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ロリータっていいですよね。  作者: くれふじ
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ノエル・フォーチュン

 お察しの通りであるが、部屋の右の扉はトイレであった。

 俗に言う、お花をつまみにとのやつであった。



 チラリと入り口を見て、男の存在に気付いた彼女は、なるべく音がしないよう、そろりとトイレの扉を閉めると、顔を隠すように、男に背を向けた。

 あまりにも悲しい初対面だったせいか、頬をこれでもかと紅潮させた少女は、くるりと勢いよく男の視線から逃げていた。

 羞恥心に苛まれているロリータは、軽く体を丸めながら、両手で顔を覆い、体を小刻みに震わせていた。

 年頃の少女である彼女の内心を慮れば、その小動物のようにプルプルとする様も相まって、より可哀想に感じてしまう。

 同性の知人でも、若干気まずい事なのに、異性で初対面な成人男性に見られたとなれば、恥じらいによって、この場から逃げないだけでも、素晴らしいと思える。



 トイレから降臨したロリータは、首筋まで真っ赤にしながら、しばらく震え続けていた。

 先程まで顔を隠していた手は、今は頭に載せられて、床にうずくまらんばかりに、体を縮みこませている。

 少し前の行動を、悔恨でもしているのか、何を言っているかまでは分からないが、小さな呟きも聞こえてくる。

 その恥じらいに身もだえる様は、健気さと純真さを感じさせ、見る者に、愛らしさと微笑ましさを抱かせてくる。


 男が少女に対して、気を効かせるほどの余裕があったのなら、こんな可哀想な空間は長くは続かなかったであろう。

 だが、相当に混乱しているロリータと同じくらいには動揺している男であったため、声すらかける事も出来ず、何もない落ち着いた空間には、下手くそなスクワットのような、窮屈な姿勢で深呼吸している少女の息遣いと、未だに入り口で硬直している男の微かな呼吸音が響くだけの、気まずい空気が出来上がっていた。


 クラシカルで落ち着きを与えてくれていたダイニングの雰囲気は一変し、傍から見ると、シュールでコミカルな空気を漂わせ始めていた。



 少女が背を向けてから、けっこうな時間が経ったが、どちらも声を発さず、硬直していた。

 窓から入る日差しは、幾分強くなっていたが、場の空気を、まったく温めてはくれていなかった。

 申し訳なさそうにロリータの背中を見つめる男は、後姿だけでも涎が出そうな少女を見つめるだけで、声をかけれてはいなかった。

 ぱくぱくと口を開いてはいたが、極度の緊張からか、音にはなっておらず、もじもじと見つめる事しか出来ていなかった。


 こんな恥ずかしい状況でそれなりの時間、放置されている彼女が、なんともいたたまれない。



 そんな生暖かい空気が流れる中、頭を抱えていた少女は、何かに思い至ったかのように、ピクリと体を大きく震わせると、男が立っている方を慌てて振り向いていた

 結果、銀糸を靡かせながら、男の方に顔を向けた少女と、創造を超えるロリータの愛らしさに呆ける男が半端な距離を取っ手、向かい合う形となった。


 どうやら、10代前半に見える少女の方が、20台の男よりも、タフなメンタルをしているようであった。



 こちらを向いた少女の顔は、男には先ほどの女神とは1線を隔して魅力的に映った。

 振り向いた際に、ふわりと揺れる長く透き通る銀髪は、部屋の窓から差し込む日差しを受けて、煌めいている。

 彼女の、腰程まである艶やかなストレートの銀髪は、勢いよく動いた時に、慣性で緩やかに揺れていたが、そのしなやかさやみずみずしさを誇るかのように、男の眼を釘付けにしながら、さらさらと、背中へと流れて行った。


 輝かんばかりの銀髪だけでも、ゴホウビなのに、その手入れが行き届いた様や、若々しさと、幼い顔立ちから覗く妖艶さを合わせて見せつけられれば、その気がなくとも見惚れるであろう光景であった。



