真相
長くなってしまいました。2つにわければいいのになと思います。そうすればもう少し読みやすいと思うんですが。書いてると忘れてしまいます。
2人はその後も何度も話し合い、大体の終着点を見つける。1番この会話で驚いた事は、時雨がこの話をするまでその人の事を忘れていたことだ。言われればいたとわかるが、言われなければ認識できない。
セト自身その人の事を1週間前までは覚えていた、それは時雨もセトに励まされていたからわかる。数日前に何かがあり、そしてそれが2人にその人の存在を忘れさせる何かがあったのだろうと結論に至る。ならば行くしかない。そう時雨が決断したとき。
「もちろん僕も行きますよ。なにせ時雨さんの面倒を見ろと言われて雇われたのですから」
驚く時雨を冗談ぽく笑い。
「これは建前ですね。僕自身が知りたいんです。一体何が起きているのか・・・。」
セトは思い出す。過去の記憶を、時雨はこう言っていた、その人に力を抑えてもらっていると。そしてセト自身も本人に確認もとった。答えははぐらかされただが。ただ、これだけは忘れられない。冒険にでると言って、大金と共に。
「彼女を時雨をよろしくお願いします。決してここは辛いだけの場所ではないと教えてあげたいんです。だから、よろしくお願いします」
その人は深々と頭を下げた。よく思い返してみれば、これは別れの挨拶だったのだと今にして思う。セトは知りたい今何が起きているのか。
「皇国に行くの遠ざかるかもよ?」
時雨は真剣な表情で聞く。冗談でもなく、セトの事をおもってだ。
セトもそれに答えるように、真剣に応える、
「僕の一族の因果ですかね。知りたい事があれば調べずにはおれないんですよ。それに・・・」
セトは言い淀む。これは憶測でしかない。それを言っていいかどうか、悩む。
「それに?」
時雨は遠慮なく問いただす。それにたじろぐ。
「えーと、もしかしたらですけど。皇国と関係あるかもしれないです。ただの僕の予想ですけどね」
「何故?」
「理由は簡単です。魔法で力を抑えることはできないし、時雨さんの持っている様な力で抑えることはできないからです。そもそも時雨さんの持つ力は、この世界の法則から外れているんです。そしてその力をまた力で抑えるのは事実上不可能なんです。力そのものに優劣など本来はないものですから。それが出来るのは、この世界にはただ一人だけ」
セトは一拍おいて、僕が知らないだけかもしれないですけどね。と付け加える。
セトの言うただ一人の存在は、時雨でも分かる。でもそれは・・・その人が皇王という事になるのではないだろうか。いくらなんでも王が冒険者などやるものだろうか。疑問が尽きない。ただセトの言葉を否定する言葉をその人を言っている。
「その人は、皇国を・・・。違う。皇王を憎んでいた」
「理由を聞いても?」
「確か、この世界を戦争だらけにしたって・・・。もう少し難しく言ってたかもしれないけど」
「なるほど」
セトは少し思案し、口を開ける。
「前にも話しましたよね。皇王は弱い人を助ける人だと」
時雨は頷く。
「その中に魔族が入っていたら驚きますか?」
セトの言葉に時雨は驚く。時雨の知っている魔族とは大体が悪だ。そして旅の中で聞いた話でも怪物をこの世界に解き放っている張本人のはずだ。
時雨の驚きを予想どおりとばかりに、一瞥し。
「そいう御方なのですよ、皇王とは。理想をどこまでも追い求める王。そしてそれは実現したのです。100年ほど前にね」
「100年前・・・」
「何故魔族と人間が互いに争っている理由はご存知ですか?」
それは聞いたことがある。魔国は不毛な土地だと。だから、魔族は豊かな土地を求めると。
「豊かな土地が欲しいから」
「ええ、そうです。一時魔族が支配しても、そこはすぐ戦火になる。人間も魔族の侵入を許しはしませんからね。そして魔族は人間種総出で掛かられては維持できない。何より、せっかく奪った土地が荒廃するのが目に見える。だから魔族は最後には負けるんです。奪った土地を汚さないためにも、かと言って諦められるわけでもなく、そんな争いが永遠とね」
「では魔族は本当はそんなに悪くない?」
セトは頭を振る。
「正義とは人間種にも魔族にもどちらにもあるのです。そして悪も同時にね。そんな判断はそれこそ神様にしか出来ない。まあ、皇王はそんな永遠とも呼べる争いに終止符を打とうとしたわけです。魔族に豊かな土地を渡す事によって。建前は皇国の領土の島を魔族に貸したのです。永久的に領土を貸す条約を締結したわけです」
