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月明かりが照らす世界に動く影が2つ。一つは犬のような影。もう一つの影は一本の日本刀を振り下ろそうとしている人影。日本刀が月明かりで淡く光る。見ても怯みもしない、もう一つの生き物の影。
少しでも人影に隙があれば、今にも襲い掛かろうとする雰囲気に、たった一つの人影はぼそりと呟いた。
「ごめん」
子供の声だった。その言葉が届いたのか、痺れを切らしたのか人影に襲い掛かる。
人影が手に持った日本刀が振り上げられた。その動きは掛けられた言葉とは相反する躊躇いのない動きだった。躊躇なく斬られ、頭と胴体に分かれた間から液体が大量に飛び散った。2つの物体がベチャリと音を立てて地面に落ちた。
間もなくすると死骸は土が崩れるように罅割れ、最後には砂ぼこりのように粉になり風に流され、恐らく血だった液体も地面に撒き散らして間もなく、同じように粉上になりその場に残ったのは人影だけだった。
「…うぅ」
人は俯き、静かに嗚咽を漏らした。
★
一般家庭にある6畳ほどの和室。そこで目を覚ました。主に暑さのせいで。
昨夜は遅くまで外出していたから疲れているだろうと思ったが、疲れを超す暑さに敵わなかったようだ。
暑い。クーラー付けるか。
先ほどまで見ていた嫌な夢を思い出した。
「…嫌な事ばかりだ」
体を起こし一箇所だけを見つめる。今日着ていく服とその下にある鞄。そして鞄の横に落ちている学生証。
重々しく立ち上がり学生証を拾う。そこには線の細い色白の少年、腰まである綺麗な黄色の髪、左目を隠すように伸ばしている左前髪、少女的な印象を与える体系の写真とその横に名前である『蓮田 雷』と書かれていた。
服が掛けてある横にある姿鏡。そこにはボサボサの髪の毛をした同じ顔が写っていた。
「主、おはようございます」
いつもの寝起き姿に面倒そうな表情を浮かべていると抑揚のない声が聞こえた。声のした方を見ると肩まで伸ばしている黒髪に近い茶髪の白衣に緋袴を着ていた少女が櫛とドライヤーを手に持って入って来た。
雷が2つの持ち物を見た瞬間に嫌な顔になる。
彼女の名前は天。苗字はない。理由は蓮田家にある。この科学文明が栄えている中でのオカルトな話だが、実際に目にしてしまうと本当なんだなって思う。
まず雷の暮らす宮上町では宮上神社と呼ばれる神社がある。蓮田家はその神社を管理している家系である。蓮田家は代々霊媒師の力がある。彼女は蓮田家の先祖、八神家が作り上げた武器の精霊であり、八神家、蓮田家は代々この精霊と契約をし、この町を守るのだそうだ。
そう甲斐甲斐しく世話をしてくれる彼女は雷と契約した武器の精霊だ。
「主、少しは髪を大切にしたらどうですか?それと自分で起きてください。私の仕事が進みません」
「はっ、女子じゃあるまいし。それに長くしたいくて伸ばしてるんじゃないんだけど」
天は雷の後ろに回り髪の毛を梳く準備を始める。仕方なしに観念して髪を差し出し天を見た。外が熱いのがわかるくらい汗をかいていた。天の髪が汗によって顔に引っ付いていた。
コンセントに差し込む音が聞こえる。ドライヤーのスイッチが入り、寝癖を直す作業に入った。
よく見ると服に汚れている。神社の掃除中だったようだ。
天に背を向け、色々と視線を動かすと自然と一ヶ所に視線が注がれる。
「あのさ、天。仕事を途中で抜け出した上に髪の手入れまでしてくれてありがたいんだけど」
「はい?」
「もう行かないと学校遅刻しそう」
すぐ側に置いてある目覚まし時計を指差した。午前7時45分。
9月1日、始業式。8時30分から始まる。ここだけ聞けば、まだ大丈夫のように聞こえるが、家から学校まで30分。体育館に全学年集合するためか、クラスごとに移動する時間が決まっている。
つまり、ぎりぎり。
宿題は前日にはちゃんと終わっているかを確認済み。鞄にも入れてある。いざとなれば、朝ごはん、着替えの最低限の行動で家を出られるように準備済み、のはずが。
