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孤独が好きな少年の見ている世界  作者: 竜神早音
孤独が好きな少年の見ている世界 -1-
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1-5

 真っ暗な雑木林の中に一人小さな子どもが明かりになるものを持たず道無き道を歩いていた。


 ここにアイツが。やっと見つけたわよ、一族の仇。


 誰もいない雑木林に小さく呟かれる言葉。何かに気が付き、立ち止まった。


 ……結界。でも、この程度の結界なら通れる。


 何もない空間に手を伸ばした。

 空間に波紋が生まれる。

 波紋が生まれる中心に小さな穴が開く。


 開いた。結界にしては脆すぎる。誘われている?


 徐々に見えない壁が崩れていく。子供一人分くらいの大きさの穴が出来上がっていた。一歩前に出る。穴が消える気配はない。さらに一歩前にでた。何も起こらないことに不信感を抱きながらも、一歩、また一歩と踏み出していく。


 誘われているわけじゃない。この結界は元々、この程度の固さなんだ。なら、この結界の役目は…侵入者の感知程度の可能性が高い。ならば、優先するべきことは、すぐにでもここから離れて、姿をくらまさなければ。


 まだ9月の生暖かい風が吹く。暗い雑木林の木々の隙間から月明かりが差し込む。

 灰色の布一枚で全身を覆い隠していた。ただ、人の子供ではない形をしていた。頭当たりに尖った『何か』と背中にリュックでも背負ってるかの様な膨らみがあった。頭の『何か』はピクピクと動いている。顔を上げ、呟いた。


「復讐の時間の始まりね」


 まだまだ幼い少女の声だった。




 太陽の幕が降り、月の幕が上がる。残念ながら今夜の空は雲が多く月の光は照らさなかったが。

 そんな暗い夜の町、長い髪の少年が腰を掛け力なく足を空中でブラブラしていた。少年の横にはフェンスに持たれかけている物がある。

 下を見れば広がる町並と赤い火の玉が何かに衝突し爆発している。


「あ、忘れ物とかないよな…あとで見に行っておくか」


 今少年のいる場所は学校の屋上だった。夜の町の景色を見ながら時折下のグラウンドを見る。正確には、グラウンドの先にある正門を。

 その少年は急いで買い物に行き、急いで晩御飯を作ったことでの疲労の表情が出ている。そして、この町で唯一、髪の長い男である雷だった。


「あぁ、体が重い。どうせここまで来る奴いないだろうに」


 最後の言葉はただの愚痴のようにこぼす。

 夏の夜、特有の湿り気のある空気が流れる。彼の長い髪がなびく。

 どこからともなく声がした。


「主、大丈夫ですか?だから、家で休んでいてもいいと頭首(おじいさま)が仰ってましたのに」

「なんていうかなぁ、嫌な予感がするんだよなぁ」

「嫌な予感ですか?」

「なんていうかね、直感っぽいものだよ」

「でも、毎晩毎晩同じことを言ってませんか?」

「仕方ないだろう…そもそも言霊程度じゃここに来る前にみんなに消されちゃうし」

「ですが、主、近くにいます」

「ふわぁ…あ?あと5秒で消えるから問題なーし」


 言霊…黒いラグビーボールの形をしたものを指している。言葉というものには力がある。その力が増大していくうちに黒いモノに変わる。さらに力を得れば、人型になり周囲の人間を襲う。そうならないように雷や雷の家族達が総出で町を見回り見つけ次第消滅させていく。もちろん危害を言霊の場合もあるが、どちらにしろ良い言霊とは言い切れないため有無言わずに消す。

