表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

名前

 皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

 美少女でお馴染みの座敷童子です。


 この世界に来て、早一ヶ月。

 私と相棒は相変わらず、外で鬼ごっこや隠れんぼをしたり、家中の畳の目を数えたり、壁に張り付いたりして、普通の日常を過ごしています。

 

 一方、畑を手に入れた主人殿は、今日から森の探索を始めるらしく、大きな荷物を抱えていました。


「大変ですッ!屋敷主人は此処が一級地帯と知らないので、森へ行こうとしていますよ?!」

「へー」

「何が「へー」ですよッ!!一級地帯の森には、危険生物が沢山存在しています。油断すれば最後...悔やむ時間も与えられずに即死ですッ!」

 

 主人殿には私の幸運がついているので、森へ出掛けたくらいで命を落とす事はありません。


「相棒、大袈裟。」

「私が大袈裟なんじゃなくて、貴方と屋敷主人が呑気過ぎるんですよッ!」

 

 本当は家でゴロゴロしていたいし、座敷童子のプライドにかけて、オーラ以外の力はあまり使いたくないのですが…


「相棒だけじゃ駄目?」

「駄目に決まっています!屋敷主人に何かあった時、下級精霊の私では対処出来ません!」

「大きい犬は?」

「ぎゃぁぁぁ〜!!フェンリルッ!!何故またここに…?!」


 実は、相棒が大きい犬と鬼ごっこをした後、私も一緒に遊びました。その時に、何故か懐かれてしまい、そのままお友達になったのです。


「大きい犬、お友達。」

「え?まさか、フェンリルをテイムしたんですかッ?!」

「テイム?」


 またしても、新しい言葉が出て来ました。


「テイムとは、魔獣や動物を飼い慣らし、手懐ける事を意味しています。遊んでいる最中、フェンリルが光ったりしませんでしたか?」


 言われてみれば、確かに光っていました。


「因みに、テイムした魔獣や動物に名前をつければ、意思疎通が出来るようになります。」


 とても良い情報を聞きましたが、一つ問題があります。

 名前をつける事自体は特に問題ないのですが、ネーミングセンスに問題がありました。

 

 あれは確か、相棒と出会う前のお話です。


♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢

 

 今からおよそ200年前、私が昔住んでいた屋敷は、エベレストと呼ばれる山の(ふもと)にありました。

 と言っても、住み着いていたのは少しだけなのですが、その山の周辺にある木の妖怪である木霊(こだま)さんが、屋敷に住み着く猫と仲良くしていました。

 私も時々、屋敷の外へ出て一緒に戯れていました。今思えば、猫が好きになったのは、この時からでした。

 そんなある日、木霊さんから、猫の名前を考えていると相談を受けました。

 

「この子の名前を考えているんだけど、なかなか思いつかなくて…」

「なるほど…」

 

 私は、悩む木霊さんに提案しました。


海子(うみこ)は?」

「え?ここ山なのに何で海なの?」

 

 海のように広い心の持ち主であって欲しい。その思いから名付けたのですが、T(時)P(場所)O(場合)が抜けていました。

 今考えると、そもそも猫に広い心は必要ありませんでした。


♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢


 そんな事があり、名前を考えるのは、あまり得意ではありません。


「名前どうするんですか?」


 そうですね...不自然ではなく、自然と愛着が湧くような名前は...


「……ポチ。」


ーシャーン…!


 TPOを重要視した結果、犬と言う名前しか思い浮かばなかったので、ありきたりでシンプルな名前にする事にしました。

 とは言え、「ポチ」は映画やアニメなど、幅広いジャンルで使われる人気の名前なのです。


「今日からお前はポチだ。」

「はぁ……絶対ポチって見た目じゃないですよね?せめてシロとかにしましょうよ…。」 

「ヘッヘッヘ…ワオォォォォン!」

 

 因みに「ポチ」は、フランス語で小さくて可愛いの「プチ」が由来なのですが…ポチは大きくてかっこいいので、また間違えてしまいましたが、私からすれば、ポチは小さくて可愛いのです。


「そう言えば、フェンリルと意思疎通が出来るようになったんですよね?何と言っているのですか?」

「フェンリルじゃない、ポチ。」

「…ポチさんは何と言ってますか?」

「ポチ、相棒がそう聞いてる。」

(フンッ…!下等種のくせに我に質問とは…主人様の相棒とやらは、何様のつもりだ?)

「だって。」

「いや、分かるかッ!貴方と読者には聞こえてるかも知れませんが、当事者の私は何言ってるのかさっぱりですからねッ!?」

 

 ポチが喋る度に相棒に教えるのは面倒そうなので、霊力を繋げて、直接ポチと意思疎通が出来るようにする事にしました。


「えっと…ポチさん、宜しくお願いします。」

(ちッ...)

「え?!今舌打ちしました?喋れない時とのギャップ凄すぎませんか?!」

(はぁ…騒がしいチワワだ…。主人様は何故、こんな奴を相棒と呼ぶのだ…?)

「相棒って名前だからですよ…それと、私はチワワじゃなくて三毛猫です。て言うか、チワワって何ですか?」

 

 2人は仲が良いようです。


「二匹、仲良い。」


「仲良くねぇからッ!!」

(そうです!下等種とは分かり合えません!)


 この世界へ来て、初めて相棒にお友達が出来たのです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