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3話 解決しても狂うウサギ達

 『影狂』の俺ことクテン、『戦闘狂』のマリンに加え、『説狂』のエメルが追加された。ちなみにエメルはまだまともなほうだ。何回も繰り返すがうちのギルドは狂ってる。常識人のほうが珍しいくらいに。いや、その常識人も常識がある上で狂ってるのだから尚更に救えない。

 そのせいなのか知らないけど、この中では一番強いのはエメルだ。接近戦では

 エメル>マリン>俺

 こうなる。

 遠距離戦なら

 エメル>クテン>>>>マリン

 知略戦なら

 エメル>>クテン>>>>>>>>>>マリン

 こうなる。ということでこの面子ではエメルには誰も逆らえない。



◇■◇■◇




「起きなさい。朝ですよ」


「まだ4時ですが?」


「関係ありません。早く起きなさい」


「......はい」


 何故か俺達の部屋に居たエメルはまだ4時だというのに俺を起こした。まだ覚醒していない頭で辺りを見渡すと向かいのベッドで寝ていたマリンが居ない。先に起こされたのだろうか。

 そのまま頭を覚醒させようと外の井戸に向かったのだが、聞こえてきたマリンの悲鳴は何だったのだろうか。

 その後、部屋に帰って来た俺を迎えたのは、正座して涙目で「うう、だってぇ」と言うマリンと、仁王立ちで「だから貴方はヘタレなんです」とマリンに毒を吐くエメルが居た。何があったのかは、SAN値的に聞かないでおこう。


 10分後


 ようやく調子の戻ったマリンと不満げなエメルと朝食を取りながら、今日の予定を立てる。


「それで、どうするんですか。もう分かってるのでしょ?クテン」


「え!?ほんとなのクテン君!」


「昨日言っただろ、ってそんなに引っ付くな。食べづらい」


「で、でも、ぐへぇ」


「行儀が悪いですよマリン」


「さ、流石に首を引っ張るのは可哀想じゃ...」


「何ですか?貴方も30分コースで受けたいですか?今ならセットでプラス30

分付けますよ」


「いえ、何でもありません」


「ちょっとクテン君!?」


 悪いマリン。自分の事の方が大事なんだ。


「食べ終わったら、やりますので逃げないでくださいね。後、クテンもですよ」


「え?何で俺まで?」


「据え膳食わぬは男の恥ですよ」


「はぁ?」


 エメルの言葉にマリンが顔を赤くする。何のことだよ



◇■◇■◇



 前にちらりと言ったことがあるが、この世界には魔獣と呼ばれる知性の無い凶暴な生物がいる。そいつらは一纏めにモンスターと呼ばれる。

 モンスターの中には、魔獣と違い、知性があり特殊な能力を持つ生物も入る。そいつらは魔生(ませい)と呼ばれる。そいつらは魔獣の上位種として成り立ち自分達の領域を広げようとしている。だが、魔生が魔獣よりも強いわけでは無い。

 今回も同じようなものだ。


「え、魔生に住み憑かれてる?」


「ああ、おそらくこの町に生きて住んでる奴はいない」


「でも、え~と、え~と」


「何も思いつかないんだったら言うなよ」


「証拠も分かっていますか?」


「勿論。マリンと違ってちゃんと証拠くらい分かったよ」


「む~。私だってちゃんと考えてるもん!」


「いや、無いな」


「無いですね」


「酷い!」


「で、証拠が何か言ってみなさい?」


「簡単なことだって。―――だろ?ちゃんと能力で確認は取ってある」


 この世界には能力(センス)という不思議な力がある。

 能力(センス)の内容は個人の個性に左右される。

 俺は影響力が高いため、【影響下(サウンドエフェクト)】という能力(センス)を持っている。

 基本能力は1人に付き1つなんだけど、

 俺の能力(センス)は影響を受けたものを変化する。

 だからどんな能力(センス)にでもなり、使いこなす。団長曰く、お前の能力(センス)は例外だ。と言われたほど。

 だがこの能力(センス)には欠点があり、影響していることに気付けないと使えないということ。意識が出来ないタイプの能力はある意味天敵といえる。

 そのため、今回も気付くのが遅れたけど、一度気付けばこっちのもんだ。


 俺は村長を村の入り口に呼び出した。マリンとエメルは居ない。


「なあ、村長さん。いや、魔生か」


「あ、あの何のことですかな?それより消えた皆の謎を早く解いて欲しいのです」


「いや、もうその演技とかしなくていいから。お前が魔生の本体だろ」


「な、何を言って―――」


「この村に生きてる奴はいない。いや、生物すらいない」


 この言葉に村長は完全に黙った。昨日話を聞いた村人も、最初に消えた夫婦もそもそも存在しない。 


「おそらくこの村は幻覚か何かだろう。お前の力では完全に再現は出来なかったみたいだが」


 あの夫婦の家でまるで人が生きているように感じたのは、幻覚では風化しないからだ。だからずっと新品のまま、新鮮のままだったのだ。


「何故、分かったのですかな?語学のために教えてくれませんかねぇ」


「まず、お前は常に2人組みで行動させていると言った。だが、村人は男、女の順で消えているといった。だが、2人組みは必ず男と女のペアじゃないだろ男通し、女通しでもありえるはずだ」


「ええ、ですがあくまで推測に過ぎないでしょう?何の確証があって言っているのですか」


「俺の能力(センス)がそういう力なんだ。運が無かったと諦めろ」


「ははは、その通りですよ。全く運がない。次はもっとうまくやりますよ」


「次なんてねえよ。ここでお前を倒せば少なくとも報酬がでる」


「謎を解いたのは見事ですが、まさか幻覚が作れる私がのこのことやってくるとでも思いましたか?今頃貴方のお仲間が居る所に私の分身とも言える村人たちが押し寄せていると思いますよ」


 老人の姿のままニタリと笑う魔生、しかしそれも長くは続かない。なぜなら、


「くっ、これは一体!」


 先程から妙に焦った様子を見せる魔生。多分マリンがやってんだろうな。


「やっぱりか」


「何をしたのですかな?」


「ああ。全く、押さえるの大変なんだぞ」


「聞いて―――」


 叫ぼうとした魔生にいきなり『鎖』の文字(・・)が本物の鎖のようになり拘束される。


「これは!」


「エメル、マリンはどうなった?」


「ええ、いい笑顔でしたよ」


「そういうことじゃねえよ」


 分かってます。と言いつつ魔生に近づくエメル。

 ああ、いつものが始まるのか。ご愁傷様だな。


「じゃあ、俺はマリンを止めてくるよ」


「ええ、先に帰ってもいいですよ。私は久々なのでじっくりやりますので。ん?なんですかその引きつった顔は帰ったら説教しますので、そのつもりを」


「あいあいさー」


 そして、2話の冒頭に戻る。


「全く何やってんだよ。また始末書書かないといけねえじゃねえか」


「エヘへ、ゴメンゴメン。手伝ってあげるから」


「お前も書くんだよ。始末書」


 かくして俺達の依頼は終わった。ちなみにエメルは何をやっているかというと、


「―――であるかして、」


「も、もう、勘弁してくれ」


「何を言っているのです。罪には罰、貴方はそういうとこが―――」


 魔生を討伐する前に説教を続けまくる。終わる頃には3日は経っていることだろう。


「さ、帰るか」


「そうだね。どっちが早く帰れるか勝負しようか?」


「絶対嫌だ」


「え~やろーよ」


 こういったグダグダも含めてが俺達の日常だ。

 帰るまでが依頼。

 何故かそんな言葉が頭によぎった。

感想、批評待ってます。

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