「よ、よりによって、最初から最終手段の、それも朝飯抜き状態なんだよ・・・」
文句を言っている暇はない。慌てて天を部屋から出し着替えを済ませ、玄関に大急ぎで向かった。
「くっそー!なんで玄関が遠いんだー!」
それは先祖が昔ここを収めていた人で、とある事情から村人から神として崇められた。その話が近隣の村や町に広がり、気づけば社が建っていた、と言うことらしい。家の形は「占」と言う字に似ていて、「一」の一番端に雷の部屋がある。「ロ」のところは祭壇のある場所。しかし、雷の家は規模がおかしいのだ。祭壇のあるところが小さく居住区があまりにも大き過ぎるのである。これにも理由がある。
「あれ、雷にーちゃん。遅刻なのかー?」
少し間延びした声。弟ではない。兄と妹はいるが弟はいない。この家は孤児院の真似事をしている。孤児院をしているのではなく、真似事だ。祖父が孤児院から子どもを引き取り、この家で育てる。自分の力で生きていけるようになるまで祖父は援助するかわりに、俺達の仕事を手伝ってもらう。
「暁よ、わかってるなら引き止めるなー」
そんな複雑な関係であっても家族と思って接している。それに引き取った子どもは他に何十人もここに住んでいる。こんな時、いつも思うことがある。
良い兄貴分になっていればいいんだけど。
とりあえず遅刻しないように走って玄関へ向かう。他の部屋の子ども達が起きる気配を感じた。
声をかけられる前に急がないと確実に職員室への呼び出しは確定だった。
「あ、主。今日、帰宅は何時ぐらいになりますか?」
もう!急いでるのにっ!天の奴っ!
声のした方に粗らしく振り返る。綺麗に梳いてくれた髪が荒々しく揺れた。
「今日は始業式だけだから・・・えーっと・・・昼過ぎくらいっ!」
「わかりました。それでは、いってらっしゃ」
「らああいいいにぃいいいいいいっ!!!!」
「げっ!」
少女の声を聴いた瞬間だった。櫛とドライヤーを見た時以上に嫌な顔をしたと雷は思った。
急いで玄関を目指し、ある部屋から逃げるように走る。
「ちょっ!雷にい、逃げな・・・・・・ゴフゥ」
後ろで床に叩きつけた音が聞こえた。それと、聞いてはいけない悲鳴のようなものも。
「鈴様、下着だけで外にでようとするのはやめましょう?」
「ちょっ!天っ、頭、押さえなくても!」と叫んでるのが聞こえた。天が頭を押さえて、動きを止めているようだ。
ナイス!
「ですが、鈴様?背中触られて変な声を出すのであれば頭を押さえるしか」
「だとしても!頭を押さえるより・・・ってなんで馬乗りに!?」
「お年頃ですから、隠すついでにです。しかし、主の妹ですね。寝起きが上半身裸というのは」
朝から騒々しい我が家。
「てーん、ほどほどになー。」
あまり強くしすぎると後でお叱りが来るので手加減することだけは伝えておく。
「わかりました」
「わかりました、じゃないってばっ!ちょ、雷にい、助けてよっ!」
「あいにく時間がもう無いの!」
「えええええ」と声が聞こえたが無視だ無視。時間が無いんだ、仕方ない。
玄関から皆の部屋まで遠い。だから居住スペースを出たところで大声で言う。
「いってきまーす!お前らも、遅刻するなよーっ!」
顔は見なかったけど、元気いっぱいな子ども達の声が耳に届いた。
これだけ元気があるなら、大丈夫そうかな。
長い髪を揺らして少年は急いで家を出た。
九月一日、金曜日。始業式。
校長、生徒指導主任の話を聞いて、教室に戻り担任が軽く喋る。それが終わると、夏の課題の回収やこれからの連絡を伝える。
今は教室で担任が最後の連絡を言うところだった。
「はい、じゃあ、最後の連絡な」
テキパキと話を進めていく、担任の佐倉先生。
「転校生だ。今日から仲良くしてやってくれ。それじゃ、入っておいで」
教室の扉の方を向きながら、廊下にいるのであろう生徒に話しかけた。
多少、教室がざわめく。転校生なんて珍しい。まして、高校となるとなかなかいないはずだ。
