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ロリータっていいですよね。  作者: くれふじ
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リリム・フォーチュン

 気まずい遭遇から、始まった2人であったが、ハプニングのおかげもあってお互いの緊張も、解れたのか世間話をちょろちょろと交わせる程度には打ち解けていた。

 ノエルたちは、、2人掛けのテーブルに向かい合わせに腰かけながら朗らかに会話をしている。

 男とぎこちなく、テーブルを囲んでいる彼女であるが、その表情は、無表情に近かった固いモノから、少女らしさの垣間見える柔らかい無表情に変わっていた。


 決して話が上手い2人ではないが、お互いを気遣うように、丁寧に話をしているためか、初対面でも楽し気な会話となっていた。

 男の方も、欲望の波が過ぎ去ったのか、菩薩のように、全てを受け入れてくれそうな柔和な笑顔を浮かべて、銀髪ロリータを見つめている。


 もちろん、極上ロリータの表情は、微笑んでいた方が、嬉しいものだが、この心を開きかけている蕾のような、初々しさのある、瞬く間の輝きもたまらないものがある。

 夜交と、たどたどしくも、一生懸命に会話をしているノエルの口調は、弾むようで、表情とは裏腹に、感情が溢れていた。


 「アリスティア様が、夢にいらっしゃった時は、本当に驚いたんですよ。」

 「夢の中でしたけど、すんごい綺麗で、見惚れちゃいました。」


 夢見るロリータみたいな、鮮やかな表情をしているノエルは、その光景を思い出してでもいるのか、陶然とした笑みで、虚空を眺めている。


 声音に、甘みが増した彼女は、ほんのりと頬を染めながら、言葉を続けた。


 「尊敬するアリスティア様から、指名してもらえたのは、嬉しかったんですけど、こんな私が選ばれたのが不思議だったんです。」

 「ふぁーすとなんちゃらが大事みたいに仰られてたんですけど、1人で待ってって、何か意味があったんですかね?」


 どうやら、女神が1枚も2枚も、噛んでいるようである。

 ファーストインプレッションを、大事にしたかったのならば、あえて、彼女だけを別館に待機させておく必要もないと思える。


 特に、こんな殺風景な空間ならば、待ち続ける彼女も辛かったであろう。


 「ここにも、お茶とかがあれば、良かったんですけど、お父さんが、この部屋の物を全部片付けろって…。」


 ノエルが今回の経緯を話していると、家族の話題に入った処で、はっとしたように息を積めた。

 表情を蒼くした彼女は、入り口と男を交互に身ながら狼狽している。

 おろおろとするノエルを見かねて、男が声をかけると、彼女は済まなそうに、答えた。


 「そういえば、お母さんたちを夜交さんに紹介するように頼まれていたのを忘れてました。」

 「隣では、皆が焦れていると思うので、申し訳ないですが急いで向かっていいですか?」


 ノエルの申し訳なさそうな表情と、少し焦った口調から、1も2もなく、男は頷いていた。



 2人がいざ向かおうと、椅子から立ち上がったところで、見計らったかのように、勢いよく音をたてて、部屋の出入り口が開き、小柄な女の娘が、ムッとした顔で飛び込んできた。


 「お姉ちゃんっ  おそいよっ!!」

 「みんなして、今か今かと待ってたのに、ぜんぜん帰ってこないし、扉の前まで来てみれば、楽しそうにイチャイチャしちゃって、びっくりしたよ。」


 いきなりダイニングに駆け込んできた幼女は、ノエルの傍まで近づくと、一気に言葉をまくしたてていた。

 小さな体躯で、、ぷんぷんと祇園が聞こえてきそうな程に怒る彼女に、ただただ話を楽しんでいた2人は、床を見つめながら、小柄な幼女よりも、小さくなるよう体を縮みこませて申し訳なさそうな表情を浮かべている。

