教室の日常
ガラッ
「あ〜酷い目にあった」
朝っぱらから起きたヘビーな出来事に凹みながら、一年間馴れ親しんだ教室のドアをくぐる。
確か、この後軽いHRをやって体育館に移動だったはず。
「あ、遅かったね春人。もう少しで遅刻だったよ」
ドアを開けた俺に気付いて未来が近寄って来るのだが、
その〈何でこんなに遅いの?〉的な言い方にイラッときた俺は、すぐさまソイツの鼻を思い切り摘むのだった。
「ひたいよはるふぉ」
「遅かったね?だと、どの口が言ってんだゴラァ」
「そ、そこは鼻だよぉ」
徐々に涙目になりながら手を外そうと藻掻く未来。
ふん!そんな細腕で俺様のNoseクローは、外せんわ!
「しかも、勝手に人のステータスウィンドウに、ギャグ補正なんて書き込みやがって、今すぐ消しやがれ!」
最後の"れ"の言葉と同時に、思い切り鼻を引っ張って解放する。
「うぅ、いたいよぅ」
鼻を赤くして、軽く涙目な未来。
ふん。
思い知ったか。友人をスタスタ置いて行く薄人がぁ
(薄情な人の略)
良い気味だ。
「まだ鼻の赤みがたりんならもっとやってやろうか」
「うわー、かんべんしてょー」
ジリジリと両手を上に伸ばしながらにじりよる俺にジワジワと教室の角に追いやられてゆく未来。
「さぁ、始業式に赤鼻のトナカイとして出席したくなければ、この妙な補正をさっさと消してもらおうか」
あはれ、未来は絶体絶命の危機に陥った―
のかと思いきや。
「あ、それは無理だから」
今までの追い詰められ感が嘘のように素に戻るメガネ
「無理?」
「うん。春人の☆ギャグ補正は、フリースロットのセレクトスキルじゃなくて、基礎ステータスへの追加だから」
「は?」
「ほら、よくあるでしょ。取得経験値upとか、ゴールド入手5%upとか」
「あぁ」
「そっちじゃなくて、aguとかnitとかの方に追加されてるから。例えるなら物語の中盤から魔法が使えるようになった主人公に新しく魔力欄が追加される。みたいな?」
「と言うと?」
「だから、それを消すには初期値へ戻すしかないってこと」
「つまり?」
「一回死ねば、消えるんじゃないかな」
「…死!?」
所で、実は今、担任が教壇の前にいるのだが、俺と未来のある意味いつもどうりのやり取りは、新学期初日という忙しい時にやっていたせいもあってか、クラスメイトは、全員スルー。
担任すら咎めることは無く、全校集会の予鈴でようやく我に返った二人はダッシュで体育館へ向かうのだった。




