皇国の始まり
これが皇国の始まりであり、繁栄の始まりだった。皇国と交戦した2カ国はもうすでにない。唯一皇国に和平交渉で最大限譲歩した公国が残るのみであった。公国は他の2カ国と違い余力がなかったし、継戦する力が例えあっても、あの恐怖を再び味わう気があるわけもなく、戦を終わらせる事だけに全力を尽くしたのだ。しかし、他の2カ国は違った。被害は当然かなり出たわけだが、余力はまだまだあったし、国内に被害が出たわけでもない。何より皇国という出来たばかりの国、それも異世界人の王に譲歩する気などさらさらなかった。
結果和平交渉は公国以外決裂。
皇国としても仕方ない決断と言えた。公国はかなりの和解金、援助を約束してくれたが、北のテーグ共和国、南のウカルナ国はむしろ皇国に譲歩を迫ったのだ。テーグ共和国は特にひどく敗戦国に近い形をとったのだから、決裂は当然とも言えた。対等和平ならもしかしたら皇国はそれに応じたかもしれない。しかし、皇国側の譲歩の和平は今後に大きな禍根を残しただろうし、3カ国にも周辺諸国にも侮られ、戦はいずれまた起きただろう。
交渉決裂となれば戦は継続となる。テーグ共和国にレイナ、ウカルナ国にシルクスが対応し、しばらくは睨み合いの形となった。しかし、公国の参戦によりそれは一気に崩れた。
公国は皇国側に立ち、参戦したのだ。それをきっかけに様子を伺っていた周辺諸国はテーグ共和国側ではなく、皇国側にこぞって参戦を始めた。そうなれば、疲弊しているテーグ共和国側は数の暴力に抗えるわけもなく国は諸国に分割され、滅亡となった。
ここで一番の功労者は、ユルグに後任を任され宰相に成り立てのヘルゲンの活躍があったからこそ。ヘルゲンは、和平交渉時に公国に形ばかりの参戦を約束させていた。参戦準備が整う間、じっと戦を見ていた周辺諸国に情報を垂れ流しただけでなく、誇大に吹聴しまわった。その結果、打算的な考えもあっただろうが、周辺諸国は皇国陣営側に立つ運びとなったのだ。
それから皇国は、躍進を遂げる。人口は次第に増え、迷いし異世界人の安住の地として、色んな才を持つ異世界人もやってくるようになった。また様々な種族を皇国の民の一人として住まわせる政策をとっている。色んな問題はその都度出てきては、優秀な臣下により解決され、今では周辺諸国は並び得ぬ強国となっている。
皇国の始まりが約200年前、それにも関わらず、今でも皇王は健在だという話だ。何でもあの日から年を取らなくなったという。
旅を続けて、約1週間皇国の話には事かかない。それだけこの世界では皇国という国が認められているという事だろう。それは私にとっては嬉しい事であると同時に、悲しい事でもあった。色んな人の話を聞いた、皆嬉しそうに話してくれる。だけど、何故なんだろう。話を聞くたびに、まるで見た事の様に私の頭の中を駆け巡る。
私の頭の中の彼はいつも後悔していた。元の世界のテレビの様に鮮明に見えた理由ではない。だけど、私にはそう見えた。そして誰かと似ている気がした。それが誰なのか元の世界の誰かなのか、思い出す事ができない。
話を聞いてる時は、ドキドキしながら楽しく話を聞けるのに、話が終わるといつも悲しく涙がこぼれそうになる。
新しい街につくたびにこうして見て回って話を聞く、でもいつも帰りは心が暗くなる。
トボトボと下を向いて歩く。
「時雨!遅いじゃないか!」
ハッと前を見て、数十メートル先に見知ったレンがそこにいるのを確認する。どうやら考え事をしているうちに、宿に着いていた様だ。
心配そうな表情ではなく、まちくたびれた表情を浮かべているいつものレンの表情に少し頬が緩む。まだ日は完全に落ちてはいないが、落ちてからの世界は多少危険になる。それは街も例外ではない。しかし、レンが不満そうな顔をしているのは、ただ夕食を早く食べたいのを私は知っている。
少し早足になりながら、レンの元まで行き。いつもの。
「ごめん、少し遅くなった」
「少し・・・、まあいいや。さっさと中はいろう」
やり取りを終え、宿の中へと入る。
本当は皇国の話はもう少し続く予定だったんですけど、それは合間合間に入れる事にしました。今回の話は変化がほとんどない話になってしまいました。次回からレンと時雨の話に戻ります。