 男にとっては、こんなにも可愛らしく怒られる所以もないのだが、隣ですまなそうにしているノエルと同じように、抗えないちっちゃな罪悪感に苛まれていた。


 2人は、最初は申し訳なさから下を向いていたものの、からかうような声音の「イチャイチャしちゃって。」の部分に気付くと、仲良く顔を見合わせて、赤面していた。


 元気の良い幼女は、初めはムッとした表情を作ってはいたものの、ポーズだったのか、今は、人を食ったような笑顔へと変わっており、にまにまとこちらを見つめている。


 そんな彼女の肌は、ノエルより少々日焼けしており、その健康的なロリスキンを創り出す手助けをした太陽に嫉妬したくなるほどには、可愛らしかった。

 2人をじっとりと交互に見つめる瞳はとても大きく、姉の落ち着いた瞳とは真逆で、好奇心に取りつかれたように輝いている。

 キラキラと光を反射するまんまるな瞳は、澄み渡り、黒真珠の様である。

 その子猫のような瞳は、男の濁った瞳では、直視できないほどにきれいだった。

 無邪気さを主張してくる、ちょこんとしたツーサイドアップが愛らしい彼女の黒髪は、ショートカットに切りそろえられ、髪を結っているピンクのゴムが良く似合っている。

 鼻は姉と同じく、ツンとしたところはなく、唇は普段の癖からか、口角が少し上がっており、微笑んでいるというよりも、あざけっているという方がしっくりとくる。

 耳は少し顔のバランスよりは大き目で、楽しいことは聞き逃しませんよと言わんばかりに、アピールしている。

 身長は125センチほどであり、幼女らしく、背丈のわりに、頭が大きい。

 さらに、まだ腹筋が育ちきっていないのか、ぽこりと愛らしいイカ腹が、チャーミングで、その容貌から、10歳には満たないであろう美幼女に見える。


 彼女のトップスは、姉と同じようなシャツであるものの、、その白いTシャツは、所々解れたり、汚れたりしていて、彼女の活発さを想起させる。

 ボトムスは、空色のハーフパンツで、動きやすさを重視しているのか、靴下も短く、薄ピンクの生地に、白のラインがキュートである。

 くるぶし丈の幼い足を覆う、薄茶色の革靴は行動力がありそうな彼女の性格を表すように、汚れが目立っており、泥や砂が、所々にくっついている。

 惜し気もなく見せつけられている幼女の生脚は、幼い年齢の割に折れてしまいそうな、儚さはなく、地肌はトロけそうに柔らかく見えるが、未来の展望を期待させるかのように、美しい脚線美を誇っている。


 そんな魅力的な生脚と着古されたハーフパンツを見つめていると、邪な考えが男の脳裏に浮かんでくる。

 仰向けになった男の顔面の上で、またぐように、膝裏を押し付けるよう、体育座りをして、挟んでもらえるのならば、視覚、嗅覚、触覚に加え、精神的な充実感まで満たされるように思える。

 さらに、緩く閉じた膝小僧同士を、開きつつ、その隙間で、瞳を合わせながら、冷たい眼差しで蔑んでもらえるならば、かなりの枚数開いている扉に加え、新しい扉が何枚も開けそうである。



 あまり見る事のない、実姉の照れた様を、恍惚とした表情で見やった幼女は、傍で気持ち悪い笑顔を浮かべている男を、興味なさ気に一瞥し、ノエルの方を再び向くと、にやにやしながら話始めた。


