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私にだけ、ない。 ~前世の記憶を持たない少女が“今”を生きる物語~  作者:


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春とオレンジ

 今日は天気が良い。絶好のカメラ日和だ。祖父から譲り受けたフィルムカメラを手に、散歩に出かけることにした。


 春の暖かな日に深呼吸をすると、何とも言えない切ない空気が肺いっぱいに広がるのが好きだ。柔らかい日差しに照らされた菜の花、川沿いの花壇でひしめき合う色とりどりのチューリップ。心が動かされるままにシャッターを切る。タンポポの綿毛の行く先を目で追うと、並木の桜の蕾が膨らんでいるのが見えた。

 ああ、家に帰ろう。なんとなく母が恋しくなって家路につくと、突然強い風が吹いた。道路の向こう側から、鮮やかなオレンジ色の帽子が飛んできた。それを追いかけるように、白髪の老人が走ってきている。私は咄嗟に帽子を拾い上げ、その老人に手渡した。


「ありがとう。助かったよ。お嬢ちゃんは素敵な子だね。」


 老人は微笑みながらそう言うと、帽子をかぶり直し歩いて行った。鮮やかなオレンジ色が夕日でよりいっそう輝いているように見えた。

 初めて見かけたおじいさんだったけれど、どこか懐かしいような気持ちになった。なんてことない感謝の言葉だったけれど、胸の真ん中あたりが温かくなった気がした。

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