「は、はい」
緊張して声が上ずった声が聞こえた。どうやら声の主は女子らしい。
ガラガラと教室の扉が開く。
教室に入ってきた、女生徒は当たり前のように制服の夏服を着ていた。そして雷の様に腰まで伸びている髪。違うところは前髪とツインテールに髪を束ねているところ、あとは茶髪くらい。
ただただ普通のその姿を見たクラス全員は、一瞬で固まった。
クラス全員が固まったのを見た転校生は、「え・・・えぇ・・・」と言いながら慌てふためていた。
「さてと、これから同じクラスで過ごす、愛宕楓香さんです。さ、自己紹介どうぞ」
クラスの様子を気にすることなく淡々と話を進めていく担任。
佐倉先生は教師らしくない教師。噂では、よく御偉いさんに呼び出しをもらって説教をされるらしい。ただ、教師としての能力が高いためか、教師をやめさせられることはない、という。前者は噂だけど、後者は確かだ。実際にこの目で見てしまっているから。
「先生っ!?皆、止まってますよ!?」
「いいの、いいの。こっちも早くやることやって帰りたいんだよ」
そう、噂の呼び出される内容はこれ。この性格が教師になると、教室の座席も自由、どこに座ろうが文句を言わない。それでも、実力がすばらしいのか佐倉先生に教えられた生徒は少しばかりだが全体的に成績が上がっているそうだ。
「先生、皆を戻してからじゃないとまた怒られますよ」
転校生だけで固まるのもどうかと思うけど。確かにすごくかわいいけどさ。
「んー、蓮田が聞いてるから大丈夫だろ」
「一人だけですか!私の自己紹介は一人しか聞いてくれないんですか!?」
人形のような整った顔立ち。そこまで身長が高くなく、守ってあげたい感が強い女の子だ。
でも、こういった奴は面倒なタイプだからできるだけ関わりたくない。
「俺も空、見てるんで周りが戻ってからにしてください」
窓の外を指で指して対応する。
「おいおい、蓮田。その態度はダメだろう?転校生悲しむぞ」
「私は先生の対応に泣きたくなりそうです」
「ま、冗談は置いておいて。お前ら、いくらなんでも固まりすぎだ」
パンパンパンと手を叩く音がした。それと同時に頬杖をつきながら窓の外を見る。今日は遅刻ギリギリにも関わらず窓側を取れた。時間が正しければまだ9月。まだまだ窓際は暑い。
「はいはい、お前ら、転校生の話を聞いとけよー」
「・・・今から面白い話するぞー、みたいに言わなくても。うー、もう良いです。吹っ切れました」
黒板のほうを向く。そして、チョークを手に名前を書き始めた。
チラッと黒板を見た限り、とても珍しい名前だ、と思った。
「愛宕楓香です。よろしくお願いします。えっと、細かいことは放課後にでもお願いします。最後に」
すぅ、と息を吸う音が。
「雷ちゃーん、久しぶりー!」
それほど大きくない声で。でも教室全体に響き渡る声で名指しされた。
また、周りが固まるのを感じ取れる。
誰かが近づいてくる気配もある。
気配のあるほうをチラリと見ると、いつの間にか転校生がそこにいた。
「・・・はい?」
あまりの状況に固まってしまう。
「ふふふ。久しぶりだね、雷ちゃん!」
ニコニコと笑ってこちらに話しかける。
「え・・・えーっと誰?」
首を傾げた。左目が見えそうになるのを雷は慌てて左手で押さえる。
「え・・・だって君って蓮田雷だよね?」
「そ、そうだけど」
いきなり本名を呼ばれ、驚く。
「なら、あってるじゃないっ!あれ、待って・・・雷ちゃん、私のことを忘れた?」
「いや、忘れたもなにも会ったことあった?」
左目にかかる様に前髪をなおす。
「嘘でしょ?だって雷ちゃん、10年ちょっと前だよ?」
「憶えてるはずがない」
「むー」
いかにも怒ってます、と言っているかのように頬を膨らます。
なんだ、このあざといの。そもそも俺の幼少の記憶はこの町から忌み嫌われていたことしかない。話しかけられれば、暴言か暴力のどちらかしかなかったのだから。
