200文字小説集 vol.2 秋の空気はセピア色(200文字小説) 作者: 日下部良介 掲載日:2021/10/15 「ちょうどいいね」 二人並んで歩いているときに彼女が言う。 「なにがちょうどいいの?」 「空気」 僕の問いかけに彼女は答える。 「空気?」 「そう。セピア色の空気。今の季節が私はいちばん好き」 そう言って彼女は僕に身体を寄せる。 木々の葉が色づき、風が哀愁を運んで来る。一年の中でも秋はそんな独特な季節。“セピア色”だと彼女が例えたのは言い得て妙だ。 身体を寄せた彼女の髪もセピア色に香る。 「僕も今がいちばん好きだよ」