 そして、宣言通り5秒後にまたどこからともなく声が発せられる。


「主の宣言通り、言霊消滅しました」

「ここに堂々と来てほしいわけで、どこからともなく現れる言霊じゃ話なんない」

「主は強敵をご所望なのですか?」

「違うよ。たださ、みんなが走り回ってるっていうのに俺だけがここでポカーンってしてるわけにもいかないじゃん」

「なぜそう思ったのですか…主は強いです。だから最後に守らねばならないところを任せられているのですよ」

「わかってるって」

「そうですか?」

「そうそう」


 面倒くさそうに答える。

 ふと思ったのか、「あ、そうだ」と喋る。


「ここまで来る奴がいないわけなんだから、人の姿になってもいいんだよ」

「それは不可能です。確かに今現在は危険性は少ない。ですが、もし危険性が上がった場合この形になるまでの時間でどれだけ危ない目にあうか考えてのことですか?そもそも、私は人のすが」

「あー、わかったわかった。長い長い。もういいよ、勝手にしなよ」

「ありがとうございます」


 誰もが一瞬という時間を気付けずに過ごすだろう。雷もその一人だ。どこからともなく聞こえる声の存在は全く違う。一瞬という存在をどれだけ恐ろしいものかを捕らえている。

 つまり、知っているのだ…一瞬がどれほど怖いものかを。


「なぁ、俺は一般人なんだ。そう思ってる」

「はい」


 唐突な問いかけにも動揺のない、落ち着いた声が聞こえる。


「だから、俺はお前の一瞬ってのがどれだけ命取りなのかをわかってないんだ」

「はい」

「攻めてるわけじゃないんだけどなぁ。なんかごめん」


 グラウンドを見ると、また言霊が現れようとしている。

 いい区切りだと雷は思う。


「絶えないなぁ。火でいいか」

「私がやりましょうか?」

「大丈夫大丈夫」


 黒い塊が生まれ、口のように真ん中が裂けるように開きかけたところでボンッと音とともに爆発した。


「自動追尾術式を改善しておいた方がいいな。生まれた直後に叩いて欲しいものだが」

「予想ですが、言霊発生と同時の発動の為ではないでしょうか」

「うーん、でもそうすると言霊の発生点の確認が」

「そうなると、これが妥協点じゃないかと」

「妥協か…」


 雷は苦しそうに言う。雷にとって術式とは自分の技を他の人間に使えるようにする一番簡単な方法だと思っている。今、町を見回っている仲間たちにだって雷の開発した術式を渡している。自分では手に負えない時に使え、と言って。

