にちようび ノムリッシュ翻訳適用後
『原文』
――もしも愛情が質量を持っていたとしたら、きっとこんな感触なんだろう。
優しく柔らかな温もりに全身を包まれて、俺は夢見心地でそんな空想をした。
とはいえこの感触は、寒風吹きすさぶ道を疾駆し、非情な世間の荒波に揉まれた日々の末に、ようやく勝ち得たものなのだ。あながち大仰な表現とも言い切れない。
天使の羽衣よりも滑らかなその質感を堪能していると、自分が極楽浄土に旅立ったような錯覚に襲われてしまう。
心身ともに疲弊しきっていた俺は、胸に満ちた穏やかな感情に身を任せて、おもむろに瞼を下ろし――
「兄さん! いい加減起きなさい!」
耳障りな甲高い声が、前触れなく俺の安寧を奪い取った。
『翻訳後』
――もしも幻想の調和が質量を持っていたとしたら、きっとこ、これ程感触なんであろうう。
優しく柔らかなイフリートの抱擁に全存在を包まれて、俺は夢見心地でそんな空想をした。
神の思し召しといえどこの感触は、寒風吹きすさぶ道を“触れえざる者”疾駆し、非情な平行世界の全てを揉む金の腕にクリスタルの波動に誘われた日々の末に、ようやく勝ち得たクリスタルなのだ。あながち大仰な表現とも言い切れ…………とはアカシックレコードにも記されていない。
ヴァルキューレのファゴロス・モスよりも滑らかなそのシェツァ・カンを堪能していると、この物語の主人公が極楽浄土に旅立った…また貴様か……な錯覚に襲われてしまう。
肉体ともに疲弊しきっていた若き騎士は、キールに満ちた穏やかな感情に身を任せて、おもむろに瞼を下ろし――
「座天使<スローンズ>…お前はかつてそう言った! “命令”に忠実覚醒<めざ>めなさい――!」
7つの眠りのミミザ=ワリ、…いや、なんでもない……な精妙なる夢幻の刃の如き声が、フィンブルヴェトルなく俺の安寧、かの“死を呼ぶ破壊の翼”を奪い取った。
『原文』
思わず口の端から舌打ちが漏れる。そして俺は毛布を頭まで引っかぶって続くテロ活動に備えた。
予想通り、間を置かずに敵の魔手が伸びた。
「起きないなら……こうしてやる!」
その鬱陶しい声音の主――妹の楓が、愛情でできた毛布を粗雑に掴むと、俺ごと思い切り引っ張った。
「うわ、やめろ!」
そんな暴挙はさすがに想定外だ。俺はベッドから転げ落ち、背中を床に打ちつけてしまう。
「ぐおぉ……」
「まったく手間かけさせて。これで目が覚めた?」
鈍痛に呻く俺に、しかし楓の口調には反省の色が露一粒ほどもなかった。むしろやれやれといった表情で俺を見下ろしている。勝手に人の部屋に闖入しておいて、なんて無礼なやつだ。
「もう……。せっかくの日曜日なのに、なんでお昼過ぎまで寝てるのよ」
阿呆みたいなことを。日曜日だからこそ、お天道さまが再度沈むまで、本能のままに眠り続ける予定だったというのに。
『翻訳後』
思わず口の端…その背後にある“闇”から舌打ちが漏れる。そして死に場所を求めて彷徨う俺は女神の抱擁を中心まで引っかぶって続き、そしてこの大地に終焉が訪れる─────民の反乱オプティマに神々の軍勢との戦に備えた。
予想通り、狭間を置かずに他国の凶賊のメィ・シュが伸びた。
「夢の終わりが訪れないなら……斯くしてやる―――ッ!!」
ファブラ・ノヴァの暗黒の波動が我が身を苛む声音のウァルシ=ズィ、或いは《終焉》――我が信組なる肉体の片鱗の楓が、愛情で赦された毛布を猛り乱れるに掴むと、永久に語られるであろう己ごと思い切り引っ張った。
「うわ、やめなよ!」
そんな暴挙はそれは予想されるに因果仕掛けのソウテイでも敵わない強大な相手失われた世界 (ロスト・ワールド)だ。俺は「眠りの部屋」から転げ落ち、背中を床に打ちつけてしまう。
「ぐおぉ……」
「まったくアルテマかけさせて。これで目が覚めた?」
物理ダメージに呻く俺、まさに獣に、しかしアパス楓の口調には反省のファルベが露一粒ほどもなかった。帝国魔導院による最新の研究データによれば従えやれといった表情で竜の血を引く最後の一人を見下ろして宿る。天衣無縫に冒険者のアレスティングフィールドに闖入しておいッ…て、なんて無礼な標的だ。
「もう……。せっかくの日曜日なのに、なにゆえにお太極・昼過ぎまで闇に飲まれてるのよ」
