小ネタ集:再会編
なぜか現実逃避のほうが筆が進む……現代版:再開編(レジェス視点)。
「あ」
「あ、ああ」
先に気づいたのはどちらだろう。某ホテルで行われている医療関係者シンポジウムに参加していたレジェスは、そこで、見覚えのある女性と再会した。アルレオラ・コーポレーションの副社長フィロメナである。彼女のような美女に会えば、ほとんどの人間は顔を忘れないだろう。しかし、彼女がレジェスを覚えていたのが意外だ。空港で倒れたのを拾ってから、一週間ほど経っている。
「記憶力には自信があるので」
と答える彼女は、相変わらず顔色が悪かった。自己申告では以前よりましだ、という報告を受けたが、医者であるレジェスから見れば誤差の範囲である。
アルレオラ・コーポレーションは美容や健康などのグッズを手掛けているが、実は医療品に関しても手掛けている。健康グッズを手掛ける会社の副社長がこんなに不健康そうでいいのだろうか、と思わないではないレジェスである。
どうやらフィロメナも話を聞きにきた側のようで、帰りに何となく一緒になり、コーヒーを飲みに行った。フィロメナがフルーツタルトを食べる姿を見て、ちょっと安心する。とりあえず、何かは食べているようだ。
「ええっと、その後、体調はどうですか」
検診のようなことを尋ねた。いや、実際に医者なので不思議ではないし、気になっているのだが。
「先ほども言いましたが、以前よりは気を付けている……つもりです。妹にはいろいろと言われますが……」
「妹さんがいらっしゃる」
「五人姉妹の長女です」
……それはすごい。自己管理はできていないが、なんとなくしっかり者だとは思ったのだ。まあ、少し話しただけでもわかるくらいには天然が入っている気がするが。
レジェスは、もはやフィロメナ本人に言うのではなく、いろいろ言ってくるという妹にフィロメナのことを頼んだ方がいいのではないか、とすら思った。その妹は確実に姉のことを心配している。しかし、ただの顔見知りの医者程度の関係であるレジェスでは、フィロメナの事情にそこまで介入することができない。
なんとなく、自分が見ていないところで彼女が倒れるのが嫌だった。
フィロメナに秘書からの電話が入った。どうやら、何度もメールを送ったようだが、彼女は気づいていなかったらしい。
「すみません。ちょっとトラブルが発生したようで、行かないと」
「……ああ、そうですよね。すみません、お時間をとらせてしまって」
反射的にレジェスが謝ると、フィロメナは小首をかしげた。
「いえ……楽しかったです。お話しするの」
どこかおっとりとほほ笑まれ、レジェスはどきりとした。席を立つフィロメナの細い手首を捕まえた。フィロメナが再び首をかしげる。
「何か?」
「あ、いえ。よければ、連絡先を交換しませんか?」
以前名刺をもらったが、これは彼女の会社の連絡先だ。レジェスが渡したものも似たようなもので、勤務先の病院の名刺だ。フィロメナもそれに思い当たったようで、「いいですよ」とスマホを取り出した。それから、あ、と声を上げる。
「連絡先って、どうやって交換すればいいんでしょう?」
「……」
フィロメナは、妹にもあきれられるくらい機械音痴らしかった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
この後、二人はちゃんと連絡先を交換します。フィロメナはレジェスにスマホを操作してもらって交換します。たぶん、フィロメナは仕事用と私的用に二つスマホを持ってる。たぶん、フィロメナはいまいちスマホの使い方をわかっていないけど、文章をうつのは早いと思う。レジェスは一般人並みには使える。わからなければネットでやり方を調べます。
こっからたぶん、二人の交流が本格的に始まる……おそらく。




