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天に花の如く舞い  作者: ひよこ
忘却の河
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海を目指して

私達3人が揃うと琥珀がいつも1人で喋っては自己完結していく。

それに時折私が反論するのもいつものことで、湧泉音が口をはさむことはあまりない。

転校しそんな2人と居る居心地の良さを捨ててから、一層孤独になりはしたが、自分のことを誰も知らないと言う自由さに何処かホッとしたのも事実だ。

                      

幼稚園から高校の途中まで一貫教育の学校に居た時は、お互いに知っている安心感もあった。しかし、同時に周りがイメージした自分の枠をはみ出ることも出来なかった。

もどかしいと心のどこかで思っていた。

では、どうしたかったのか?と問われても答えは出ない。

だから、湧泉音が空になったミルクのグラスを回しながら、何故ここに居るのか?と言う疑問を私に投げかけた時、かつて自分自身がいた深い心理の海の底に今、湧泉音がいるのかもしれないと思ったのだ。

何のために生まれたのか?と言う自身への問いだ。

                        

「シッカ、あんまり悩むなって!今を生きろよ精一杯」

ぐずぐずと思い悩んでいる私を見かねて琥珀がそんな言葉を私に投げかけてきた時がある。

「お前の人生を誰も代わりに生きていくことは出来ないんだぜ。でも助けることは出来る」

ただ助けに行って、一緒に溺れるわけにはいかないから、まず泳ぐ前にきちんと準備運動しておいてくれよ、とも。

琥珀なりの優しさと人生訓だ。

                           

カナヅチだから、はなから海には入らないと答えた私に、浮き輪でも舟でも使ってとにかく海に入れよ、と言い放った。

    

「半径1キロ以内の人生で終わるなよ。つまらねえだろ、せっかく生まれて来たってのに!海を目指せ!指切りげんまんな!」

琥珀の言う海とは人生のことだ。

浮き輪や舟は生きていく方法と言うこと。

そんな琥珀とのやり取りは私が無事に高校を卒業するまで続いた。

海を目指す約束を守れたかどうかは解らないけれど、デビューが決まって直ぐに電話をくれたのは、琥珀自身が自分の言った言葉に責任を持とうとしていたのかもしれない。

               

そのおかげで、海に漕ぎ出す方法を見つけた私は、何とか今のところは遭難も難破もせずにいられる。

但し、たった一人の航海は、物凄く辛くて心がすくむ。

時折くじけそうになる、そんな自分との戦いなのだけれど。

琥珀がしてくれたように、湧泉音に対して私も出来ることがあるだろうか?

そんなことを琥珀に聞いたら、自分の舟に乗せてひっくり返るのがオチだと言われるかもしれない。

ゆねはせいぜい泳げて25mだと、笑うだろうか。

     

湧泉音は相変わらず黙ったまま、杜を見つめている。

「帰ろうぜ。腹減ったよ。ほら」

握りしめていたキーホルダーを琥珀は私に差し出し、少し怒ったような眼差しを向けた。

「お前、これにインスピレーションを得て中学の時、絵を描いてたよな?まだ完成してないのか?」

「うん…まだ。何かが足りない」

「その何かが足りないって言う絵に題名はあるのか?」

「ヘカテの…翼」

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