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理想郷  作者: かきね
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異世界人

「さあ、ここが俺のお城だ」


 レンが案内した場所は、良くもなく悪くもない普通の宿屋の一室。

 周囲を見渡し居場所がない様にキョロキョロする彼女に、レンは小さなテーブルと椅子が置かれてる場所を指差す。意図を読み取り、彼女はゆっくりと椅子に腰掛ける。レンもまた対面の椅子に腰掛け。


「まずは自己紹介をしよう。俺の名前はレン・ホシ。君の名前は?」


 笑顔で自己紹介するレンに躊躇いながらも、答える。


「神崎時雨です」


「年齢は?」


 時雨は困惑する。レンという名の男は年齢を言わないのに聞いてくるのはおかしいと思う感情からだった。


「あなたは?」


「レンでいい。俺は~、何歳に見える?」


 時雨は首を傾げる。何故そんなことを聞くのだろうと。スバルの顔を見て少し考え込み。


「20代後半?」


「そうそう俺は27歳なんだ」


 レンの間髪いれずの言葉に困惑を深くする。まるで、時雨が言ったからそのまま答えたように聞こえた気がするからだ。


 そんな時雨の困惑をよそにレンは言葉を続ける。


「よし、自己紹介も終わったことだし、本題に入ろう。君・・・、時雨でいいかな?」


 時雨は頷く。


「時雨は、何が望みなんだ?」


 これで3度目だと時雨は思う。レンは親切で時雨をここまで連れてきたのは分かる。しかし、どうしてこんな質問の仕方なんだろう。


 時雨は言おうか言うまいか、考え込む。言えば、必ず予想通りの結果になる。だからと言って言わなくてもいずれレンは気が付く。だから、結果が同じならばと、時雨は頭を覆っていたフードのようなボロ布を取る。


 これを見てレンは驚くだろうか、それともさほど驚かないだろうか。恐る恐るスバルを窺う。


「異世界人か、なるほど」


 時雨の気持ちとは裏腹にレンは関心する様に答える。それもそうかと時雨は思いつく。この世界では自分も最初はそんな反応されたのだと。異世界人は珍しいが忌避されることなく当たり前の様に受け入れられていると聞かされた。むしろ、国によっては重宝されている。それも全て異世界人のこちらにやってきた恩恵、つまり能力が授けられるからだ。能力は千差万別、戦闘に役に立つものから、はたまた農業に役に立つもの、本当に様々な能力があるらしい。


 時雨は悩む。自分の口から言うのは辛すぎる。かといって、親切にしてくれているレンに言わずにいたら、レンはきっと私を敵の様に見る事になるだろう。


 時雨が深く考え込んでいる様子を。


「大丈夫、俺は大丈夫だよ。異世界人なんて何人も見てきた、そしてその能力も。だから、言っても俺は君を助ける。追い出すことはしない」


 レンは安心させる様に微笑みながら時雨に話しかける。時雨は何故か絶対無理だとわかっているのに、レンの笑顔に安堵してしまう。


「わ・・・私の能力は・・・」


 時雨は生唾を飲み込む。


「人の運を吸い取り、自分の力に変える能力。近くにいれば無差別に運を吸い込み自分の力に変えるの」


 チラッとレンを見る。微笑みをいまだしている。だけど心の奥底ではどう思っているかわからない。


「だから、私の近くにいればレンあなたも、例外じゃないの。わかるでしょ?追い出したくなったでしょう?」


 叫ぶ様にレンに言う。


「能力はわかった。でも言ったと思うけど、追い出しはしないし、助けるよ」


 当たり前のように言うレンに。


「わからないの?近くにいればあなたは不幸になるの!私はいるだけで周りを不幸にするの!皆、皆、最初は親切にしてくれた。だけど、その皆を私は不幸にしたの!不幸にした人達は私を敵視する様になる。それはレンあなたも同じよ。耐えられるはずがない!」


 息荒く話す時雨に、


「そう勢いよく話込むと喉を痛めるよ。今飲み物を入れるね」


 時雨は呆然とする。コップを取り出し、香り豊かなお茶を入れるレンを見て。


 この男は状況を全く理解してないと時雨は、落胆する。


 お茶を時雨の目の前に差し出し、手でどうぞと合図する。


 対面に座り直し。


「時雨、それで君は何が望みなんだ?」


 4度目の質問が来る。


 怒りがこみ上げる。唇をワナワナと震わせ。今にも大声でぶちまけたい衝動に駆られる。


 望みなどこの世界に来て一度だって抱いたりしない。いや、してはいけない。不幸にする存在がそんな大望を抱いていいはずがあるわけない。そんな想いの時雨にこの男レンは無神経にも聞いてくるのだ。怒りが湧かない方がおかしい。この国にやっとの思いできたのだって、小国であり中立国だったからだ。人の少ないこの国ならば、人を不幸にする確率も減ると思ってのことだ。


 レンは初めて笑み以外の表情を見せる。


 時雨はそれにドキッとする。初めて見せるレンの真剣な表情に、怒りが一気に沈静化する。


「俺は守れない事は言わない。嘘は嫌いだからだ。こんな世界では矮小な存在の自分が出来る事なんてたかがしれている。でもね時雨、君の言う能力は俺には効かない。それどろこか抑える事だってできる」


 時雨は驚きで口を半開きになる。


 今まで何度も願った言葉が初めて聞けた。


「今は能力の使い方を知らないだけだ、ダダ漏れなんだよその能力は。今は俺が抑えるけど、いずれ時雨が抑える事ができるようにしよう。何度も聞くが望みはなんだ?」


 やっと聞けた、自分が求めていた言葉に感情の蛇口は勢いよく開く。


「私の私の望みは、元の世界に戻りたいとかもうどうだっていい。人を傷つけず、人に敵視されることなく、普通にこの世界で生きていきたい。色んな所を見て回り、おいしいものを食べて、一人の人間として生きていきたい!」


 時雨の今まで封じていた思いが勢いよく口に出る。最初は元の世界に戻りたいと何度も思った。そんな気持ちなんて1ヶ月もすればつゆと消える。自分という存在が不幸を招く存在と知ってしまってからは、ただただ平穏に生きたいとそればかりを願う日々。


 レンは満面の笑みで頷き。


 椅子から立ち上がり、時雨の側まで近寄り、膝を折る。


「今から俺は時雨の剣でもあり盾である騎士となろう」


 呆気に取られる時雨に。


「今の君じゃ、能力の使い方を知っても一人では生きていけないだろう?」


 微笑むレンに、時雨は初めて笑みを浮かべ何度も何度も頷く。


「これからよろしく私の騎士レン」


「よろしく、俺のご主人である時雨」


 2人は目を合わせ、笑う。


「でも不思議ね、レンの髪は金髪なのに目は黒目なのね。他の人達は髪と目の色は一緒なのに」


 困った表情を浮かべ。


「時雨の髪は肩まで流れる綺麗な黒髪だね。顔は少々年齢より幼いけど」


 レンの言葉に時雨は頬を膨らませる。


 かなりお怒りの様子に慌ててレンは謝る。時雨もどうやら気にしている事に触れた様だった。


 


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