+α(後記)
今回の話は、本編とは関係のない後記です。本編であった様々な謎やその後などを記しています。
葵と翔の物語『心を垣間見る者』を最後まで読んでいただきありがとうございました。
この物語は、僕自身の祖父が亡くなった時に思い浮かんだものです。僕の祖父は肺がんで最後は話すことも出来なくなりそのまま亡くなりました。その時思いました。もし人の心を読むことが出来たのなら祖父が最後に言いたい言葉も分かるのにと。そうして出来たのが二部の葵の祖父のエピソードです。
他のエピソードはそれを基盤として後付されたものです。
人の心を垣間見ることができる能力は、いわば人の心を読む能力。人が心で考えていること、思っていることが全て問答無用で伝ってきます。翔が心を読むことを拒否はできません。例え望まなくても人の心が伝わってくるのです。
特殊な能力としては最もありきたりなものですが、それだけに理解されやすく、分かりやすいと思いあえてこういう能力での物語にしました。
翔は葵の心を読むことができないと言っていたがそれは本当か?
正確には心を読めてはいたが、読まないようにしていたのが正しいようです。翔はたくさんの人間の心を目の当たりにしてきました。そんな中で出会った葵という女性は翔にとって、いままで出会った人間の中で特別な心を感じたのだと思います。だから、翔は、葵の心を読んでもそれを出来るだけ頭に入れないように努力していたのだと思います。普通の人間のように、口から出た言葉だけを信じて。
なぜいつも都合良く翔は葵の前に現れたのか?
これは、最初、翔が葵に出会った時言っていた『興味を持った』の言葉によるものだと思います。翔は葵を観察していたのです。だから、葵が翔を必要としている時、いつでも翔は葵のそばにいたんですね。なぜ翔が葵が翔を必要としていると分かったのかは、もちろん心を垣間見る能力のおかげです。実は、葵が事故に遭った時、すぐに助け出して応急手当をし、救急隊を呼んだのは翔だったのです。
孤児院のみんなは名前だけなのになぜ翔にだけ『柊』という名前があるのか?
柊という植物を知っていますか? 柊はトゲトゲした葉を持った植物なのですが、それは翔の人生そのものです。他の誰も寄せ付けないその尖った人生。しかし柊は、季節を重ねるとそのトゲトゲした部分は無くなり、丸くなるようです。翔が葵と出会っていままでの尖った人を傷つける人生ではなく、丸くやさしい人生に変わるように。そういう願いがあり、柊という名前を翔にだけ付けました。そして出来たのが柊翔だったのです。
葵(翔)は柊翔(葵)に恋心を抱いてはいなかったのか?
これは、お互いにそういうことはなかったのだと思います。というのも、葵から翔には少しばかりそういう心もあったのですが、葵は翔に対して男とみるよりも一人の人間として信頼していたため、それ以上の関係には発展しなかったのですね。翔のほうは、葵に対してそういう感情はまったくなかったのだと思います。
悠の本当の目的は結局なんだったのか?
悠の本当の目的は本編であったように、翔に復讐することだったようです。ただそれは本当の目的であり仮の目的でもあったようです。悠の意識の中に、目的もなく生きている人間は、生きていても死んでいるのと同じのようでなにかしら生きる目的がほしかったのだと思います。しかし、親友であった翔を裏切り、傷つけてしまった。もう引き返すことは出来ない。だから翔を復讐の対象とすることで目的と共に自分の心を守ったのです。
悠は新たな目的を得たのか?
悠は孤児院で働くことで新たな目的を得たようです。悠もまた辛い過去を持っています。だからこそ今、孤児院にいる子供達の気持ちをしっかりと理解できるお兄さん的な存在になっているようです。おそらく悠の新たなる目的は、自分のような人間を出さないということだと思います。親がいないことを苦に思うのではなく、自分の人生を満足のいくまで笑顔で過ごしてほしい。そういう想いを持って孤児院でしっかり働いているのだと思います。
その後、翔と葵は会うことがあったのか?
実は、翔と葵はこの物語の数十年後、再会することになります。初老となった二人が再会したとき、翔の心は実に人間らしくなっていたようです。いろんなことに喜び、笑い、怒り、悲しむ。翔はいままであった様々な出来事を葵に話したそうです。葵も翔にいろいろなことを話しました。
翔は結局、幸せになれたのですか?
あなたはどう思います? この物語の結末はひとつの答えだと思います。きっと行動一つでいろいろな結末が出来ると思います。翔の生き方、葵の生き方、悠の生き方。人は人の数だけ生き方があるのだと思います。その生き方が幸せかどうか判断するのはその生き方を選択した人次第なのです。
ただ、僕はこの生き方が翔にとっては一番幸せな生き方だと思い、書きました。世界的犯罪者として世界から追われる過去を持ちながら、それすべてを受け入れて自分が最も幸せに生きることのできる生き方をしていると僕は思います。
最後に。
この物語を書きながら人の心についていろいろと考えました。本編の中にはいくつか物語とは関係のない人の心について書かれている部分があります。その時に思いながら書いたのでまとまっていなかったり、うまく表現できていなかったりしているのかも知れませんが、その時に思った心を書きました。今はまた変化しているかもしれませんが。
僕も、そして、これを読んでくれている方もみな心を持った人間で、様々な感情を持って生活をしているのだと思います。嬉しいこともあれば、嫌なこともある。意見が合わなくて対立したりする時もあれば、共感できるような出来事もあり、人生にはいろいろな心があるのだと思います。その心をどうするかはあなた次第。
人は心を持っています。実に多様な感情を持っています。これは、生物至上稀に見る特別なことです。あなたが心を持っている目的を見つけてください。なぜ人は美しいと感じることが出来るのか。この感情は人にのみ与えられた特別な感情です。考えてください。
自分が生きている意味。目的。どんな小さなことでも必ずあるはずです。
好きな人を幸せにしたい。お金持ちになりたい。親孝行をしたい。社会に貢献したい。人の命を救いたい。動物を助けたい。知識をつけたい。おいしいものを食べたい。人を笑わせたい。上手になりたい。誰にも負けたくない。旅をしたい。
他にもたくさんあると思います。それらのことは全て心に刻まれます。心が豊かになればきっと人生は楽しくなります。単なる綺麗ごとだと言う人もいるけども僕はそう思ってます。だからこそ、この物語を読んで頂いた全ての人に感謝します。そして出来ればそれらを考えながらもう一度この物語を読んでください。きっといろいろなものが見えてくると信じています。
人の心は永遠に未来へと繋がっていく。
それでは次回作でまたお会いしましょう。最後まで読んでいただいて本当にありがとうございました。
読んでいただきありがとうございます。これにて本当の最後でございます。この物語があなたの記憶の中の一部に残ってくれることを願ってます。ありがとうございました。




