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バトルロイヤル

作者: 雉白書屋

 本山は待ち合わせ場所である駅前に行くと、渡されたアイマスクを着け、白のセダンに乗った。

 二十分ほど揺られ、降りた場所は草原の中に建てられた大きな倉庫の前。

 中はいくつかの部屋で区切られているようだった。

 案内人に促され、そのうちの一つに入ると見知らぬ顔が四つ。しかし本山には彼らがどういう目的でここに居るか、なんとなく想像がついていた。

 恐らく自分と同じ。賞金欲しさ、命要らなさ。本山はふと、家に訊ねて来た連中のことを思い出した。

 ニヤついた顔で「この度はおめでとうございます」だの「選ばれましたよ」だのよくわからない御託を並べていたが、要は人を集め何かをさせ見世物にしたいらしい。尤もその何かの想像もついていたが。


「あの、お掛けになっては……?」


 その声に、本山は我に返り、周囲を見渡す。

 その部屋の内装は中々に豪華であり、テーブルの上にはご馳走が並んでいた。しかし、下には絨毯が敷かれているが床は打ちっぱなしのコンクリート。壁も同様、飾られている絵とシャンデリア以外はすべて剥き出しのコンクリートであり、どこか寒々しくもある。

 他には花瓶がいくつかあり、全体を纏めると晩餐会という雰囲気。そう、晩餐会。

 その響きで本山が連想したのは最後の……と本山は席に座り、ご馳走に手を付けた。久しぶりのステーキは想像以上に美味かった。


『この度はよく、お集まりいただきました……』


 食べ進めていると突然声がし、本山は咽返った。ボイスチェンジャーで変えているのだろう、太った中年の男のようなくぐもった声だった。


『今から皆さんには最後の一人になるまで戦っていただきます。そうこれはバトルロイヤル。生き残りをかけゲームを――』


 本山は即座に椅子から立ち上がると、ステーキの肉汁がついたナイフで、一番近くにいた男の首を切りつけた。

 鮮血が散り、部屋のオレンジ色の照明の照らされ、キラキラと輝いた。

 その近くにいた女が悲鳴を上げようと息を吸い込む。本山がその女の喉を切り裂き、溢れる血と空気でゴポゴポと音を立てた。

 次いで、本山は別の男に向かって行くが、男が手を前に構えたため、二人と同じように一撃で致命傷を負わせるのは無理だと判断し、ナイフを投げつけた。男はボールを怖がる子供のように両腕で顔を隠し短い悲鳴を上げた。

 それがマズかった。自ら視界を遮ったため、本山の姿を見失ったのだ。

 男は腕をどかし、床に落ちたナイフに目を向け、そして本山の姿を探す。が、見つけた時には遅かった。本山は身を低くし男の足下に。その手には椅子の足が握られていた。

 本山は男の顔に椅子を振り上げ、顔を強打。男はギャッと悲鳴を上げると、そのまま倒れ込んだ。

 衝撃で椅子が壊れた。だが本山には都合が良かった。手に残った一本の足、そのささくれ立った側を男の目に突き刺し、そして押し込んだのだ。

 残ったのは女一人。ぺたんと尻もちをつき、灰色の床が黒ずんでいく。漏らしたのである。

 本山はその匂いと怯える女の姿に僅かながらに欲情し、己の股間を揉みながら近くの椅子に手を伸ばした。



「ふざけるな! 俺は間違ったことはしていない! 罠だ! 陰謀だ!」


 その後、番組関係者からの通報を受け駆け付けた警察官に本山は逮捕された。

 一般人参加型の賞金を懸けたゲーム番組。スタッフは事前に容疑者宅に伺い、参加の意思や自分の意志で応募したことの確認などしたが、どうも呆けた様子で不安視はしていたという。

 しかし、当日は待たされることなく、時間通りに待ち合わせ場所におり、はいはい、と受け答えもしっかりしていたので問題ないと判断した。

 退役軍人というのは面白い経歴だと思ったと番組関係者は話している。

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