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理想郷  作者: かきね
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「初めまして、私はセト・フランと言います。これからよろしくお願いしますね」


 彼から出た最初の言葉だった。というのも、魔法王国について当初の目的である、自分の力を知る為、もしくは制御する術を得る以前に、この世界の知識というものがなかった。本来は魔法王国にある学校に通うつもりではあったのだが、文字すら書けない私には通うことすら難しいという結論に至った。


 そこで、レンが考えた末の答えが彼だった。


 そう、元いた世界で言う家庭教師としてセトをレンは雇い連れてきたのだ。突然目の前に連れてこられて戸惑う私を無視するかの様に話は進められ。今ではある程度世間話ができる程にはなっている。


「大分、文字を書くのにも慣れましたね」


 セトが微笑む。彼はこの世界では美男子と呼ぶほどではないが、海の様に青い髪、そして青い目、元いた世界で言えば、穏健そうな感じで最初はおっかなびっくりだったが、その微笑みですぐに警戒心などなくなった。何より、言葉が同じ土俵に立って話してくれるとわかったからなのかも知れない。


「うん、やっとここまで来たって感じ」


 文字を覚えるだけで、もう1ヶ月経っている。これからの事を考えると多少ため息がでそうになる。


「早いほうですよ、魔法王国の学校でも1年かけて覚えるものなのですから」


「それは、そうなのかもしれないけど・・・」


 少し躊躇い。


「子供がだよね?」


 セトは苦笑する。


「確かにそうですね。でも、本当に早いほうだと思います。魔法王国にも異世界人はいますけど、元いた世界の言葉に慣れすぎて、子供以上にかかる人だっているのですから」


「そうなの?」


「そうなんですよ」


「そっか・・・、なら喜んでいいのかな」


 セトは頷き。


「では、今日はここまでにしましょう」


 待ってましたとばかりに、時雨は笑顔になる。毎日の楽しみがこれから始まるのだ。セトはいつも勉強が終わると、色々な話をしてくれる。レンも少しは話してくれるが、どいうわけかいつもはぐらかされる。話しても誰でも知ってる話か、せいぜい数年前の話をしてくれるくらいだ。


 セトがやれやれと呆れた様な仕草を見せるが、時雨にはそれが嘘だとわかっている。彼自身教える立場で見せているだけであって嫌いではないのだ。


「今日はなにを話しましょうか?」


 セトが時雨に聞いてくる。


 いままで、たくさんの話を聞いた。だから今日はいつも聞かない話を聞いてみる。


「セトはどうして家庭教師をしているの?」


 時雨の質問に少しの間を置き、手を顎に乗せ。


「お金が欲しいんです」


 もっとすごいことを言われるのかとおもって、少し肩を落とす。


「おや、残念そうですね?」


「セト先生が言うことだから、夢があるのかと思った」


 セトがいつも見せないような、ニヤついた表情を見せる。


「夢ですよ。お金はその第一歩。僕の話を今までしていませんでしたね。僕はね、落ちこぼれなんです。フラン家の落ちこぼれ」


 時雨は首を傾げる。セトは優秀だと思っているからの行動だった。


「そうは見えないけど・・・」


「僕の家は魔法王国で名前が乗るほどの名家でしてね。皆一族は、魔法王国で立派な官吏や職業に着いているのですよ。だけど僕にはそれができなかった」


「なぜ?」


「僕にはこの国は本当の知識を求めているとは到底思えないのです。異世界人だからとか、エルフだからとか、ドワーフだからとか、魔族だからと必ず壁が存在する。それはこの国でも同じ。人間とその他で別ける。それでも才能があり、見出す人いれば、出世することもできるでしょう。ですが、それはあくまでも人間種に限るのですよ。それは本当に知識を求めているとは思えない。僕の祖先、アシュ・フランが求めていた物とはね」


