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家庭訪問



7月3日


今日は、家庭訪問だ。

授業は、午前中だけで、午後から、家庭訪問をする。


今日の初っ端は、ゆうただ。


ゆうたの家は、学校から近いので、歩いて向かう。


道の途中で、見たような子供を発見する。

1時間前には、下校したはずのゆうただ。

ゆうたは、途方にくれたように、立ち止まっている。



「ゆうた、なんでここに、止まってるの?」


「せんせー、

 ここから、先に白線がないから、困ってたんだよ。」


「あー、白線しか、歩いちゃいけないやつか、先生も、子供の頃、やったわ。」

ちょっと、なつかしい。


「白線以外は、うみなんだよ。白線からおちると、ワニにくわれるんだよ。」


そうか、それはこわいな。白線以外は歩けないな。


「じゃあ、先生が魔法をかけてやる。この先は、白いところが海だ。白くないところを歩け。」


「せんせー、魔法なんてないんだよ。」と、ゆうたがニヨニヨする。


さっきまで、白線以外が海だったヤツの発言とは思えないな。

お前につきあった先生のうぶな心を返せ。




**




「先生、しってる? 学校の前の階段は、3段目と、8段目は、歩いちゃいけないんだよ。

 3段目はネエ、トカゲが死んでて、8段目は、バッタが死んでたから、歩くと呪われるんだよ。」


ほう、呪われるのか、HP回復しないヤツか?

先生は、酔った翌日、回復しないぞ。


これからどんどん、夏に向けて、セミとか死んでそうだから、

そのうち、全段歩けなくなりそうだな。


「せんせー、

 せんせーにだけ、とくべつ、ちかみちをおしえてあげる。」

こっち、こっちという。ちょっと、かわいいので、ついていく。


民家の植え込みの間を指さし、「ここから、入るんだ。」と、どや顔で言う。

いやいや、それ、住居侵入だから。


「よそんちの庭を通ったら、ダメだ。」というと、せんせいは分ってないという。

いやいや、分ってないのはおまえだ。


「しょうがない。第2ルートをつかうか。」と、ため息をつく。

雑貨屋と、隣の空き家の間を通れという。子供なら、通れるが大人はつらい。

ここまで来たらしょうがないと、ゆうたにつきあって通る。


おかげで、家庭訪問先のゆうたの母に、髪にクモの巣ついてますよと、指摘される結果となった。


おまけに、ゆうたの近道はちっとも近道ではなかった。

変な道を通ったと言うだけで、思いっきり遠回りだった。


小学校低学年には、方向感覚、距離感ともに、育っていないことを痛感した。

小学生の言うとおりに進んではいけないと、肝に銘じた一日だった。



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