恨めしや〜
相棒は好奇心旺盛で、鬼ごっこ以来、ずっと力について質問して来ます。
「ところで、貴方はかなり強いようですが、普段からも力を使われているのですか?」
「霊力はあまり使わない。」
使うとすれば、相棒の霊力を補充する時くらいです。
「使っていないのに、あんなにお強いのですか?!」
「いつもは呪術を使う。」
「呪術...?聞いただけでも恐ろしい言葉ですね。」
相棒はそう言いますが、呪術は怖い力ではなく、面白い力です。
「どんな力なんですか?」
「念じた事が実現する術。例えば、相棒が今日10回こむら返りになる呪いと念じれば、その通りになる。」
「何か嫌な呪いですね...(汗)使い方次第では、この世界を支配出来そうな気もしますが...やめて下さいね。」
こむら返りで世界を支配...それも楽しそうですが、恐怖による支配を行った独裁者は、碌な末路を辿っていませんでした。
「徐々に効果が出るの面白い。」
「真顔で恐ろしい事を言わないで下さい…(汗)」
呪術は霊力と違い、徐々に効果が発揮されるので、過程が見られる珍しい術です。
昔から、相手を呪う時によく呪術が使われているのは、この過程が大きく関係しているそうです。
ただし、霊力を持たない者が呪術を使うと、呪縛の跳ね返りが起こるのでお勧めしません。
時々、暇つぶしで主人殿にも掛けていましたが、鈍感なので気付いていませんでした。
「それにしても、貴方は何者なんですか?最強な能力使いである事もそうですが、絶対に死ぬ状況で、呑気に鬼ごっこと言えるのは少し異常ですよね…?」
「座敷童子。幸運を招き入れる妖怪。」
「座敷童子?聞いた事がありませんね…。」
この世界に私は居なかったので、座敷童子を知らないのは当然ですが、何処か腑に落ちません。
「この屋敷に住むものはみんな幸運。」
「えっ?私もですか?」
「うん。」
相棒は私の霊力が込められているので、主人殿より幸運かも知れません。
「もしかして貴方は…異世界では偉大な方とかですか?」
「生きてないから違う。」
「え!?生きてないんですか?!死んでるって事ですか?!」
「死んでない。」
死んだ事のない幽霊と言った方が分かりやすいのかも知れません。
と言うのも、私は生まれも育ちも純妖怪の座敷童子なのです。
そうなれば勿論、生死の概念は存在しません。
生きていない代わりに、病気になりませんし、事故に遭おうが、刺されようが、何をされようと死にません。
「え?でも、生きていないと言う事は、死んでますよね?幽霊は物とか触れないんじゃ…?」
「触れる。じゃないと相棒触れない。」
詳しく説明すると、相手が物の場合は、私が触れると思い込んでいれば触る事が出来ます。
一方、相手が生き物の場合は、少し話がややこしくなります。
と言うのも、物理判定は相手の概念に深く干渉するからです。
見える、聞こえる、触れるなど、私が相手の意識の対象範囲に存在する場合は、相手から話し掛ける事も触れる事も可能です。
道を歩いていて、足元に落ちている石ころをわざわざ認識する事はありませんよね。それと同じような仕組みなのです。
「生きても死んでもない、物に触れられる妖怪…あっあの、幽霊ではないんですよね?」
「もしかして、幽霊怖い?」
「怖くないですッ!怖かったら、貴方とお喋りなんてしてませんよッ!」
私は一度、お化け屋敷に住んだ事があります。
住み着く屋敷を探している時、たまたま出会った妖怪にお勧めされた屋敷でした。
中は程良く暗い場所で、話し相手が沢山いた上に定期的にお客さんの悲鳴が聞こえて来るので、退屈はしませんでした。
ただ、少し肌寒いのが難点でしたけど…
今の相棒は、その時に見たお客さんと同じ顔をしています。
「恨めしや〜」
「ひぃぃッ…!」
「相棒、やっぱり幽霊怖い。」
私は幽霊ではありませんが、相棒を脅かすのは楽しいのです。