 部屋の入口と、トイレの入り口の前から動かず見つめ合う2人は、気まずさを隠せないのか、チラチラと視線を合わせては逸らすと言った、じれったい行動を繰り返していた。

 少女の行動で、場が動くと思えたが、そこまでの変かは見られなかった。

 ほんの少し前に、決死な態度で振り向いたであろう彼女の勢いはしぼみ、もじもじと視線を彷徨わせている。

 男も男で、正面から彼女の容貌を拝んだためか、恍惚とした表情で黙り込んでいる。


 そんな少女は、無表情に近い表情の中に、微かな戸惑いをにじませながら、考えあぐねているようであった。

  他にも、男に対する好奇心もあるのか、創り物めいた幼い美貌の中に、無邪気な光が灯っており、あどけなさと大人っぽさが同居し、発展途上のロリータの甘美な香りを漂わせている。


 佇んでいる少女は、大分落ち着いたのか、出会った当初のような火照らせた頬の赤身はなりを潜め、恥ずかしい代価を払ったおかげで、きめ細やかな頬の色は、ほんのりとした健康的な薄桃色に染まっていた。

 こちらを見つめて来る大きな瞳は、深海を思わせる濃い青色で少女の思慮深さと神秘性を印象付けている。

 鼻は低くはないものの、ツンと尖っておらず、作り物めいた顔の中でも柔らかさを感じさせた。

 唇はぷっくりとしてもぎたての果実のようであり、硬く引き結ばれてはいるものの、魅力を損なうことは一切ない。

 耳は、小さすぎることはないが、艶々した銀の髪に上部が隠れているため、元の大きさよりも幼く見える。

 緩やかな眦や、男を慮る視線からは、穏やかな性格が想像できる。


 今は無表情に近い表情の彼女であるが、慌てた時の愛らしい姿を思い出すと、もっといろんな表情を拝みたくなる魅力がある。



 銀髪ロリータが、どう声をかけて良いか分からずに困っている中、少女と女性の狭間の、蠱惑的な彼女の相貌に見惚れていた男は、彼女を気遣って、声をかける事もせずに、少女の幼い身体を嘗め回すように見つめていた。


 少女の体系は140センチ程度であり、身体のラインがわかるような簡素な服装をしている。

 トップスは無地の白地のTシャツで、その上に、無地の黒色のパーカーを羽織っている。

 ボトムスはふくらはぎの中程までのミモレ丈のプリーツスカートで、若々しさと清楚さをかもしている。

 紺色の生地に可愛らしい白のチェック柄があしらわれたスカートからは、少女の細いながらも、成長を感じさせる健康的な肉感のある脚が顔を出している。

 丈の長いスカートから、覗く脚には純白のニーソックスを履いていて、顔を埋めたくなるような柔らかい曲線を見せつけて来る。

 靴は簡素な革靴であるが、安っぽさは感じられず、綺麗に清められて、全体を通してこぎれいにまとめられているので、少女がゴテゴテした服装を好まないようにも想える。


 あまりにも飾り気がない服装であるが、素材が良すぎるためか、妙に似合っている。


 今の彼女は、露出が少ない服装をしているため、幼さの残る少女の、未成熟ながらも、確かな成長を見せる張り感のある太腿や、マシュマロのように甘くぷにぷにとしていそうな、二の腕が見れない事は残念である。

 そんな、発展途上を地で行く彼女の胸はこれでもかと言うほど真ったいらで、手のひらを前で組み合わせているのに、すがすがしいまでの断崖絶壁であった。


この素晴らしい光景を生み出している少女は、自身の胸のなさを逆に協調していることにまったく気づいていないのか、あどけない無表情でこちらを見つめたまま動かない。

 この姿も実に可愛らしく、見ているだけで悟りが開けそうである。



 少女の姿に心を奪われ、沈黙している男の頭の中は、ロリータの全貌を充分に堪能した事で、新しい思考が浮かんで来ていた。


 それは、トイレに行きたいとの強い感情であった。


 特に、尿意を覚えていた李、腹痛があったりする訳では決してないが、男は少女と、トイレの入り口を交互に見つめてしまっていた。

 女神よりも女神らしい彼女が、実際に排泄をするのかが気になって仕方がなかったのだ。

 もしも、排泄をしていたのであれば、もしかしたら、甘美な香りがするかも知れない。

 ジャコウネコの排泄物無いに未消化で残された豆を用いた最高級品たるコーヒーであるコピ・ルアクや香水の原料に用いられる動物達の分泌物も存在するため、彼女ならばワンチャンあるかも知れない。