 その切り替えの早さから、もしかしたら彼女は、結構前から扉に張り付いていたのかもしれない。

 実に、ませたメスガキである。


 「もー  お姉ちゃんとお兄ちゃん、そんなに赤くならなくても、いいのになぁ。」

 「そんな付き合い始めのアベックさんみたいな反応しちゃってると、こっちまで恥ずかしくなっちゃうじゃん。」

 「でも、びっくりしたのはほんとで、人見知りなお姉ちゃんがあんなにほかの家の人と話してるのは久しぶりに見ちゃったよ。」


 黒髪幼女は、まん丸い瞳を精一杯に見開くと、さも驚きましたよと言わんばかりの表情で、、ツンツンと姉の腕をつつきながら、面倒くさいおっさんみたいに、絡んでいた。


 言い回しも、どこか古臭く、そんな言葉をどこで覚えて来るか、不思議である。


 心の底から愉しそうな彼女は、ねちっこい口調のまま、言葉を続けた。


 「今日のお姉ちゃんは、特に健気さが半端なかったねっ。」

 「恥ずかしいのに、それを我慢しながら一生懸命に喋る姿なんて、もうこっちまで照れちゃいそうなくらいに可愛くて、胸がキュンキュンしちゃったよー。」

 「やっぱり2人は、お似合いのアベックさんなのかなぁー?」


 そのロリぼでーのどこから沁み出して来るか理解出来ないが、いやしいおっさんみたいな仕草や口調は、妙に馴染んでいる。

 普段も姉をいじりまわしては、愉しんでいるのかもしれない。


 そんな妹の、奔放な態度を見とがめたのか、ノエルが静かに叱り始めた。


 「リリムっ、あんまりからかわないで…。」

 「夜交さんとは、偶然に話が弾んだだけなんだから、私なんかと恋人扱いすると、夜交さんに、失礼でしょう。」

 「それと、いつもみたいに、私をいじるのはいいけど、自己紹介もしないで、そんな失礼な態度はやめなさい。」


 リリムと呼ばれた幼女は、納得いかない顔で姉の弁明を眺めていた。


 どう頑張って比べて見ても、フツメンの方が劣っているのに、ノエルは自身を下げるように話している。

 声音や表情からは、謙遜の色は見えず、彼女の本音のようである。


 小さなやかんが少し吹きこぼれるような可愛い怒りを見せたノエルは、自己紹介をするように、妹に促していた。

 まだ、いじり足りないと表情で訴えていた彼女であったが、渋々と男の方を向くと、その顔つきを一変させ、媚びを売るように、顔を輝かせながら声をかけた。


 「ごめんねお兄ちゃん。」

 「お姉ちゃんがさっき言ったと思うけど、フォーチュン家の次女のリリムだよ。」

 「趣味と生きがいは、お姉ちゃんの恥ずかしがったり起こったりする可愛い顔を見ることだよ。」

 「他には、新しいものや知らないことを楽しむのが大好きだから、いろいろ教えてね。」

 「もちろん、えちいのはダメだからねっ。」


 リリムと名乗った幼女は、1息に全てを話すと、男からすっかり興味を無くし、姉にやりましたよと言わんばかりの視線を向けていた。


 子猫のような彼女も、姉に対しては、子犬みたいに接しており、相当になついている風である。


 「リリムっ、初対面の男の人を、そんな風にからかっちゃいけないよ。」

 「リリムは可愛いんだから、夜交さんだって、勘違いしちゃうよ。」


 自身の事は、過小評価している彼女も、実妹は、正当に評価しているようである。

 落ち着いた口調から、焦ったような、早口に変えると、ノエルは、実妹に注意を飛ばしていた。


 「あと、なんで、いつもそこまで、私をいじるの?」

 「私が涙目にならないくらいは、からかってもいいけど、ちょっとは手加減して欲しいよ…。」


 妹の身に危険があると感じた時は、声を強めていた彼女も、自身の事になると、やっぱり、大人しくなっていた。


 ノエルは、疑問調ではあったが、尋ねていると言うよりは、悲しんでいる雰囲気が強く、言葉尻は弱弱しくなっていた。


 そのあまりにもいじめたくなるような姿は、小悪魔幼女と男に加え、この場にいない女神にも、嗜虐的な感情を沸き立たせていた。

 決然とした態度の中に、儚さを漂わせるノエルの態度で、からかっていた当人たるリリムも、思わず鼻白んでいた。


 こんな心がムズ痒くなるやりとりをしていれば、幼女が、実姉をからかう癖がついても仕方がないのかも知れない。



 ノエル、リリム、ノエルと、ロリータ達の多段攻撃を受けていた男は、姉成分は存分に胆のうできたのか、次を求めるように、美幼女に、粘着質で、濁った瞳を向けていた。