 仲間に奥の手として手渡すものを妥協で渡すのはダメだ。それこそ命の危険なときに。


「この術式は渡せないな。妥協した術式なんて」

「そう…ですね」

「とりあえず、じいちゃんに相談して配置だけはしてもらおう。発動すれば地脈の力を利用するものだし」

「はい」



「おやおや、意外と間抜けなんだね」



 どこからとも無く声が聞こえた。それはさっきまで会話していた声とは全く違う、そして性別のわからない声だった。

 雷は隣に置いていた刀を手に周囲を窺う。構えは子どものチャンバラのような、隙だらけの構えである。

 一部を除くが雷は一般人だ。だからこそ、刀の構えなんてものを知らない。それらしく構えることだけが、今の雷にとって限界の型だった。


「だ、誰だ?!」

「そうだなぁ、簡単なヒントを上げよう」


 少し間が空き、また声が聞こえる。


「自動迎撃装置だっけ?あれ、大した事無いんだねぇ。これに反応しないなんてね」


 クスッと笑い声が聞こえ、ビクッと雷は反応する。声のした方を恐る恐る後ろを振り返る。そこには


「そ、そんな……こ、言霊」


 フェンス向こうの安全な学校の屋上、そこの中央に……いた。

 黒い人型が。


「そ、そんな。言霊の気配もないのに」


 もう一つどこからとも無く聞こえた声が動揺している。


「だって、そりゃそうだよ。この姿は」


 スッと足音無く近づいてくる。夜で見えずらく、黒色の肉体がある程度の形が見えてくる。

 女のような体系に長い髪と黒い体。細かいところまでは現れていないが、どこかで見たことがある姿だった。


「そこの君なんだから」

「…俺…なのか?」


 お互いの声が重なる。まるで双子のように。


「今までの君に対する言葉だから、少しながら参考にさせてもらったよ」

「知能を持つ言霊…」

「どうでも良いよ。人型なんて始めてだ。どれだけ強いかわからない」

「おや、そこの刀から声が聞こえるね。君が天かい?」

「…なっ」

「ははっ、さすがは俺のコピーってとこか?」

「コピー?違う違う。僕は君自身さ。なにせ君に向かった言葉からこの体は出来ているんだ」


 その言葉は彼等二人に一番不安にさせた。


「天、お前は絶対手を出すなよ。お前の戦い方を知っている可能性がある」

「あぁ、悪いけど自分自身以外の戦い方なんて知らないから、そこの刀が攻撃してき」


 いくつもの刀が音も無く、真上から一直線で降ってきた。

 刀がコンクリートに突き刺さる。黒い影は消えない。


「ふふっ。……そんな攻撃あたりもしないよ。僕を()りたいなら自分の主を()る気でこないと」

「天、これで諦めたか?」

「はい。ですが、同時攻撃を試していないので完全に、とは言い切れません」

「あはははははっ!…今の行動で彼女には意味が無いと」

「言い切れねぇよ??」


 それは誰が見ても一瞬だった。目の前に突き刺さった刀を間に挟んだ会話が背中同士の会話になった瞬間だった。

 言霊はだるそうに立ち、雷は地面すれすれを走るように腰を低くし刀を切り上げる動作に入る。

 言霊の顔に当たる位置に口のように薄く開く。雷は真一文字に口を閉ざし、刀が地面を切り裂き、言霊の背中に触れる。


「最後まで言わせて欲しいね…じゃ、僕風に影縛(かげばく)

「チッ、やっぱり使ってくるか!」


 黒い鎖が刀に巻きつき、雷の手足も動けないように縛られる。

 余裕があるようにゆっくりと後ろを振り向く。薄く開いた口に当たる部分あ人で言えば笑っているようにも見えた。


「もう、おしまいかい?斬りつける以外にもやり方はあっただろうに」

「本当に術が使えるかどうか知りたかっただけでね。『術技(じゅつぎ)水刃(すいじん)』」


 刀身に一気に水が集まり覆う。


「知っている技は意味が無いものだね」

「本当に?」

「あぁ、この後に飛んでくるもの全部考慮すればね」

「爆」


 刀身を覆っていた水が爆発し水が散弾のように撒き散らす。回避できるような攻撃ではない。それも刀身と言霊の体が触れそうな距離だ。


「天っ!」

「はい!」

「なめるな」


 もう一度刀が上から降る。


「君と同じのを使いたくないけど、『術:(えん)』」


 足元から黒い小さなものが上へ、天の作り上げた刀を打ち落とす。


「天っ、まだいけるなぁっ!」

「もちろんですっ!」


 コンクリートに突き刺さった刀が浮き上がり弾き落とされ、在らぬ方向へ向いた刃が黒い体を向く。

 水刃の爆弾のおかげで拘束から抜け出し、斬り上げる。


 幾本の刀が黒い体を貫く。そして斬り上げた刀は斬りかえしで上段から振り下ろした。


「手応えのある戦いをありがとう」


 黒い塊が霧散していく。

 刀が淡く光り、徐々に人の形に戻っていく。

 雷は初めての、本気とは言えないが、真面目に戦えた満足感と興奮で手足が震えていた。

 雲に隙間が現れ、月明かりが射す。

はい、皆さんお久しぶりです。早音です。


いやぁ、寒くなりましたねっ!23,24は寒かったですっ!

あと正直言うなら今、風邪引いてるかもしれないです。


さて、話は変わりまして。えっとですね、書いてましたらね、「分割にした方がいいかも・・・あ、でも少ない。じゃ、追加するか。」というのが今回の話になります。


 本来、ここであーだこーだって話しますが、ないので終わりますね(ネタ切れ)

では、みなさん。よいお年をっ!


 ある程度書いた話をぶっこ抜きで書いてると、サブタイ決めるの難しいなぁ。

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