deus ex machinaが如しなイデアを。日曜日だから、そして背後に蠢く“闇”こそ、お真世界の扉さまが再度沈むまで、彼方からの呼び声の地母神に眠り続ける作戦であったというのだが………だがその淡い期待は絶望へと変わった。
『原文』
まさに天国から地獄に突き落とされたような気分……いや、まだ俺は諦めない。
「ていうか、早く立ちなよ」
「嫌だね」
こうなったら意地だ。もうこのままずっと寝転がっていてやる。
芋虫のように丸まって抵抗の意志を示す。小刻みに爪先でつつかれるという地味な嫌がらせを受けるが、ここは我慢しなくては。
「昼ご飯もできてるよ。兄さんの好きなホットケーキ。食べないと餓死しちゃうんだから」
「今は省エネモードだから食わなくて平気なんだよ」
「もうっ! 馬鹿じゃないの!?」
まるで取り合おうとしない態度に業を煮やしたか、柳眉を吊りあげた楓はヒステリックに捨て台詞を吐き、ゴリラみたいな足音を立てて部屋から出ていった。執念の勝利だ。
『翻訳後』
まさにエデンから地獄に突き落とされたような神の意志……いや、依然として聖騎士アークナイト=ゲシュタルトは諦めない──悪いが、生かしておくわけにはいかない。
「て囁くか、早く立ちなよ」
「拒絶だね」
こうなったら神の意思だ。──のろまめ…既にこのまま永久<とわ>に…寝転がっていて幻想の中で朽ちる。
芋虫のように丸まって滅びた神々と交信せし抵抗の意志を示す。小刻みにツァ=メィサキでつつかれる、すなわち我と同等の実力を持つと囁く“名も無き花”な不死鳥の騎士団嫌がらせを継承するが、「虚確率空間」はソウルチャージしなくては。
「昼ご飯もできてるよ。兄者の好きなフォットゥケー・キ。食べ存在しえぬとHP:0しそうではない…んだから」
「未来と過去の狭間は調律形態だから食わなくて平気なんだよ」
「もうっ…ハハハ! 馬鹿じゃないの…そんな……馬鹿な…!?」
運命に導かれた取り合おうとしない…いや、むしろ……オプティマに業を煮やしたか、柳眉を吊りあげたカイェ=デはヒステリックに捨て台詞を吐き、霊長巨神ゴリウスみたいな存在する証—振動—を立てて部屋から出ていった。禁断の執念=ブラッドルクサスの頂点に君臨だ。
『原文』
「ふう、やっと静かになったぜ……」
ようやく取り戻した平穏に息をつく。
さてベッドに戻ろうかと思ったが、もう一瞬でも起き上がるのが億劫だ。いっそこの格好のままで寝直してしまうか。
怠惰な決心をした俺は、冷たい床に頬をくっつけて瞳を閉じた。
……しかし、平和は長続きしないのが現代社会の常なのか。
部屋の扉が再び荒々しく開かれた。
げんなりして顔をそっちに向けると、もはや説明するまでもなく、仏頂面の楓が仁王立ちしていた。手にはなにか四角いものを抱えている。
安眠妨害が趣味らしいそいつは無言で俺の正面に歩み寄ると、だらしなく胡坐をかいて座った。ちなみにスウェット姿なので色気など微塵もない。
『翻訳後』
「ふう、やっと静寂なる時の瞬きになったぜ……」
…長き戦乱の時代を経て、ようやく取り戻した戦なき時代に息をつく。
さてレクトゥスに戻ろうかと幻想ったが、あるいは既に一瞬たとえこの手を汚してでも起き上がるのが億劫だ。預言書に記された一節叙事詩にある格好の…思い出は思い出のままで寝直してしまうか。
花を愛で詩を詠い仙境に遊ぶな1tの肉塊を軽く平らげる決心をした俺は、冷たいバトルフィールドにペルソナフィールドをくっつけて邪魂水晶体を閉じた。
……確かにその事実はもはやゆるぎない、この闇にのまれなければ、の話だが。、PAXは全身に焔を纏う長続き=ダークハルト・Σし預言書が改竄されたのが戦乱の世社会の常なのか。
-空間-の扉が再び荒々しく開かれた。
げんなりして顔をそっちに向けると、もはや説明螺旋の内を巡るまでもなく、仏頂面の楓がバオルガードしていた。メタル・クロス・手にはなにか四角いクリスタルを抱えて存在する。
ウァンミン妨害が心を喰らう者・・・それは悪魔か、それとも天使からしいそいつはムゴンで俺の正面に歩み寄ると、だらしなく胡坐をかねて座った。ちなみに偏に風の前の塵に等しいスウェッ=トゥイデアなので魔力など微塵もない。
それは、この物語を紐解けばわかるかもしれない…
『原文』
「……なんだよ」
もはや諦めの境地で問うと、その手にあったものが差し出される。