 大抵が、希釈されて仕様されているが、彼女のモノならば、原液でもイケるかも知れない。


 もちろん、犯罪である事を自覚しているため、行動する気すらないが、知的好奇心と言う名の欲望は絶え間なく囁いて来る。

 これは、あくまで心理に近づくための崇高なおこないで、やましい点など一切なく、むしろ哲学的で、哲学的ロリータと言っても過言ではない。


 手を洗いたいと申し出れば、少々は疑われるだろうが、目論見までは気付かれないだろう。

 そもそも、純真無垢に見える彼女が疑う科すら分からないし、このような機会は、2度と訪れない可能性が高い。

 まだ、好感度が上がっていない状態の方が、後で下がるよりも、遥かに得である。


男の脳内は、瞳だけは元気に動き回っている硬直した表情の彼とは違い、妙に饒舌であった。



 男が犯罪チックな妄想にふけっていると、突然、どこからか舌打ちが聞こえて来た。


 心の距離も、物理的な距離も遠い銀髪ロリータから響いて来た風には思えない舌打ちは、男が驚いた表情で少女を見つめると、再び聞こえて来た。


 件の女神が、今度は舌打ちだけ寄越して来たようである。

 その舌打ちも、妙にいら立ちを含んでおり、何度も何度も繰り返される。

 怒りを覚えているアリスティアの態度で、この状況は明らかに少女に恥をかかせていると気付いた男は、ドギマギと少女に話かけた。


 ちなみに、頭に響いた舌打ちは、女神が麗しい少女の恥じらいや困惑や期待を浮かべる表情を生で見れている男への嫉妬であり、先ほどのような男に向けた叱咤激励ではない。



 「あの……  初めまして  ……。」

 「アリスティア様からお紹介された者なのですが、こちらは、フォーチュン様の別宅であっているでしょうか?」


 途切れ途切れに、旬を過ぎた詐欺の口上みたいに妖しく、男は話しかけていた。

 彼女に対して、失礼な妄想をしていた事もあるが、ただただ、彼女の愛くるしさに気遅れして、男は上手く話せていなかったのだ。


 男の視線は、せわしなく動き回り、焦った表情も相まって、その同様は、件の銀髪ロリータにも伝わっていた。


 未だに家屋の入り口から動かない彼に、少女は柔らかい微笑みを浮かべると、ゆったりと話しかけながら歩み寄って来た。

 自身よりも、あからさまに慌てている人間を目の前にすると、何故か落ち着くモノである。


 「はい。  そうです。」

 「こちらこそ初めまして。 フォーチュン家の長女のノエルと申します。」

 「あなた様が、アリスティア様が仰られていた方ですね。」


 甘くトロけそうな柔らかな声音の中に、燐とした芯の通った彼女の声は、男の心に沁みていた。

 あどけなさと、愛らしさと、清楚さをブレンドした彼女の涼やかな声に、男は頷きを返す事しか出来ておらず、ふんわりとした笑顔で男の反応を見守っていた彼女は、そのまま言葉を続けた。