「全く仕方ないわ・・・」
「・・・・・・あ・・・え。蓮田君ってその子と知り合いなの?」
意外と意識が戻ってくるのが早かったクラスの女子が話しかけた。
「んー。そのはず・・・なんだけど」
雷を見下ろし、ため息をつく転校生。
「蓮田が・・・かわいい女の子と・・・・・・知り合い?」
ああ、お前より俺が一番驚いてる。記憶が記憶なだけに。
雷は落ち着くために窓の外に視線を向けた。
「・・・もう・・・仕方ないわ」
すぅ。
「ん?」
息を吸う音がした。
「馬鹿雷」
「あぁ?」
愛宕の方を再び見たのは間違いだった。
女子達の声が聞こえる。
俺の時間がゆっくりになる。目が大きく見開いていく。
視界の端には口を手で覆っている女生徒が映った。
クラスの数名が口をパクパクと魚のように動かしながらやっとのことで出た言葉は名前を呼ぶことだった。
「あ、愛宕さ、ん?」
「あ・・・お、おい?」
周りは今の状況を理解し口に出そうとしている。
雷も声は聞こえている。でも、視点が他の生徒達に行かない。目の前の顔に雷の視線は向いていた。
顔が近い。今日はじめて会った顔がすぐ側にある。彼女の手が俺の顔を押さえる。口の中に何かが入ってくる。
頭が真っ白に・・・
「ふぅ・・・思い出した?」
顔が離れていく。艶かしく唇を舐めながら。
「・・・・・・お、お前・・・」
「んー?」
小首を傾げる。
「い、今何したよ?」
「え、キス?」
「愛宕ー、あまり面倒事は起こさないでくれよ。後が面倒になる」
先生の注意が聞こえた所で彼女は手を離した。
「はーい」
「教師なんだから、もっと強めに言えよっ!」
「恋愛するしないはそっちが決めることだからなぁ。問題さえ起こさなきゃ、大丈夫さ」
誰が言ったのかわからないが先生に文句を言っていた。
教師の対応としてどうかと思うが。
「き、キス。やっぱり、キス?」
「本人が言ってるし。蓮田君のあの真っ赤な顔を見れば」
近くにいた女子二人の会話が聞こえてくる。
「おお、おおお、おお、前。ななななななな、何して、」
「だって、最後に会った時もこうしたじゃない?」
さ、最後?俺は転校生に今日始めてあったはずだ。記憶がおかしいのか。
教室にいる顔を見て自分の過去と照らし合わせる。窓の外から見た町の風景を見て照らし合わせる。
間違っていなかった。
この教室だけじゃない。この町に住む俺の存在を認めない人達全員に。
だからこそ、否定できた。
「・・・人違いじゃないか?」
「どうして?」
「・・・気を悪くするけど、ごめんね」
俺はあらかじめに謝っておく。
「え、別に・・・」
「君じゃない。この教室にいる、皆だよ」
周りを見ると、騒いでいた教室が静まり、暖かな雰囲気が冷たく殺伐とした空気になっていくのがわかる。
「俺が幼い頃、この町からひどい扱いを受けていたんだ。簡単に言えば『いじめ』」
さらに、空気が重くなっていく。佐倉先生もずっと黙っている。佐倉先生はいじめが消えた後に来たから何も知らない。だからこそ、聞きたいのかもしれない。昔、何があったのか。
手短に簡単に、でも童話のようにやさしく語り、目の前にいた転校生を見上げる。
目の前にいる転校生も目を瞑って黙って聞いていた。
どうせ、言われることはわかる。とても驚いた顔をするに決まっている。
「うん、知ってるよ。雷ちゃんは、蓮田雷は、昔、『化物』って呼ばれてたよね」
嫌味のように微笑んでいた顔が唖然とした顔になる。
俺は昔、『化物』呼ばわりされていた。長髪、片目が隠れているから不気味。最後には根も葉もない噂。
噂は、人に伝わることで増幅する。
嘘に嘘が纏わりつき肥大化する。
「・・・雷ちゃん」
心配そうに声を上げる転校生。
その姿を見ると突然、俺への迫害がなくなったときを思い出させた。
謝りに来た人たちの中にとある少女と同じ雰囲気を思い出した。
「あー、あれか。いじめていたことの謝罪か?さっきので許してもらおうと?」
