表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

雨の日に、ピアノを弾く

 僕はピアノを弾いていた。


 ピアノは、僕の手の動きに合わせて鳴っていた。なんでも、あるジャズピアニストは死病に取り憑かれても尚、ピアノの前に座るのを止めなかったそうだ。ピアノを弾きながら死ねたら、万歳と言った所だろうか。


 窓の外には雨が降っている。雨は三日間降り続いている。


 世界はこのまま、水浸しになるのかもしれない。ふと、そんな事を思う。


 世界が終わってしまえば、僕はどうすればいいだろう。もし一人だけ残されたら。


 ノアは動物を載せて、舟の上に残った。僕がノアなら、船上から身を投げて死んだだろう。


 それにしてもどうして神はやってこないだろうか。


 僕はピアノを弾いていた。その内に、光が射してきた。


 僕の体内に光が射してきた。僕は音そのものとなっていた。もはや、僕はリズムであり、打楽器であり、メロディであり、川の流れだった。


 僕は弾き続けた。そのまま長い時が流れた。


 やがて、外には陽射しが出てきた。方舟は現れなかった。神も現れなかった。ただ、僕はピアノを弾き続けていた。外には晴れ間が……雲が見えた。雲は風に流されていた。雲はどこまでも雲らしく、空はどこまでも空らしい。


 僕は再び、ピアノに手をつける。


 …神が現れるまで、僕はピアノを弾いていようと思う。それまでの間、僕は一つのリズムとなる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