 先程の、ロリロリした嘲りが忘れられなかったのか、甘く甘い癖になる声で、辱められる快感に目覚めたようで、物欲しそうな目を、小悪魔ガールに向けてしまっていた。


 この男の視線は、天性の小悪魔には、すぐに感ず枯れて男を見つめる瞳が妖しく輝いた。


この濁ったやり取りは純真なノエルにはまったく気づかれず、ノエルがせかすように妹に話を促した。

 リリムはニヤけた表情を少しだけ改めると、男の瞳の奥を見通すように覗き込みながら、少しずつ獣が獲物を追い詰めるように近づきつつ話し始めた。


 「そういえば、お兄ちゃんは、恋人さんとかいるの?」

 「私だけのお姉ちゃんは、ぜったいに渡せないから、可愛い私が代わりに立候補してあげようか?」


 表面上は、茶目っ気を交えながらニコニコと話しているものの、リリムの瞳はまったく笑っていなかった。

 じわじわと距離を詰める彼女は、男の30センチほど前まで近づいていた。


 歩きながら話しているさなかも、リリムの黒真珠の瞳は、男の瞳から一切逸らされず、男の邪心を暴こうとしているようであった。

 姉思いな彼女は、仕方ないほど無垢なノエルと距離を縮めた男の内心を少しでも探ろうとしていたのである。


 箱入り娘で、大事に大事に育てられて来たノエルは、男の毒牙の存在すら知らないのだ。

 いくら、女神様のお願いだったとしても、唐突に隣にやってきたどこの馬の骨ともわからぬ男を警戒するなという方が無理である。


 リリムはお姉ちゃんが大好きなのだ。



 夜交の顔を、真下から見上げて来ている彼女は、男の戸惑いを見せる瞳をあどけなく無邪気そうにのぞき込みながら、詰めたく革新を突いてきた。


 「お兄ちゃんの好みは、小さい女の子なのかな?」

 「特に、私よりはお姉ちゃんが断然好みみたいに見えたけどどうかな?」


 リリムは、愛らしく膨らんだイカ腹を人撫ですると、男の瞳の色を確かめながら、問いかけ続けた。


 「まぁ お姉ちゃんは、女神様に負けないくらい可愛くてきれいだからしょうがないと思うけど、流石に年が離れ過ぎているんじゃないかな?」

 「そんなお姉ちゃんの可憐さを、抜きにしても、お兄ちゃんには、何か引っかかるんだよね。」

 「さっきの2人の反応と私への態度もそうなんだけど、お兄ちゃんの目が、特にそう見えちゃったから、間違ってたらゴメンね。」

 「なんか、幼い女の子に対する執着みたいな感じがしてね、特にここに入る前に、背中がゾクってしちゃったんだよね。」

 私に、からかわれている時なんか、とっても嬉しそうだったし、お姉ちゃんが話を斬っちゃった時とか、物欲しそうでさすがに怖かったんだ。」



 疑問形を取りながらも、確信を持ったリリムの態度に、夜交が差し障りのない弁明を考えるよう黙り込むと、ノエルが先ほどとは一線を隔したようにキレた。


 「いい加減にしなさいッ!!!!」


 ノエルの剣幕は、リリムが今まで1度も見たことがないほど激しく、小悪魔は自身のうかつさに気付かされた。

 ノエルの顔は、真っ赤になっており、瞳には大粒の涙まで浮かんでいた。

 身体は力が入り過ぎているのか、ガタガタと震え、握りこまれた手の甲には、青白い血管まで見えている。


 実の妹の、とてつもなく失礼な言動と態度は、世間の闇をあまりにも知らず、性善説で生きている少女の感情を振り切らせるには充分であった。



 その様は、小さなやかんは爆発四散しキッチンを業火で燃やし尽くさんばかりであった。

 やかん、いらんやん…



 リリムは、男の瞳をみるまでは少しの確認で留める気であったが、その濁りをみてからは警戒心が跳ね上がり、姉を守ることを優先してしまったため、姉の感情にまでは気が回らなかったのである。

 彼女の中では、姉は、世間はあんまり知らなくても、誰にでも慣用であると勘違いしていた。


 しかし、ノエルの純真さや、他者を思いやる心の深さは、リリムの想定を超えていたのだ。


 その結果、温かなじゃれ合う空気は書き消え、ダイニングはぐすぐすとノエルの鼻をすする音だけが響くコミカルさをなくした修羅場となっていた。

 リリムもリリムで、感情を振り切った姉の態度にあてられたのか、下を向きながら涙を垂れ流している。

 最後の気合を振り絞ってか、彼女が声を出して泣くことはなかった。



 新しい美幼女との、少々過激な出会いだと思っていたのに、いつの間にか、流れは一気に悪くなっていた。

 トイレからの降臨の時とは、気まずさのレベルが段違いなため、この状況を打破すべく、男は初めて女神に乞い願った。


 なんとも他力本願である。


 (コミュ力を下さいっ!!!)


