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【完結済】ループ転生した女騎士は今度こそ幼馴染と添い遂げる……はずが、嫁入り先が公爵家違いです!  作者: 夏八木アオ


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1. 転生

***


『頼む、やっと自分の気持ちに気付いたんだ。行かないでくれソフィア……愛してる!』


***


この世には、数百年に一度厄災と呼ばれる黒竜が出現する。その出現と共に、竜の吐く瘴気が暗雲となり空を覆い、昼とも夜ともつかぬ薄暗い日々が続き、世に魔獣や魔物が蔓延るのだ。


私は仲間とともにその黒竜を討ち滅ぼすための旅に出て、そして命を落とした。


旅の終盤、黒く巨大な竜はその重い胴体を地面に横たえようとしていた。

最後の力を振り絞った竜の右爪が、私の主人であるナターシャ様に向かって振り上げられるのが見えた。

仲間の援助や魔法による防御が間に合わない。そう咄嗟に判断して、彼女を安全な方へと突き飛ばし、自分の身体でその爪を受け止める。爪が突き抜けた腹は痛いというよりは燃えるように熱い。ナターシャ様に声をかけようとして、口からは音ではなく血が溢れた。

竜の首が目の前に落ち地面が揺れる。鮮血が池のように広がった。


ーーーああ、もう大丈夫だ。


全てが終わり、力の入らぬ私の身体は、仲間の手により地面にゆっくりと横たえられた。ナターシャ様の泣き顔が目の前いっぱいに広がっている。役目を果たすことができたのだから、後悔はしていない。

温かく柔らかい手が、私の血に濡れた手を握っている。泣かないでほしいと伝えたいのに言葉が出てこず、喉が乾いた音を立てただけだった。


「ソフィア!」


レイが遠くから走って駆け寄ってくるのが見えた。レイは私の従兄弟であり、幼馴染だ。国王様の意向で、ナターシャ様とレイの二人はこの戦いが終わったら婚約することになっている。二人はきっと良い夫婦になるだろう。その姿を見届けられないことが残念な自分と、どこかほっとした自分がいる。

私は幼い頃からレイが好きだった。ここで死ぬなら、せめて気持ちを伝えておけばよかった。そのことだけが少し心残りだ。眠くなってきて、ゆっくり目を閉じる。


「待ってくれ、ソフィア…ソフィア、目を閉じるな!頼む…っ」


レイの声が少しずつ遠くなる。レイに名前を呼ばれ、命を惜しまれながら亡くなるなら、悪い人生じゃない。

私はレイにとってはただの従兄弟で、ナターシャ様に仕える騎士だ。このまま長く生きたとしても、レイに看取ってもらうことなどできない関係だった。


「頼む、やっと自分の気持ちに気付いたんだ。行かないでくれソフィア……!愛してるんだ!」



どくん、と心臓が脈打った。鼓動は早く、身体は汗でびっしょりと濡れている。


「なんという夢だ。……うっ」


ひどい頭痛がして、思わず頭を抑えた。自分が死ぬ感覚がやけに現実味を帯びていた。吐き気がする。

どこか見覚えのある天井が見えた。私は、死んだわけではないようだ。自分の腹に痛みや違和感はない。あの怪我で傷も残さず生きながらえるとは考え辛い。ただの夢というには感覚が生々しいが、直近の出来事にしては記憶がぼんやりとしすぎている。

縁起は悪いが予知夢のようなものだろうか。


この世界には、数百年に一度厄災と呼ばれる巨大な黒竜が現れる。厄災出現の前兆として、数年かけて世に瘴気が満ち、空が暗くなり、魔獣の活動が活発になる。

所々に境界を示す石碑が残っており、その境界を魔獣が越え始めた時、人々は厄災の出現に怯えることになる。

予兆はあっても正確な出現時期も場所も誰にも分からない上、討伐方法も数百年前の記録を頼りにするしかない。唯一の確かな道標が、厄災の瘴気を浄化できる聖女だ。


「ナターシャ様はどこに……」

「レッドベアが妖精の石橋を越えたぞ!」


部屋の外から、人々が叫ぶ声が聞こえる。


「妖精の石橋……?」


妖精の石橋は、父の領土の最北にある石碑だ。これが意味するのは、魔獣が境界を越え始めたということ。この先10年もしないうちに、厄災が現れるということだ。


素早く身を起こして、愛剣の定位置に手を伸ばすが、この手に柄を握ることができなかった。そして、ここは野営のテントではなく、実家にある私の部屋だと気付いた。


私はレイやナターシャ様、仲間たちと厄災を倒す旅に出ていたはずで、ここから遠く離れた場所にいたのではなかったか。

そもそも、私たちは厄災を滅ぼすために旅をしていたのに、なぜ今さら魔獣が妖精の石橋を越えたと騒いでいるんだ。


「どういうことだ……?」


ずきり。また頭が痛む。ひとまずレッドベアが出たというなら、討伐に向かわなければならない。愛剣がないならその他の武器を探すだけだ。

私は寝台から飛び降りた。おかしい。視線が随分と低い。下に目を向けると、足が子どものように小さい。足を動かしてみると間違いなく自分の足であることが分かってますます混乱した。


外から悲鳴が聞こえてくる。

窓に目を向ければ慌てて走り回る人々と一緒に、窓に映る自分の姿が目に入った。

燃えるような赤い髪も、アップルグリーンの吊り目も、見覚えのあるものだ。しかし、私の知っている自分自身と決定的に異なるところがある。


「子ども……?」


身長も顔立ちも、どう考えても10歳にも満たない子どもの姿になっていたのだった。


初めまして。

目に留めてくださりありがとうございます。

二話目は本日 17時頃投稿予定です。


愛情が伝わりにくいヒーロー(感情重め)x突っ走り系素直ヒロインが両想いになるまでのグダグダを見たいという欲で書き始めました。世界の危機を救った聖女パーティの二人が、とある勘違いから夫婦になって本当に結ばれるまで。

完結まで毎日投稿です。よろしくお願いいたします。

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