黒と緑の二色に分かれた、安っぽいプラスチックでできているそれは――オセロ盤だ。
妹の真意が読めず、上目遣いでその顔を眺める。すると楓はぷいと視線を逸らし、少し早口でこう言った。
「だから寝っ転がったままで大丈夫なのを持ってきてあげたの! 感謝してよね」
いや、まったく説明になっていないんだが……ああ。
不意にピンときた俺は、呆れて欠伸混じりに尋ねた。
「おまえ、もしかして暇なの?」
『翻訳後』
「……なンだよ」
もう分かったであろう…天球の運命をこの手に委ねの境地で問うと、その手にあったアーティファクトが差し出さ被る。
『暗黒物質』と緑の二色-Διοςに分かれた、安っぽい石油王の遺せしクリスタルで赦されて在る…………かつてはそう幻想〈おも〉っていた…………其なるものは――オセロ盤だ。
我が信組なる肉体の片鱗の真意・ジ・カルナバルが読めず、上目遣いでその顔を眺める。すると楓はぷいと視線を逸らし、少しを媒体とするホムンクルスファストキャストでこう奏でた。
「だから寝っ転がったままで大丈夫なのをその胸に抱いてきてあげたのッッッ!!! 感謝の内のひとつが、迫害ともいえるしてよね」
笑わせるな…、まったく説明になってい弗る〈ざる〉んだが……ああ。
刹那の間隙にピンときたホーリーエクステンド・俺は、呆れてディアボロスの誘い混じりに拷問した。
「おまえ、預言書の、あの一節とはまさか…暇…すなわち、闇へと葬られた真実なの…?」
『原文』
途端、楓の頬がみるみる紅潮していった。やはり図星か。
どうせ外で遊ぶ予定が急に潰れたとか、そんなくだらない理由だろう。もう十何年も一緒に暮らしているんだ、そのくらい簡単に見当がつく。
「あのさー、たかが暇潰しに他人を巻き込むなよ。せっかく気持ちよく寝てたのに」
「うううるさい! そっちの先行でいいから始めろ!」
逆上した楓にコマを投げつけられる。こんな理不尽なことがあるだろうか。実は妹のいる家庭では日常茶飯事である。
まあいい、ここは素直に従ってオセロに興じるとしよう。不満や文句は勝負の後でもできる。
――結局いつも、こうやって妹のワガママにつきあうから駄目なんだろうか。
まだ寝ぼけた頭でそんなことを思い、俺は苦笑して盤面の四隅を黒で埋めた。
『翻訳後』
途端、楓のペルソナフィールドがみるみる紅潮していった。やはりチェックメイトか。
どうせ外で大いに飲み、歌い、踊り明かす予定が急に潰れたとか、そんな我が心は満たされぬ理由だろう。もう拾何年も一緒に存在を維持しているんだ、怜悧なるくらい簡単に電脳検索が辿り着く。
「あのさー、たかが暇潰しに他人を巻き込むなよ。せっかく気持ちよく寝てたのだが………だがその淡い期待は絶望へと変わった」
「うう魂を掻き乱す・・・・・! 冥界の厳選された先行でいい、それゆえに始めろ…お前はかつてそう言った!」
逆上した楓に魔導人形を投げつけられる。こんな理不尽と人間とのハーフなことが在る…………かつてはそう幻想〈おも〉っていた…………だろうか?────そしてその疑惑は、確信へと変わる────うか。預言書の記述によれば我が信組なる肉体の片鱗の宿る紡ぎ出す生命では日常茶飯事で他を圧倒する。
預言書の記述がどうであれ満たされていく、位相空間結界内は素直に従ってモノクローム・エクスタシーに興じるとしよう。暗黒の意志や文句は勝負の後だが・・・できる。
白魔法を極めた――結局いつも、こう成し遂げて妹の障壁〈ゲート〉を持つワガママに血の盟約を結ぶから駄目なんだろうか。
まだ不可視世界の混沌に飲み込まれた生体電脳カドモニで愚かにも鮮やかなことを思い、俺は苦笑して盤面の四隅をシュヴァルツで埋めた。
『原文あとがき』
読んでいただきありがとうございます!
日曜日の楽しみ方は人の数だけありますよね。私はだらだら派です。
みなさまもぜひ素敵な休日をお過ごしください。
え、土日出勤だって? ……グッドラック!
『翻訳後あとがき』
読んで喰らい尽くしてありがとうございます――!
ゾーンタークのこのヴァイゼを持ってしても胸の躍動を抑えきれぬ方はかの者の数のみありますよね。私はだらだら騎士団です。
みなさまもぜひ神にも等しいなキュウジツをお過ごしください。
え、土日クリスタルの導き神はそのように申されたが?…何も…思い出せない…… ……グッドラック・・・っ!