星の女帝
事は、数十秒前に訳わからんヤツに拉致されたことから始まった。
「いーかげん諦めろ! ほら、メット貸してやる」
と、手渡されたのは、ゴツイデザインのバイザーが特徴的なヘルメット。
「戦闘に入ったら与圧切る。窒息したくなきゃ、とっととハメろ」
いや、何にハメるんです? あ、メットですね。頭にハメます……固い、狭い、僕の頭部の処女膜失っちゃうよー。
――と言ってる余裕は無いようだ。
そんなことよりも、コレどうやって被るの?
「こちらデルタ4よりデルタ1へ、これより攻撃行動に移る」
つい先ほど、墜落してきた(本人は不時着と言ってる)航空機に強制的に乗せられ、惑星から大気圏突破、惑星軌道を巡航中。
そのまま進路を北極から南極、その後離脱するっと。いや、なら何故最初赤道コースで行ったの? バカなの? 死ぬの?
だからどうした? はい、そうですねー。文句言える身分ではない。
いつの間にか宇宙空間にいるし。ああ、俺らの惑星は、青かった。
あと、この女性キレてますね。まずは和ませる会話を……と。
「あの、貴方の使ってたらしきこのヘルメットなんですが」
「戦闘準備中だ、手短に話せよコラッ!」
あ、ヤンキー口調じゃないですか、ヤダー! ……でも言わなきゃ、てか言わないと俺が死ぬ。
「えーと、あの、かなり言い辛いのですが」
「なら言うな! このクソボケ」
駄目なんですか? でも俺は言った。
「……ヘルメット、何か臭いんですけど。そう、例えるならアノ日のッ!!?」
――そのヘルメットで殴られました。
その鈍器は無事、俺の頭に収まってます。
「ボギーレーダーコンタクト。敵さん高すぎるだろ……一周しないとアプローチ出来ねーじゃん、どーすんのこれ!」
だそうです。
「オラッ! てめぇはコパイなんだよ、レーダー見ろ! マップも見ろ! 全部見ろ!! どんくせーな」
いや、全く分からない。そもそも初対面で10秒? 無理矢理この戦闘機に乗せられたし。
あと勝手にコパイにしないで欲しい。
「あの、計器の見方全くわかりませんので……」
「っざけんな、このドアホッ! そういうことは最初から言え」
言う暇与えなかったじゃないか。
「たく……ほら、マニュアル送る」
正面のディスプレイに"猿でもわかるARF-24"と表記されたアイコンが出てきたと思ったら、内容が表示され始める。
「一発で覚えろ。出来ないなら帰れ」
どうやって?
「よかったなぁ、今ならまだ、お家に帰れるぞ? 魂だけな」
燃えつきろということか。
「すみません、何でもしますので、捨てないでください」
「ん? 今、何でもするって言ったな!? 言質取ったぞ」
俺は、生き残れるのか?