そう、あの時の少女も何でもするから許してくださいって頼み込んできた。
殴ってやろうと思った。でも俺はそこまで最悪な人間じゃない。
軽く、息を吸う。落ち着かせるために、落ち着いているように見せるために。
そして、あの時と同じように、少女に言い返したときと同じように言った。
「俺がそんな風に見えるんだとするなら、帰れ。事務的な話以外話しかけてくるな」
冷たく言い放った。反論させないために、顔を合わせない。
でも、違った。
「・・・・・・私の知ってる雷ちゃんだ。初めて会ったときと同じ」
表情はわからないけど、頬を緩めていることはわかる。
「・・・・・・」
「ねぇ、ら」
雷は先生の方へ体を向ける。
「先生、早く終わりましょう。お互いやることあるでしょう?」
何かを言われる前に会話を切り上げる。
「あ、あぁ・・・あ、愛宕さんも適当な席に座って」
「・・・は、はい」
教室の真ん中の一つだけ開いている席に座りに行った。
終礼が始まる。これで、今日の学校が終わる。
佐倉先生の話を聞かずに鞄に荷物を詰め込む。
「来週の月曜日、英語の休暇明けテストだな。連絡はコレだけ・・・かな。じゃ、解散。おつかれさま」
声が聞こえると同時に立ち、早歩きで教室を出ようとしたところで、出口付近に座ってた女子と目が合った。
「あー。えっと、蓮田君、バイバイ」
気を使ってるのを感じる。昔の嫌なことを思い出させたから。
俺は謝ってほしいなんて思ってない。あの時もそうだ。謝りに来てほしいなんて一言も言ってない。俺の存在を認めてくれる、人と思ってくれる。それだけで十分だ。
だからこそ、言う。
「気にしなくて良いよ。こっちこそ、ごめんね。それじゃ、また月曜」
微笑んで手を振り、教室を出た。
眼の端には何か言いたげな顔をしたあの転校生が映っていた。
★
知っている、あの雰囲気。なのに、どうしてかな。忘れてるのは。
「おい、愛宕。聞いてるのか?おーい」
「あ、はい。なんでしょう?」
目の前には、椅子に座った佐倉先生。頬杖をついてこちらを見ていた。
「いや、だからな。お前のご両親から連絡もらったんだけど、家のガスと電気を通すの忘れてるみたいなんだ」
「そうなんですか?でも、電話したらすぐ来てくれますよね?」
「まぁ、それが都会の場合なら、だけどな。ここってさほどほどな田舎なわけだ」
「そうです・・・ね」
「電話してもすぐに来てくれないんだわ」
「はぁ。じゃ、電話したら明日には来てくれるってことでいいんですよね?」
「運が良ければだな」
ここは田舎といえば田舎な場所。だからと言って、すぐに来れない、と言われるほど田舎ではない。私からすれば田舎だけど、もっと田舎な場所から見れば都会と言われても仕方ない場所。
「まぁ、あれだ。年頃の女の子がそんな状況の家に行くのはどういうものか、とご両親が心配なされてね。どうする?」
「どうするとは?」
「女の先生の家に泊まるか、とか。蓮田の家に泊めてもらうとか、じゃないか?」
この人はさっきの会話聞いてなかったのかな。キスまでさせておいて思い出さないってのはちょっと、あれだけど。
正直なところ、一番私が恥ずかしいと思う。だって、転校してやっと見つけたと思ったら忘れてるなんて……あー、もう、思い出しただけでムカムカしてきた。
どうやら、彼女にとって「むー」はそこそこの怒りを表していたらしい。
「さっきの事思い出してモジモジするのは勝手だけど、家の件どすんの?俺以外の先生に頼むなら今しかないぞ」
「んー……やっぱり、自分の家にします」
「いいのか?それこそ、愛宕が好きな蓮田のところにいけばいいじゃないか」
「でも……」
「事務的な会話じゃないか。家の都合でって言えば」
「私の予想が正しければ、即断ると思います」
「そりゃ、いきなりあんなことされたらそうなるよ。ま、少しだけ待って。連絡するからさ」
ポケットから画面を触れて操作するタイプの携帯電話を取り出して電話を掛けた。
たぶん、雷ちゃんの家に電話してるんだよね……はぁ。すぐに断るだろうなぁ。