一息ついて、寂しそうな表情でセトは言う。
「確かに平和になりました。わずか数十年程ではありますが、魔族と人間種という争いはなくなったのです。しかし世代が交代すればそれに納得していた諸侯達もまた考えが変わる。そうなればどうなると思いますか?」
「分からない」
時雨にわかるわけもない。政治などほとんど他人事の自分には。
「皇国はこの条約を結ぶにあたって、かなり尽力し説得しましたし、自らの領土を貸しました。そしてそれは実りました。ですが禍根が消えたわけではないのです。世代が交代すれば、当然何故魔族に貸す必要があるのかとか、侵略の橋頭堡にしようとしてるんじゃないだろうかとか異論が出るわけです。そしてそれは年数が進むごとに大きくなり、言わば皇国支持派の国と異論派の国とで諍いが起き、そして火種が大きくなった。当然皇国が貸し与えた島もです。魔族として恩を仇で返したくなったのか、汚したくなかったのか、速やかにその島から消えました。ですがその争いが、今も起きている事を言っておられたんですね」
時雨には難しく、半分程しか理解できなかった。思った事は、皇王は普通の人、そんな印象に思えた。理想は立派だが、実現する為のデメリットを考えていなかった様なきがする。そもそもセトに言わせるほど知識がある宰相がついていながら、こうなることを予見できなかったことがむしろ不思議だ。
不意に言葉が思い浮かぶ。
こんな世界では矮小な存在の自分が出来る事なんてたかがしれている。
その人はそう言った。まるで自分が出来る事は限られていると理解しているかの様に。
セトと出発の段取りをしているうちに夜も更け、準備は明日にしようということで床に入る。
ゆっくりとゆっくりと夢の中に落ちていく。
そこは王宮の中の様に絢爛豪華。大勢の人が中央を開けて2列で並んでいる様は、圧巻の一言。中央で一人が報告をしている。
「友邦の公国も参戦を表明しました!」
時雨は一時、建国の時を思い出すが、すぐ違うと理解する。あの時は、数カ国。しかし、今回報告がする者が言う言葉は、それだけでは収まらない。幾つもの国の名前を上げ、周囲の者は感嘆の声を上げる。ただ一人を除けばだが。中央の一番奥に座っているおそらくは王であろう人の表情は青ざめている。いや、それどころか白く変色してるように顔色が悪い。
王の側近くに立つ男が声を上げる。
「陛下、皇国も参戦を表明しなければ、示しがつきません。どうかご下知を」
沈黙の帳が降りる。まるで、王の言葉を今かと今かと待つ様に、誰も言葉を話す人はいない。
それでも王は言葉を話さない。いや口は動いているが、言葉になっていないだけだ。
王はぶつぶつと呟く。小さく小さく、余程近くにいなければ聞こえないほどの囁き声を。
「何故、何故だ、どうしてこんな事に。平和になるはずだったのにどうして」
近くにいる男が声を再度掛ける。
「陛下今こそ、皇国に支持をしない国を粛清する好機です、どうか」
王は力弱く男を見る。そして絶望の色を濃くする。
「こうなると知っていたのか、ヘルゲン・・・。あれほど賛成したのはこの為なのか」
それから、何が起きて何が起こったのかは夢現の様にすぎていく。王は以後も返事をしなかったからだろう。話し合いは何も進むことなく終わり。
寝室に場面が変わる。
王はベッドで頭をこすりながら、後悔の言葉を呟く。
「慢心した。自分ならもしかしたら平和にできるのではないかと、思い上がった。できるわけがない、元々才能などないとわかっていたはずなのに、出来るわけがない。王と呼ばれたからか、何年も平和に統治できたからか、だがそれもこれも、俺の力じゃない。俺が出来ることはせいぜい目の前の人に何か手を助けられるくらいだ。それなのに、どうして・・・」
誰かに懺悔したかったわけじゃない。懺悔したところで、状況は変わらない。それでも後悔だけはどうしても止めることができない。
後悔の言葉を何度も何度も吐き出していると。
「忘れたいですか?」
声が掛かる。王は目を見開き、その声の主に視線をやる。
そこで夢は覚める。あまりいい夢とは言えなく、寝起きはすこぶる悪い。何の夢かはうっすら覚えてる分、気持ちも暗い。力は制御できてるはず、それでも夢を見たのは、セトから話を聞いたからだろう。話を聞いてるときではなく、まさか寝てる時に発動するとはなかなか質が悪い。