 この願いには、邪さなど微塵もなく、ただただノエルとリリムを悲しみの淵から救いたいがための純粋な願いであった。


 アリスティアもこれには気づいているというよりは、終始ライブ中継を見ているようなモノであったため、この罪悪感溢れる状況を把握していたが、男の異世界での初めての意思を持った願いを、彼女はスルーした。

 むしろ、女神もコミュ力が欲しかったのだ。


 対応できるのなら、ノエルがグスグスし始めた位から叱り飛ばしているくらいである。



 この場には、コミュ力の塊みたいな少女は涙を垂れ流すだけの装置となりはて、残りはコミュ力、絶望勢だけとなっていた。


 男も男で、女神には切実に願ったものの、解決されない状況を悟ったのか、腹をくくり身の中に渦巻く思いをぶつけることにした。


 夜交には、リリムの気持ちもわかるし、私的も的確だったため、リリムに落ち度はないと考えている。

 ノエルも、こんな自身のために、感情を露わにして怒ってくれたため感動さえしていた。


 こんな魅力的なロリータ達を泣かせたままにするくらいなら、自身の未来など投げうつ覚悟を決めた男は、全身全霊をもって叫んだ。


 「ノエルッ、君の事が大好きですっ。」

 「君のような清楚で可愛くて美しくて儚くてあどけなさの中に見える凛々しさとか、少しポンコツ気味なところとかこんな自分のために、あんなに怒ってくれる誠実さとか全部が大好きです。」

 「私の人生の中でも、こんなに魅力的で、心を奪われる女性に出会ったのは初めてですっ。」



 男の魂の叫びは、氷ついた時間を動かすには充分であった。

 むしろ、やり過ぎである。

 言葉の取り方によっては、愛の告白であった。



 当のノエルは、妹の言動に心を揺らされていたところに、告白にもとれる、熱のこもった男の言葉をぶつけられ、気持ちが吹っ飛び、ポカンとした間抜け面で夜交の方を向いていた。

 深く吸い込まれそうな青の瞳も、これでもかと見開かれ、元々が知的な印象を与えていたためか、より間抜けに見える。


 涙製造装置も、言葉には動かされたのか、しょっぱい汁の製造を一時的に停止し、うつむき加減で男を睨んだ。


 きまずい空間に愛の告白などすれば、こうなっても仕方なかろう。


 まぁ 男にはそんな気はなかったのだろうが…。



 そんな空気の変化にも気づかず、自身に酔ってでもいるのか、男はさらに叫び続けた。


 「リリムの指摘通り、私は小さい女の子が大好きですっ!」

 「特に、12歳から13歳くらいの、大人への変化を魅せる姿が、精一杯背伸びをしようとしててとても愛しくなるのです。」


 本心をぶちまけている夜交の表情や声音だけは、誠実に思えたが、内容がヒド過ぎた。


 男の口調は、何故か気持ちが悪い敬語に変わっており、内容もより赤裸々になっていた。


 ノエルは、ポカンとした表情のまま虚空を眺めており、涙製造装置は、男を睨んだまま、その態度にいぶかし気な色を見せ始めた。


 目の前の変態が、あっけなく変態性を認める者なのかと…。


 ロリータを偏愛する男の、独白はまだまだ続く。


 「モチロン、リリムのようなロリロリした小悪魔幼女も大好きです。」

 「特にそのイカ腹が最高です。」

 「出来得るものなら、プニプニしてそうなそこに、1日中頬ずりしていたいものです。」

 「それと、少し日焼けしたその白い肌もたまらないです。」

 「むき出しの太ももなんか、もう見てるだけで、舐め回したくなっちゃいますよ。」

 「一体、どんな、甘美な味がするんですかね?」


 男は、格好いいとでも思っているのか、ニヤりと右の口角だけを上げて自身を怪訝に睨む小悪魔へと視線を向けていた。


 ねっとりとした表情のまま、片側の口角だけを持ち上げる様が、どれ程、気色悪いか、自覚がないようである。


 濃厚な気持ち悪いを向けられたリリムが悲鳴を上げなかったのは、奇跡化もしれない。



 不敵な笑みを称える男は、自身のシャツをいじっていた右手の人差し指を、顔の横で立てて、注意を引くと、流れるように、指を鳴らし、わざとらしく、はっとした表情を浮かべた。