「……すいません、無理をいってしまって……はい、それでは失礼します」
そう言って携帯をポケットに戻しながら言った。
「いやー、蓮田がまだ帰ってなくて良かった良かった。愛宕、大丈夫だってよ」
「え?いやいや、おかしいでしょ。朝の」
「蓮田のじいさんが出たんだよ。あと、まだ蓮田が帰ってないから早く帰ってこいっていう伝言もついでになさ頼まれた。あとはあいつの家までの地図書いとくぞ」
「あっはい」
ついつい、返事をしてしまった。というより、勝手に話が進んでる。あーあ、雷ちゃんには嫌われたかな。もうすでに嫌われてるか・・・。
心の中で力なく笑う。
私の返答を聞かずにして、机に向かってメモ用紙に地図を書き始めた。
「ほら、ここが蓮田の家だ。送ってやりたいんだが、そろそろ会議の時間だからな」
「早く帰りたいんでしたっけ・・・すいません」
「いいんだよ。言ったろ、やることやって帰りたいって。ほら、早く行った行った」
「佐倉先生、そろそろ会議始めましょうか」
向かい側に座ってる女教師が時計を見ながら言った。
「あ、じゃ、これで。失礼しました」
「おう、気をつけて」
「さよならー」
向かいの女教師と佐倉先生が軽く手を振った。
そのまま職員室を出て下校することにした。
「えっと・・・学校を出て左に行って。……結構遠い」
地図を見ながら嫌われてしまった彼の家に向かうことにした。
9月のまだまだ暑い外を歩いて行く。
「まぁ前住んでいたところよりは涼しいかな」
はい、お久しぶりです(1年半ぶりでしょうか・・・)。恥ずかしながら小説初心者です。ただ、投稿したことはあります。前の作者名は「八神 ハヤテ」(前作の名前は「二つの世界」でした。パッとしない名前でしたね)だったかな・・・。ええ、馬鹿やろうって思いました。そういう理由もあって作者名をちゃんっと考えてこうなりました。「竜神早音」です。あんまり変わってないですが、お許しください。これが限界なんです。では、軽くお話を。
11月の最初の方で軽くですが、進行状況等をしましたが・・・修正や付け加えを行った結果・・・もう12月の半ばです・・・。
もうしわけないです。
冒頭にも言いましたが、この小説を投稿する前に投稿した小説があります。それは消させてもらいました。理由としては、この小説を読む上で勘違いが起こってしまうというのが理由です。なので、リニューアルしたこのお話を楽しんでいただければと思います。(これだけ時間かかったのにあれだけしかいてないの?とは言わないでください・・・精一杯なんです)
さて、ここからは堅苦しい話じゃなくて、ゆるーいお話です。
自分、スマフォにしてから気付いたんですよ・・・。あれ、スマフォで編集できるじゃんって・・・。電車の中で作業できるじゃない。暇な時に出来るじゃない・・・。昔以上に作業できる時間が増えるじゃないっ!もう、自分うれしいですわっ!
といっても、オンラインゲーやらスマフォゲーやらでこうなったりするわけです。いやー、ゲームってすごいねっ!作れる時間も潰せちゃうっ!
はい、もうしわけございません。パスワードとID忘れたのはゲームに集中しすぎたからです・・・。(データ吹き飛んだのは俺のせいじゃないんだからねっ!)
ここら辺で切り上げつつ、このような短い小説の一部を読んでくれてた皆さんに感謝しつつ。次の話の修正と追加をしていきましょう。それでは次の話で。(はやくあげれたらいいなぁ・・・)
※1 あとがきは重要なことがあれば書いていく予定です。
※2 種別を短編として間違えて投稿してしまったために、再度投稿しなおしました 。(2014/12/10)
※3 会話文と地の文は区別したほうが見易いかどうか・・・次の話では区別して投稿しようと思います。どちらが見易いかで判断し、どちらかを軽く編集しなおします。
あ・・・やべ、早くしあげねぇと・・・
それでは、また次のお話でお会いしましょう。