私達の答え
「ゲッ!まだあと100枚も残ってんのかよ」
「…あと1週間……」
「はあい。お疲れ様。コーヒーどうぞ」
「今週末は最後の夏祭りで・・・まず制作は不可能だから、今日と明日が勝負だな…おっサンキュ」
「はい。ゆね用にお砂糖たっぷり持ってきたよ」
「……ありがとう…」
「1杯、2杯、3杯……って、ユネ…おまえ5杯も砂糖入れるのかよ!そりゃもうコーヒーとは別の飲み物だぞ」
「琥珀ったら、今頃気がついたの?もう慣れちゃったよ私なんか」
「…ごめん……」
「良く混ぜろよ。混ぜ方が足りないと底の方でこうザラっとさあ…いや、それは俺か?俺が…か?」
「俺がって……琥珀はブラックじゃない?」
「いや、だから…砂糖を入れてさ、こうスプーンでくるくる回して……って俺じゃない俺なのか?」
「俺じゃない俺って?」
「……生まれ変わる……前の琥珀…」
あの日以来、私達は努めて明るく振舞い、努めてその話を避けてきた。
私達は死んだママの幼馴染である翔子さんと、その子供2人の生まれ変わりではないか?と……
3人でずっとモヤモヤしていた気持ちに対する答えがそれだった。
だからと言って確証はない。
私の描くヘカテの翼と湧泉音が砂糖を5杯も入れるコーヒーと、そして琥珀のデジャブ。
あとはこの前の火事で思い出した共通の記憶と、炎に対する恐怖。
それだけから導き出した微かな答えだ。
そんなことあるわけがないと否定されたらそこまでのものだし、またそれ以上突き詰めてもハッキリした答えが出るはずもない。
だから忙しさにかまけてそのままになっていたのだ。
琥珀はもうそれ以上知らなくてもいいと言っている。
知りたくないわけではないが、だからと言ってそれに囚われて人生を生きて行くのは馬鹿馬鹿しいと。
「俺は自分を信じちゃいるけど、この先の俺の人生を信じてるわけじゃないんだ」
弱い人間だから、生まれ変わりと言う事実がこの先影を落とさないとも限らない。
そうも言った。
琥珀が自分を弱いと言ったのは初めてかもしれない。
影と言うのはどう言うことなのか、と聞きかけて止めた。
聞けば恐らくこう言うだろう……
だから上手くいかないんだと、全てをそのせいにして言い訳ばかりになりそうだと。