 時雨は唾を飲み込む。彼の話す事はいつも、少し冗談ぽく話す物だが、今は違う。笑顔などなく、また瞳は真剣そのものだ。


「先生の祖先って・・・」


「聞いたことがあるでしょう?魔法王国と名前を改名した出来事に関連した人ですから」


 そこで時雨はハッと思い出す。レンからこの国の名前の由来を聞いたことがあったからだ。だけど、まさかその近しい人物と関わりを持つことなどないとばかり思っていた。だから、記憶の片隅に追いやって思い出せなかったのだ。


 呆然とする、時雨を今なお真剣な面持ちで見つめ。


「僕は一度皇国に行ったことがあるんです。名分は留学という名でね。そして思い知った、知らされた。あそこはまさに知識を求める場だと。あそこは種族等問わないんですよ。なにせ異世界人が王なのだから。だから僕はあそこでもっと学びたい。その為にお金が必要なのです」


 そこではたと気が付く、


「どうして皇国で学ぶのにお金が必要なの?住めばいいじゃない、種族問わないんでしょ?」


 悲しそうにセトは首を振る。


「皇王はとても寛大な方の様です。貧しい者、種族で迫害を受けたもの、そいう方を率先して皇国の民として受け入れる」


「だったら!」


「そのしわ寄せはどこに来ると思いますか?」


 そこで気が付く。寛大、優しい、慈愛、どれもが綺麗な言葉だ。皇王とはそんな人物だと皆が言う。では、果たしてそれでうまく回る物だろうか。そんなことはわかりきっている、綺麗事だけでは世界は回らない。


「普通の人・・・」


 セトは静かに頷く。


「王は綺麗事だけでは、国の運営等できない。しかし、それをしてしまうのが、皇国。家臣は王の言葉を実行する。その為にそのほかを捨てるのです。国がうまく回るように調整しながらね。そんなことは普通は不可能なはず、弊害が起こる。だが、僕の家の様に皇国にも有名な一族がいる。代々宰相をしているヘルゲン家、ご存知ではないと思いますが、その一族が実行してしまう。僕の家が知識の探求者ならば、ヘルゲン家は知識の極地と言えるかもしれないですね」


 そしてセトは寂しそうに呟く。


「だからお金が欲しいんです。僕の知人に皇国に橋渡しをしてくれると言ってくれる人がいるんです」


 時雨はなんとなく、お金ではどうにもならないのではないかと思う。それほど、王の言葉が正しく実行される国に賄賂等通るのだろうか。ふと、セトの表情を見る。


 そして分かった。


 セト自身、そんなことはわかりきっていることなのだと。それでもセトは諦めきれない、例え裏切られようとも、嘘をつかれようとも、彼はその夢を求めるのだ。


 セトの気持ちは痛い程理解できる。自分もこの力を何とかするためにここまで来た。それを諦めろと言われても、諦められる物でもない。


「セト先生」

 

 言葉を発して、次の言葉を悩む。どう励ませばいいのか、正直に言うことは彼を傷つけるだけにしかならない。だから悩む。


 ふーと大きく息を吐いて彼は微笑む。


「すみません。悪い癖です。自分の夢を語る時はどうも熱くなってしまう。僕の話は終わり。それで最初に聞きましたが、時雨さんの力についてですが、もう少し詳しく聞かせてもらっていいでしょうか?僕もこの1ヶ月考えたのですが、どうも時雨さんが思っている力とは思えないのです」


 一瞬で表情を変えるセトに少し戸惑いながらも。


「どいうことですか?」


「いえ、僕の知っている異世界人の力とは、その人の生き方もしくは考え方が大きく作用される物だと思っています」


 時雨は少し、頭を伏せる。セトの言葉は、時雨にとって残酷な言葉に聞こえたからだ。


 それをセトも感じ取ったのだろう。話す言葉を間違えたと、右往左往する。


 何分経っただろうか、時雨が口を開く。

話ばかりになります。次も話多めになります。動きがない話ばかりですみません。

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