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1話 『影狂』と『戦闘狂』

 俺は昔から異常なほど人に影響されやすかった。それはあの黒死体事件以前からのことで、あの時も死体に影響されて何も感じることはなかった。

 それは俺が『影狂(えいきょう)』だからだ。

 俺が所属するギルド[三日月のウサギ]は『狂』と付く奴らが集まるので他のギルドから一目置かれてる。...良くも悪くもだけど。それでうちのギルドでは自分の狂ってる部分に狂と付けコードネームとしている。俺は『影響』の響を狂にして『影狂』と名乗ってる。

 そんなわけで俺も『狂』が付く変人と取られることがある。正直それは心外なのだが、他でも無い俺がそれを認めているから声を大きくして言えないのだ。自分で思うのと他人から言われるのではかなり違ってくる。まあこう言っても影響されて考えが変わるのだが。

 とりあえず俺はあの後からも特別変わったことも無い。このギルドに入ったこと以外は。このギルドに入ってから本当に大変だ。個性の強い狂人ばかりの中に『影狂』の俺が居るせいで影響されまくって大変なのだ。

 今日も依頼で二人で行かないといけないらしい。ああ、本当に癒しがほしい。



◇■◇■◇



「ねえねえ、あの熊見てよ。戦ってみたくない?」


「別に放置でいいだろ?」


「じゃあ、クテン君が戦ってくれるの?最近消化不良なんだよね」


「嫌だよ。それに帰ってからしろよ、そういうの」


 俺と横に並んで歩いているのはマリン。マリン=ルーテル。ギルド内で一番歳が近くて、よくつるんでるとか言われるけど、本当はマリンに連れ回されてるだけなんだけど。今回も勝手に俺に付いて来たのだ。

 金髪で蒼眼。スタイルも良い方。ちなみに俺は黒髪に黒眼だ。見た目だけならこいつはもてる。でもこいつもうちのギルドの一員であって、会話からも分かるように『戦闘狂』だ。しかも攻撃するときはSで、防御するときはMという―――自称ハイブリットだとか言う、厄介な性癖を持っている。

 それにこいつはバカだ。アホと言うとアホっ娘みたいで可愛いから言わない。ほんとに同世代か疑うくらいに。

 俺もこいつと居ると『影狂』して『戦闘狂』になってしまうので、なんとか戦わせないようにする。けれどもバカなこいつは


「おりゃあぁーー!」


......ほら。すでに戦ってる。全く面倒な奴だ。


「なにしてんだよ?」


 マリンの元に着くとすでに戦っていたであろう熊が無残にもグチャグチャになって足元に転がってた。


「だって襲ってきたし、なんだけ?ほら、アレだよ、アレ?」


「はあ、正当防衛だろ。この間も言ってたし」


「だって興味ないし」


 こいつはいつも戦闘のことばっかでバカだ。見た目だけはいいのに。こういうのを残念系って言うんだろうな。


「あ、何かバカにされた気がする」


 しかも、妙なとこで勘がいいし。毎回隠しておいたお菓子、全部食べやがる。ちくしょう。この間の高かったのに。


「ほら、着いたぞ。此処が‘コアン村‘だ」


 そうこうしてるうちに目的地である村に着いた。



◇■◇■◇


 ギルドというのは国から与えられた依頼を請け負い、解決する集団のことを言う。俺が‘団長‘と出会えたのも‘団長‘が依頼であの村に来たからだ。

 そして依頼とは千差万別で個人から村、街、国までの規模で受けるものによって報酬が出る。大規模ギルドは受ける依頼は選んでるらしいが、うちのようなわけありなギルドより取り見取りというわけにはいかないのだ。


「おお、よくぞ着てくださいました。村長のナキダです。どうぞごゆっくりしてください」


「いえ、お構いなく」


 俺達を出迎えたのはナキダと名乗った男は60代後半くらいの老人だった。案内された部屋にマリンと座りながら、定番のやり取りを終え、本題に入ろうとする。こういうの出来る奴はうちには2,3人しか居ないからな。もちろんマリンは無理なので黙っておくように先に言ってある。

 今回、俺達は依頼の内容を聞かされてない。ただ行くように言われただけ。正直言ってまともなもんじゃないと分かってる。うちのギルドは先に言ったように、良くも悪くも有名なため変な依頼が多い。今回も同じで絶対まともじゃない。


「それで、我々は何をすればいいのでしょうか?」


「...実は最近、村の者達が消えるのです。それも前触れも無くいきなり」


「攫われたということですか?」


「いえ、そういうわけでは無いのです。対策として常に二人一組で行動するように言ったのですが、二人共消えてしまいため、分からずじまいでして。そこで貴方達に依頼したのですが受けていただけますでしょうか?」


「なるほど、分かりました。我々が必ず解決しましょう」


「おお!ありがとうございます!宿を用意していますので今夜はそこで」


「ありがとうございます。行くぞ、マリン」


「はーい」



 部屋を出て用意された宿に行く途中マリンが聞いてくる。


「ねえ、今回の件どう思う?」


「何か妙だよな。いきなり消えるなんて。裏があるって考えた方がいいな。もしくは何かを隠してる」


「あーやっぱり?私もそう思ってたんだ」


「嘘付け。お前がそこまで考えられるとか思えないし、白々しすぎるだろ」


「何だとー!」


 くだらないやり取りは宿に着くまで続いた。



◇■◇■◇



 まずは聞き込みから始める。が、問題はマリンだ。こいつに聞き込みをさせるとまともに出来やしない。こいつに初めてさせたら、聞き込みに言ったおばちゃんにアメ貰うだけで情報の1つも無かった。置いて行きたいが、行くと言い出すし2人で回らないといけないから本当に面倒だ。2人なら半分で済ませるのだが、そこらへんはもう諦めてきてる。でも愚痴くらい言っても良いと思う。


「いくぞー」


「あ、待って、待って。まだ靴履いてなーい」


 挫けそう。



「ああ~最近騒がしいアレだろ?悪いが俺は知らねえな。他の奴なら知ってるんじゃないか?」


「え、突然消えた人達かい?...確か、村の端に住んでる夫婦が最初の犠牲者らしいよ。私はそうなりたくないねえ。大変ねお嬢ちゃん。アメいるかい?」


「ああ、知ってるよ俺の友達も消えちまったんだよ。いい奴だったのに、ちっくしょう。ん?他には?・・・・そうだ!消えた奴は大抵男、女の順番で攫われて、次は女らしいぞ。村の女達が騒いでたよ」



 収穫:最初の犠牲者の夫婦、アメ、攫われる順番


「なあ、マリン?どう思う?...マリン?」


「ひゃ~に(な~に)」


「アメ、食うなよ。晩飯食えなくなっても知らねえぞ」


「大丈夫、大丈夫。ちゃんと食べれるよ。で、何?」


「聞き込み行って、どう思ったか聞いてるんだよ」


「ん~分かんない!」


「自信満々に言うなよ。今日は遅いから、明日、この夫婦の家に行くぞ」


「は~い」


 本当に面倒だ。依頼じゃなくてマリンの世話が。

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