 そのまま、心の底からすまないと言わんばかりの表情をすると、何故か自己紹介を始めた。


 すまないと思う気持ちは、吐き気を催しそうな、その態度に向けるべきモノで、決してどうでも良い、男の自己紹介に割くリソースではない。


 幼女の生脚を舐め回したいとのパワーワードから繋げる、自己紹介は、どれだけ小悪魔のメンタルにダメージを与えることができるのだろう?


 「あぁ  自己紹介が遅れて申し訳ありません。」

 「私は、元宮 夜交 と申します。」

 「名前が夜交なので、気軽に夜交お兄ちゃんとでも、呼んでください。」


 セクハラなんて、時空のかなたに消えるような気持悪さをしているのに名前+お兄ちゃん呼びを求めるとは、コイツの思考回路はどこへ向かっているのだろう…。



 男はキザったらしい態度を崩さずに、視線をしっかりとリリムに向けると、真剣な表情になり、話を続けた。


 「でも、勘違いしてほしくないことが1つあるんです。」

 「それは、私がロリータに嫌われるような接し方や性的対象として見ることが絶対にないということです。」

 「これは私の信念に根差したことで、私の世界では共通認識のことなのですが、1言でいうと。」


 「イエス ロリータ ノータッチ。」


 「あくまで、私はロリータを愛でることが好きなだけで、たわむれたい気持ちは、はち切れないほどあるのですが、ロリータを悲しませることだけはしたくないのです。」



 共通認識でもなければ、気持ち悪さに拍車がかかってさえいる。

 こんな男の吐き啄なるような、独白を聞いているリリムを、だれか褒めてあげてほしい。


 そんなリリムの様子に、まったく頓着しない男は、まじめな顔から、晴れやかな笑顔に、表情を変化させていた。

 そして、男は、舞台役者がクライマックスに入るかのように大仰に腕を広げると、唇をほとんど開かないようにしながら息を吸い込み、溜めを作ると締めに掛かった。


 この仕草や言動を、後で思い出したなら、100回は死ねそうである。



 「ロリータっていいですよねっ!!!」


 「あの小さい体がちょこちょこと愛らしく動く姿とか、脳の記憶領域の全てを明け渡しても惜しくないほどです。」

 「舌っ足らずな声音も、ころころと変わる喜怒哀楽も、全てが尊いです。」

 「もちろん、清楚で可憐なノエルも、リリムのような小悪魔ロリもたまらないんです。」

 「他にも、ツンツンしたロリやベタベタ甘えてくるロリもいいですし、無表情で何を考えているかわからない無口ロリも大好きです。」

 「電波系ロリや体育会系ロリも、はんなりロリやヤンキーロリも最高です。」

 「ロリの魅せる世界には、私の語彙では語りつくせない素晴らしさがあるのです。」

 「あぁ  この世の全てのロリータが愛おしい…。」


 男は一息に叫び終わると、感じ入ったように天井を見つめた。


 そして、少しの、間を設けると、いきなり身を屈め、リリムの眼前に顔を近づけながら瞳を合わせると、先ほどの熱弁はどこへいったのかという程静かな声で語り掛けた。


 「ロリに貴賎はないんです。」


 その声は、落ち着いた低いモノで、何も知らなければ恐怖などは覚えない類のモノであった。

 しかし、それには声帯から沁みだして来るかのような、男の妄執が過分に含まれており、ドロドロとした濃く煮詰められた感情が粘りついていた。


 何故か、この言葉が今日で1番魂が乗っていた。


 この言葉を、至近距離でかつ、気持ち悪い前置きを効かされていた上で、訴えかけられた幼女はどうなるのだろう?


