シンゴリラ
SSTO(単段式宇宙輸送機)はご存知だろうか?
だが、この機体は、ソレとは違うらしい。
ようするに、こいつは"SSTF"'(単段式宇宙戦闘機)となるっぽい?
単体で宇宙空間まで行けるというのは素晴らしい、のだけど!!
「ところで、やっぱり思うんだけど、何で、俺が一緒に乗らないと駄目なの?」
ごつくて、臭いヘルメットをかぶり、なんとかどうにかしてパイロットスーツ? ガ〇ダムとかだと、ノーマルスーツとか言うヤツ。着装してみたけれど、やっぱ女の子のあの日の臭い――グハッ!!
「あ”? てんめぇ何か言ったか? 思ったかゴラッ!!」
「……い、いえ、何でもないです。ごめんなさい」
絶対に思考関連に関するデバイスが入ってるに違いない。
過去に、脳みそだけで動かせる戦闘機があったか無かったか、その辺は禁則事項だから言えないけど、このメットには搭載されてる……疑いが出てきた。
「おまえが知る必要はない……と言いたいところだ、が」
「が?」
「説明すんのが面倒なだけだ。あとでまとめてしっかり教えてやる! 叩き込んでやる」
……それは止めて、お手柔らかに。
「と、とりあえず、目標座標まで機体を進めよう」
器用に後席への暴力に負けた俺は、戦術関連の意見具申をする。
「ッち! しゃーなしー、お前のプランで暫く飛ぶぜ」
その瞬間、右160度機転、そしてイオンエンジン全開となった。
あー、良い感じにGが……じゃねーよ! 対消滅エンジンが点火した瞬間、座席に身体が押し付けられる。
「あ、ちょ、苦しくなってきた……」
「安定軌道に乗るまで、お前喋るな、寝てろ」
と、強制的に眠剤を注入された。
最近のパイロットスーツは凄いなぁ……鎮痛剤打ち込んだり、疲労がポンと取れる薬で気分はエクスタシーになったり。
……等と思いつつ、俺は眠りについた。正確には、眠らされた。
レイプだけは勘弁な。
*
そう、本人は絶対に認めようとしないが、校庭に墜落した戦闘機、ARF-24Cに乗せられた。いや、拉致されたと言うべきか。
墜落の衝撃で発生した砂埃も落ち着き、火災も発生してなかったので、何人かの生徒が野次馬ぞろぞろと戦闘機とパイロットの女性を間近で見物しようと集まってきた。俺もその一人。
教員らの制止の声が聞こえるが、それを素直に聞きいれる者は少なかった。
「オェー……ッと、誰でも良い、コパイロットが必要なんだ。おい、そこの君?」
ギロッと、本人は見つめたつもりでも、ガンつけられた気がした一人の男子と生徒は、回れ右をしてそそくさと去っていった。
「――おーい、君だよ、きみぃ」
もう一人ロックオンしたらしい。その女子生徒は、犯されるぅ――、と言いながら逃げ出した。
それと同時に野次馬全員が、3歩程下がる。
「……ティンと来た」
ナニが来たんだ。空を見上げながら、そう彼女は呟いた。
よく見ると、金髪でも、少し緑が混じってる髪の毛だなぁ、と。
「うぅっ!! く、苦しい!!」
突然、彼女はそう言いながら腹を押さえながらうずくまる。
「墜落の衝撃で内蔵痛めたんじゃね?!」
「だとしたら大変ですわ!!」
「メディーック!!」
上腕に赤十字の腕章を付けた教員らしき人が、走ってくるのが見えた。
「グッ、そ、そこの人、手を貸して……」
少し涙目で、こちらを見つめて来た。ヤバい。
「え、えーと、なにをどうすれば?」
近寄っては駄目だ、と思いつつ行動してしまうのは何でだろう? そのせいで、日常がベリーハードモードと化してしまってるのに。
恐る恐る近寄ると、腕を掴まれ――なかった。ぎゅっとされただけだった。
「……お願い、私の星を救って」
あれ? 俺助かる?