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【恋愛】 「愛してる」
この恋は始まりじゃなかった
最初からもう終わってた
日常が薔薇色に染まって見えたのはすべて幻
彼のほうからは言わなかった
いつだってわたしのほうから言わせてた
「愛してる」
愛を知りたくて
不似合いな背伸びをして
幻の中で踊らされて
呪文のように繰り返して
愛してる?
「愛してる」
それはもう聞けない
幻でもいい
幻でもいいから
わたしは彼の声を聴いた
ケータイに残ったメッセージの
「愛してる」
それでもその恋は初めてだったから
永久に胸に残るだろう
汚れた日のあの幻は
今でも胸の奥に残ってる
あれは愛じゃなかったとわかっても
どうしても消えない
あの日が神聖なことのようにいつまでも輝きを放ち
あの言葉が偽造だったとわかっても
何度も聴いてしまう
「愛してる」