 男の顔面に、全力の拳を叩きつけても、力が足りないならば、椅子で殴っても許されるかも知れない。

 それほどの、トラウマになりそうな偏愛がそこにはあった。



 言いたいことが全部言えたのかゆっくりと立ち上がると、、男は満足げな溜息を吐いていた。


 しばらく前から、ノエルは相変わらずの、アホ面をさらしたまま動いていない。


 一方、男を睨んでいたリリムの表情にはまぎれもない恐怖が浮かび、鳥肌を立てた身体を小さくするように、かき抱いている。

 彼女の表情には、男の「手を出す気はまったくない。」との部分が気にはなっているが、嫌悪感と恐怖が先行し、唇を震わせるだけで言葉が出てこない。


 男は、動かないポンコツガールを愛おし気に見た後、間抜け面の前で掌を振っていた。

 やれやれと言わんばかりに、鬱陶しい所作で、ノエルの反応がないことを確認すると、諦めたように瞬きをし、リリムに向き直っていた。


 「リリム、私の気持ちはわかってくれたかな?」


 先ほど、冷静になったのは気のせいみたいで、まだロールプレイは続いているようだ。

 これは、本当にロールプレイなのか…



 こんな、気持ち悪い生命体と相対するには、リリムは幼すぎた。

 しかし、呆けた姉の顔を見ると少しの勇気が湧いてきたようで、彼女は、瞳を険しくすると、なけなしの気持ちを振り絞って男に問いかけた。


 「先ほどの手を出す気がないというのは本当ですか?」

 「お姉ちゃんは、本当に世間知らずなのに、お父さんのせいで、もっと世間知らずになっちゃってるし、お父さんのお友達や商会の男の人達が来ても、ほとんど合わせないか、お父さんが怖くてなにもできてないんです。」

 「なんで、男の人の怖さとか欲望とかを遠ざけられて、ここまで綺麗に育っちゃったんです。」

 「だから…  私が…  守ろうって…。


 リリムは、怖がりながらも途切れ途切れに語りかけ、最後は涙交じりに気持ちを吐露していた。

 先ほどまでの、あざとい小悪魔や悔しそうな涙製造装置はなりを潜め、そこには、ただただ姉を思う妹の姿があった。



 さすがにこの姿に変態も我を取り戻したのか、鮮やかに土下座をかましていた。

 男の明らかな奇行に、馴染のない彼女は面食らったものの、男は涙を流しながら誤り始めたため、それを見たリリムも、精神の箍が吹き飛んだのか、ギャン泣き始めた。


 この騒がしい状態でも、話の中心のポンコツは呆けていた。



 これから少々の間、男がリリムに謝り続けたり、感情を落ち着けた彼女からの再確認もあったが、小悪魔の男への好感度は、常時ストップ安を決めていた。

 焼き付いた印象が強すぎて、何もかもが気持ち悪く見えてしまうのだ。


 それでもリリムは、姉と自身のために努力したのである。


 だれか、間抜けずらのやつに、この一部始終を説明してやってください。



 こうして、落ち着いた後、リリムが姉を現世に呼び戻し、仲直りをした事や、自己紹介などを終えたことを告げていた。

 この際に、どこまで記憶があるかを、ノエルに聞いたところ、姉が顔を赤らめたため、リリムの目が死んだ。


 幸か不幸か、ノエルは最初の告白で頭がフリーズしていたため、男の気持ち悪い魂の叫びは、はむはむしたくなるような耳を右から左へと通り過ぎていったようである。

 ノエルのこの時の記憶は、こんなものであった。


 実にヒロインしている。


 ちなみに、役立たずのコミュ力ゼロ女神は、男の発現に共感はしながらも、腹を抱えながら大笑いしていた。



 お互いに残念な顔合わせを終えた後の、2人のロリータ達の表情は、正反対の色を帯びていた。

 片方は恋する少女のように、頬を鮮やかに染め、煌めく滴を瞳に称えている。

 もう片方は、表情は姉を慮ってか、無表情であるが、腐った生ゴミを見るような瞳をしている。

 リリムの胸には、こんな荒唐無稽な話をしても、信じてもらえないだろうというあきらめだけが渦巻いていた。



 こうして、フォーチュン姉妹の案内で母屋へと向かうこととなった。



こんなくそ長いのを、読んで下さってありがとうございます。

切ろうとも思ったのですが、そのまま投げました。

これからも、長かったり、短かったり、しますがよろしくお願いします。

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