 「もとみや…、やこう…様ですよね?」

 「家族一同お待ちしておりました。」

 「それと、先程は、恥ずかしい所を、見せてしまい、申し訳ありませんでした。」


 どう呼んで良いのか分からなかったのか、戸惑い混じりに、男の名前を呼んでいた。


 その伺うような、恐る恐ると言った声音は、今彼の手元に、録音できる機材がない事を恨ませるには充分な可憐さがあった。

 加えて、自らトイレの事を持ち出して、セルフで照れてくれるものだから、可愛過ぎて仕方がない。


 そんな彼女は、言葉を言い終わると、「これからよろしくお願いしますね。」とぺこりと頭を下げていた。



 男があまりの感動に打たれ、黙り込んでいると、顔を上げて、見つめて来る少女が不安の色を、段々と帯び始めた。

 自身の話し方や態度に問題があったのかと、少女が考えコムように眉間に小さなしわを寄せたところで男は我を取り戻したのか、慌てたように話しかけた。


 「申し訳ありませんっ!  フォーチュンさんが、あまりにも可愛らしくて、ずっと見とれてしまっていました。」

 「それと、先に謝らせてしまい、申し訳ありません。」

 「一方的にこちらが悪いのにも関わらず、温かい気遣いをありがとうございます。」

 「あと、恥をかかせてしまい申し訳ありませんでした。」


 男は何かに急き立てられるように叫びながら、勢いよく頭を下げていた。

 はたから聞けば、口説きまがいのセリフや恥を掘り起こすような内容も含んでいたが、男の必死さから下心や悪意を少女が感じた様子はなかった。


 深々と下げた頭を、男は持ち上げると、そのまままくしたてるように言葉を続けた。


 「名前の方も、、元宮、夜交で合っていますよ。」

 「こちらの名前で言いますと、元宮がフォーチュンと同じような名字となりますので、元宮と呼んでもらえるとありがたいです。」


 ようやく男が、反応らしい反応を見せたため、ノエルと名乗った少女はほっとした吐息をついていた。

 少女は、ダイニングに並べられたテーブル達の横を通ると、男の、ほんの数メートル前まで近づいていた。


 テーブルの傍を通る際に、椅子につまずいてはいたが、転ばずに済んでいた。

 出会ってすぐの、慌てる様子や、今のおっちょこちょいな面からは、彼女の素が見えている風にも見えるが、男への配慮をする姿や、見た目よりも、落ち着いた雰囲気を放つ様からは、どちらが彼女の素なのかは推し量れない。


 思考のほとんどが少女の事で埋め尽くされている男は、至近から見る少女の美貌に、中毒性を覚えながらも、声を出した事で、大分落ち着いたのか、無意識に放たれる魅了に耐えつつ、ゆったりとした語調を意識しながら、話を続けた。


 「こちらの世界のことは、ほとんど知りませんのでいろいろと教えてもらえると助かります。」

 「こちらこそ、なにとぞよろしくお願いします。」

 「それと、フォーチュンさんのことは、ノエルさんと呼んでもよろしいでしょうか?」

 「同じ苗字の方が複数いらっしゃると聞いているので…。」


 男の口調は、落ち着いていたものの、瞳はだんだんと少女を嘗め回すように見始め、名前呼びを訪ねるときには、瞳と言葉が粘り始めていた。


 銀髪ロリータはそんな男の態度には気付かず、緊張のとれた様子で、朗らかに返した。


「私みたいな子供に、そんな丁寧な言葉図解をなさらなくていいんですよ。」

 「普段の元宮様の口調で話してもらえると気がらくなんですけど  どうでしょうか?」

 「あと、私のことは、ノエルと呼んでもらえると嬉しいです。」

 「さん付けとかだと、逆に緊張してしまいます。」


 気を使ってか一生懸命朗らかに笑おうとするノエルの姿は、男に少女への罪悪感を抱かせた。

 男はこのまま少女に気を使わせたままではまずいと気付き、口調を和らげるよう意識しながら応答した。


 「じゃあ、ノエルと呼ぶね。」

 「私のことも様付けだと恥ずかしいんで、軽く呼んでもらえると助かるかな。」

 「いやじゃなかったら、夜交の方で呼んんでもらえると嬉しいな。」


 男の話し方は、少女を誘拐しますよといわんばかりに気持ち悪く、表情も最初の緊張感や不安感からはかけ離れた、だらしないものになっている。


 「では、夜交さんと呼ばせてもらいますね。」

 「私ももっと砕けた口調ができるように頑張るんで最初はご不便をかけると思いますが、今後もよろしくおねがいしますね。」


 ノエルの口調は、幼妻を思わせるような健気さがあり、男とこの光景を見守っている女神の妄想を加速させた。


 こんな初々しいい光景を魅せられては、女神もハンカチの数枚は葬っても許されるだろう。



 トイレから始まった出会いは、ぎくしゃくしながらも、なんとか円満な形に着地したのであった。



読んで下さってありがとうございます。

ずっと0が続いていたので、ちょっと安心しました。

まだまだロリータ達は、複数控えてますので、楽しんでもらえると幸いです。

これからも、よろしくお願いします。

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