしない方針をとっている。片方に肩入れした場合、紛争に巻き込まれる恐れを懸念してのことだ。しかし、結果的に小国であるイラス国は交易等、王の選ばられた商人以外しないため、民の生活はそれほど豊かではなかった。それゆえ馬車を乗る者はほとんどいない。馬車1台出るのに、護衛が必ず数名付くのだから、決して安くない金額を支払わなければならない。
護衛を付ける理由は野盗もでるし、魔物の類も出没する。兵士が治安維持が主な任務ならば、冒険者は魔物専属と言っていいだろう。冒険者は未然に被害が出ないよう町や村周辺の魔物を駆除する。レンもその一人。冒険者には国境がない、ギルドという組織が国を超えて連携しているからだ。もちろん国も支援をする。支援しない国には冒険者は寄り付かないし、ましてやギルドすら経営できなくなる。そうなると国としては貴重な兵士を魔物討伐に駆り出さなくてはならなくなり、治安維持どころの話ではなくなる。だからこそ、国のほぼすべてにギルドがあり、国とギルドはお互い相互関係にあると言っていいだろう。
レンは馬車に揺られながらこの世界の知識を時雨に説明している。
「ねえレン、国とギルドの関係はわかったけど、魔物ってどこから来るの?あっちの世界にはいなかった生き物でわからないんだけど」
「魔物は魔国から来る」
「魔国?」
時雨は首を傾げながら、同じ言葉を呟く。
「そう魔国。人間の国やエルフの国、ドワーフの国色んな国がこの世界にはある。そして魔族が住む国があるんだ、そこから魔物がやってくる」
「そんな国があるんだ。その魔国という国をやっつけちゃえばいいんじゃない?そうすれば魔物も来なくなるんでしょ?」
レンは首を横に振る。
「ことはそう簡単じゃないんだ。魔物は確かに魔族が生み出した生物。だけどね時雨、魔物も一個の生物なんだよ」
「それって・・・」
「うん、塒に住み、繁殖する。もう魔国をどうにかするという話ではないんだ。もちろん魔国をなくせば、新しい魔物は入ってこないかもしれない。だけど、現在いる魔物は一体何匹いるか想像ができない。きっと魔国ですら把握してないと思うよ」
「じゃあ、魔国と交渉して魔物を引き取ってもらえば?」
「そうできればいいんだけどね、魔国にいる知能の高い上級の魔物なら可能なんだろうけど。人間の世界にいる魔物は大体がそれほど知能が高くない。簡単に言うと、魔国に帰れと命令しても魔国に着く前に忘れて仕舞う。帰らせる為には命令する側と命令される側が最初から最後まで一緒にいなければならないんだ。何匹いるかわからないのにそんなことができると思う?」
う~ん、と考え込む仕草を時雨は取る。
10数秒の時間が流れ。
「想像しただけでも一生無理な気がする」
真剣な表情で発言する時雨に、レンは苦笑する。
「ハハッ、そう無理なんだ。園児を誘導する幼稚園の先生みたいなもんだ。それも園児は何人いるかわからないという数だからね」
それに、と付け加えて。
「魔族も決して名前の通りに悪い存在ではないんだよ」
「そうなの?アニメとかゲームでは悪い存在の様になっているけど」
少し寂しそうな表情でレンは答える。
「魔国という地はね、荒廃した大地が続く国なんだ。延々と荒廃が続くんだ。だから、魔族は弱者を切り捨て強者を崇める国なんだ」
「なにそれ!弱者は生きる権利はないってこと?」
「違う、違うんだ。弱者は生きる権利がないんじゃない。生き残ることができないんだ。時雨、君の住んでいた国の様に誰もが未来を掴むチャンスがあるわけじゃないんだよ。魔国という国は、強くなくては生きていけない、弱者は自然の前に淘汰されてしまう。だから、魔族は魔物を生み出した。数で劣る魔族は魔物を労働力にして、必死に生き残る道を模索した」
それがどんな世界なのか想像ができない。時雨の住んでいた世界とはあまりにもかけ離れている。どんな過酷な生活環境なのか、強者しか生き残れないつまりは自分の子が弱者の場合は・・・。
深い考えに入りそうになる時雨に、レンの声が続いていることに気がつき慌てて顔をあげる。
「だから、魔国は渇望する。恒久的な自然あふれる大地を手にすることを。つまりは人の地を手に入れることを望んでいるんだ。そうして奪い奪われる人と魔族の争いが続いている」
ならば、土地を上げれば満足するのではと考えが湧いてでるが、すぐにそれを声にすることをやめる。きっとそんな単純な話じゃないと思って。
暗い表情をする時雨を励まそうとしてか、レンは笑顔を向け。
「時雨の未来はまだ始まったばかりだろう?そう暗い顔をしていると掴めなくなるぞ。あと1日で国境を越える。時雨にはすまないけどそこから徒歩になるけど我慢してくれ」
励まそうとする気持ちを感じ取って、時雨も薄く笑顔で答える。
「わかった、でもなんで徒歩?」
「国交がないからね。馬車は国境で折り返し。わずかに国の認められた商人や重職が往来を認められているだけだから。それ以外は徒歩なんだよ。さらに・・・小国とは違い次の国は倍以上の領土があるから、越えるのは一苦労だ。もちろん最寄りの町で馬車に乗るつもりではあるけど」
時雨はゲンナリする。魔法王国に着くまで一体どれほどの時間がかかるのかを想像して。
やがて馬車は魔物の襲来は2度程あったが小物ばかりでさして苦戦することもなく、国境に差し掛かる。
なんとまだ3話しか書いてないのに、ブックマークしてくれた方がいてありがとうございます。これからもよろしくお願いします。




