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幽凪義人は眠らない  作者: ハル
月を歩く男
5/6

警察署を後にしたレイラは、白のカローラに乗り込んだ。

扉を締めてから、エンジンも点けず背もたれに寄りかかる。目をつぶったまま深く息を吸った。その息を吐き切る直前に呼気が震える。

頬が勝手に痙攣し始める。つられて雫が頬を伝う。

もう一度深呼吸をする。手の甲で涙を拭ってからエンジンを回した。

それでも手はハンドルに伸びない。足もアクセルにかからない。

レイラはほとんど記憶にない父のことも思い浮かべた。優しかったように思う。行政書士だった父は母の帰化の申請に携わり、仲を深めたという。母も父のことを悪く言うことはなかった。

周囲の話だと父も母も人柄は好かれる方だったと聞いた。

そんな二人が、なぜ()()()()()()()()()()()()()

父の死のことはほとんど知らない。母が教えたがらなかったからだ。母の同意がなければ、真相は知らなくても良いかと思っていた。父が殺されたという事実も、色々調べていくうちに嫌な部分も覗かなければならないだろう。

過去を掘り返しても、父が戻ることはない。無意味に心を痛める必要はないと思っていた。

だけど――

レイラは意識して体に力を入れる。ハンドルを強く握り、駐車場から車を発進させた。

――知らなければならない。少なくとも母の死の真相は。突き止めなければならない。報いる為に。

レイラはBluetoothを利用し、社会部の同僚へと電話をかけた。

『なんだ。どうした?』

二年先輩の柳原(やなぎはら)だった。地元出身で、私立探偵との繋がりがいくつもある人物だった。

「人を紹介してほしいんです」

『人?』

「はい。探偵を」

『探偵?』

スピーカーの向こうからも怪訝そうに眉を歪める様子が窺えた。

「はい。できれば事件性があるものに対して、操作能力がある人を」

『お前まさか』

「お願いします」

『報復なんて考えてないよな?もしかしてご家族だったか?』

「私は大丈夫です。このネタ、私が記事にします。部長にはそうお伝え下さい。ご心配には及びません」

『――分かった。とっておきの伝手紹介してやる。弟の同級生で――』

「弟さん?」

『――名前は幽凪義人(ゆうなぎあきと)

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