進撃のキモウト
事の始まりは、一昨日のことだった。
いつものように、朝起きて、朝食のパンを食べながら豆乳を飲んでいたら、妹に「パンには牛乳でしょ!」と言われる。結局は妹も豆乳を飲む。
いつものように、妹と一緒に玄関を出ると、丁度お隣さんの幼馴染の女の子と遭遇する。
その胸の大きな幼馴染の女の子と牛乳の話をしていたら「この乳女め……」と、まな板な妹が怒り出す。
そして、頭の悪い口論が始まったところで、俺は逃げた。
ダッシュで学園に到着。普通科3年の教室に入り、友人? いや、悪友とくだらない雑談を始めていたところで、事件が発生した。
時は08:30。先生が入ってくる。いつもの朝礼……であるハズだった。
「はい、皆さーん! 突然ですが、今日から新しいお友達がクラスに加わりますぅ」
……は? あとその間延びしている口調を何とかしろ、そこの女教師。
確かに童顔で一歩間違えて手を出したら、違う理由で通報されるのに。
あと、本当に突然だね、転校生がやってくるタイミング。
長期の休み明けでもなく、月始めでもなく、週明けでもない。火曜日だし5月の下旬という忙しい時期だ。
しかも普通科。この学園なら、違う科目だったらありえる話だけど。
色々とツッコム理由はあるけど、その件は放置する。
「ではではー、どうぞお入りくださいなッ」
なッじゃねーよ。と思った。
トコトコと、教室のドアから入ってきたのは……赤毛の女の子だった。
でもなんだ? あのアホ毛。人を一突きで殺せそうな鋭さなんですけど。
女の子、彼女は教卓の近くまで移動すると、初めて声を出した。
「初めまして、私、えーと、アルセイデスと言いま……いえ、申します」
まぁ、赤毛だし、俺らの国の人じゃないだろうし。
「えーと、他に言いたいことは?」
いや、無いでしょ。
「えっと、はい……」
「ではでは、お席は……西村君の後ろで」
「わかりました、って、西村君って、どのお方です?」
酷い、説明が雑だ。
「一番後ろの窓際の席から、一つ左の、上から二つ目の席の男の子よ。目つきの悪いのが特徴だから、すぐ判ると思うよ」
「あ、把握しました」
酷い!
「はい! では着席してください」
「わかりました」
とことこと歩いてくる女の子。名前? もう忘れた。
「お世話になります。アルセイデスです。よろしくお願いします、デス」
今、デスを2回言ったような気がするけれども。ギャグなの?
それよりも、名字は?
「……よろしく」
何か朝から疲れた。
だがしかし、この妙なフラグ的な状況に過剰反応するお方により、事態はややこしくなる。
「はっ!? 何なの? このプレッシャーは!!」
「えっ!? えっ? 美緒ちゃん、どうしたの?」
「兄貴の近くに、危険な女の気配がする」
「いや、そりゃ共学だし、いつものことじゃないかな?」
「違うッ! 今までの女共の反応がおかしい!!」
中村美緒の友人、赤城香織は思った。
……ああ、美緒ちゃんは、もう止められない。
「兄貴! 今助けに行くからね!! ……あ、先生、急用が出来ましたので、只今より欠席しまーす」
「OK」
(先生、雑過ぎるよ……)
赤城はそう思ったが、その短い思考時間で、美緒は武志のいる教室へ向かってしまった。
「……守れなかった」
この学校の校舎は4階、屋上は普通科一般生徒は基本立ち入り禁止。地下は2階まであるが、こちらも普通科一般生徒は立ち入り禁止。
美緒達、特科1年の教室は2階、武志ら普通科3年の教室は3階。タイムリミットまで、あと15秒。