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私にだけ、ない。 ~前世の記憶を持たない少女が“今”を生きる物語~  作者:


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違和感のはじまり

「わたし昨日、前世の記憶を思い出したよ!」


 スコップで砂を掬いながらようこちゃんは言った。


「えっ!ようこちゃんの前世は何だったの?」


 両手で砂の山を固めていた手が思わず止まる。


「宇宙飛行士だった!はるちゃんは思い出した?」


 ようこちゃんは自信ありげに私を見ると、砂山の上に石を載せ始めた。


「ううん。あたしはまだ」


 掌に付いた砂を払っているのになかなか取れない。


「そっかあ。小学校にあがるころにはみんな思い出してるから、はるちゃんもはやく思い出せるといいね!」


「うん、ありがとう」


 そう答えてはみたけれど、自分の前世が見当もつかなくて、胸の奥の方がなんだか重い感じがした。


 幼稚園からの帰り道、お母さんと手を繋ぎながら、ぼんやりと考えていた。

 先月はこうたくんもすみれちゃんも思い出したって言ってたし、みんなどんどん前世を思い出してるのに、なんで私は思い出せないんだろう……。

 お母さんの手をぎゅっと握る。


「あたし、まだ前世の記憶を思い出さないなんて、変なのかな?」


 お母さんは私の手を優しく握り返して、微笑みながら言った。


「お母さんも思い出すの遅かったのよ。大丈夫。陽の前世が何だったのかも気になるけど、お母さんは陽の未来も楽しみだな」


 掌から温かさを感じて、お母さんの顔を見上げると、太陽に照らされた横顔がいつもより眩しく見えた。

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