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第30話 正義の味方と悪の女幹部、参戦する

 俺の第六感と強化外骨格(スーツ)のセンサーが警鐘を鳴らし、咄嗟にミラを抱きかかえてその場から退避した。


 その瞬間、俺たちがいた所の床がはじけ飛び、何かが飛び出してくるのが見えた。


「……マジか」


 デカすぎだろう。

 波打つようにうねる巨体はその全体を把握できないほどに大きい。

 卵を運びんだのは一週間ほど前で、計算が合っていれば孵化して数日のはずなのに、なんであんなにデカいんだよ。

 全長は二十メートルは超えているし、太さも直径一メートル近くある。


 動きから察するに蛇の魔物なのだろうが、胴体の一部しか見えないので何とも言えない。

 それでもアナコンダなんて目じゃないな。

 一体どうやってこんな馬鹿でかいのは隠れてたんだ?

 マジ、ファンタジー。


 魔物はうねりながら動き、建物を破壊している。

 建物の外に出てくるのも時間の問題だろう。


 建物から少し離れたところで抱きかかえていたミラを下ろした。


「ど、どうしましょう?あれは三級の大口大蛇(オオグチオロチ)ですよ!?」


 若干焦りを見せるミラだったが、きちんと魔物を把握しているあたり冒険者ギルド職員の端くれといったところだろう。


「そんなにヤバイのか?」

「三級以上の冒険者がパーティーで討伐するような魔物ですよ!?ヤバイってもんじゃないです」 


 見た目デカいだけの蛇に見えるが、相当にヤバいらしい。


 俺は一応戦うイメージをしてみる。


 流れ弾が怖いEM拳銃は論外だ。

 市街地戦で使えるようなものじゃない。

 特殊警棒は打撃しか与えれないため、あの巨体相手ではどうにも分が悪い。

 電磁ナイフなら通るかもしれないが、刃渡りが短すぎて有効とは思えない。

 他にも強化外骨格(スーツ)の中に仕込まれた細々とした武装があるが、どれも人間サイズの怪人を相手にすることを前提にしているので、こういった大型生物に対して有効なものはない。

 向こうで大型生物を相手にするときは別途武装を用意していたしな。


 最後はこちらでの主武装となるアダマンタイトの大剣だ。

 あの巨体相手だとどうしても見劣りはするが、手持ちの中では一番有効な武器ではあるだろう。

 まあ、ちまちまと大剣で削るしかないだろうな。


 いずれにせよ俺は六級の冒険者だし、討伐に参加義務はないよな?

 もしかして司法官のルイスとの契約にアレの討伐も含まれていたりするのだろうか。


 やれと言われたらやるしかないが、面倒な事この上ない。


「とりあえず周辺住民の避難誘導と救援依頼だな」


 現実逃避をするように目先の問題から片付けることにする。

 すでに近隣の住民は異変を察して逃げ始めているが、逃げ遅れた人間がいるかもしれない。


 それにしてもこういう事態の時はどこに報告すればいいのだろうか?

 冒険者ギルドだろうか?領軍だろうか?

 こちらの世界の警察機構としては、領軍なのだろうが詰所にでも行けばいいのか?


 こういう時に電話がないと面倒だよな。

 そうこうしているうちに、ミラが何かに気付いたようで遠くを指さした。


「見てください、領軍の兵士ですよ」


 見れば確かに領軍の兵士が小走りにやってくるのが見える。


「やけに早いな」


 やってくる兵士を一瞥して俺は訝しむ。

 こちらの世界に電話や車などないので、一報を受けるのも、現場に急行するのも時間がかかるはずなのだ。

 でも随分と早くやってきた。

 まるで待ち構えていたかのように。


「スラムは治安があまり良くないので、入り口に詰所がありますからすぐに駆け付けることはできると思うんですけど……」


 ミラも駆けつけてきた兵士を見て、眉をひそめた。


「……やっぱりおかしいですね。領軍に魔導鎧を装備した部隊なんてないはずです」

「そうなのか?」


 兵士の恰好を見れば、普段目にする部分鎧ではなく、甲冑にも似た一風変わった全身鎧を身に着けている。

 これが魔導鎧らしいが、ミラの指摘通り部隊全員が身に着けている。


「はい、なにせ魔導鎧は高価ですからね、配備するのも維持するのも大変なんですよ。普通は高位の武官が装備する程度で小隊全員に魔導鎧を装備させるなんてまずしません。ましてや魔導鎧を装備した部隊をスラムの詰所に置いておく意味もわかりません」


 確かに変だ。

 キナ臭いものを感じて、兵士たちを観察していると、到着した兵士の一団の中から隊長格らしき兵士が俺たちのもとにやってきて、俺たちを見据えて告げた。


「ここから我々が取り仕切る。冒険者は下がって我々が討伐するのを眺めているがいい」


 なんだか感じ悪い。

 兵士の威圧的な態度にミラは怒りを露わに詰め寄ろうとしたが、俺はそれをやんわりと押しとどめて後ろへと下がった。

 彼らがそう言うならお任せしよう。

 俺だって好き好んで死地に向かいたくはない。


「なんで止めるんですか。あいつら冒険者を馬鹿にしてるんですよ!?」

「仕事熱心なのはいい事じゃないか。彼らが面倒事を引き受けてくれるっていうんだから任せればいい。それよりも君は冒険者ギルドに報告してきてくれ。俺はここに残って事態を見届ける」

「……わかりました。無茶しないでくださいよ」


 それだけ念を押してミラは早速駆け出していった。

 俺が無茶するように見えるかね?

 俺は事なかれ主義なんだがな。


 ――さて、領軍のお手並み拝見と行くか。


 俺は比較的高い建物の屋上に上り、魔物と領軍の動きを観察することにする。

 建物をいくつか壊しているが大蛇にあまり大きな動きはない。

 何かを捕食したからか動きが鈍っているのかもな。


 そんな大蛇を兵士たちが取り囲んでいる。

 何か策があるのかわからないが、今下手に刺激したら暴れるんじゃないか?


 兵士たちを観察していると秘匿通信の呼び出し音が頭に響いた。

 この世界で通信してくるのなんて一人しかいない。


『はーい、なんだか賑やかじゃない。それにしてもあなたの行くところトラブル続きね。トラブルメイカーは伊達じゃないわね』


 能天気なリリーの声が頭に響く。 

 どうやらドローンで俺の動きは分かっていたようで、現在の状況も大体は把握しているようだった。


『俺がトラブルを作ってるんじゃない。トラブルが俺を巻き込んでんだよ』


 俺は抗議するが、リリーに軽く流される。


『はいはい、それで詳しい状況は?』

『例の建物を調べたら、魔物の卵を孵化させた痕跡が残っていた。恐らく運び込んだ荷物とやらはその魔物の卵だろう。そしてその魔物が見ての通り成長して暴れている』

『これはB級パニック映画の範疇ね。少なくともヒーローものじゃないわ』


 確かにクソCGのモンスターに大根役者勢ぞろいな感じの映画みたいな展開だが、残念ながら現実だ。


大口大蛇(オオグチオロチ)ってのがあの魔物の名前みたいだ。なにか情報はないか?』


 確かリリーはこちらの魔物図鑑も資料として集めていた。

 集めた資料はすべてデータベースに集約されて、いつでも閲覧できるようにクラウドで共有されている。


『ちょっと待って――ええと、データベースにヒット。大口大蛇(オオグチオロチ)は三級の魔物で、ただ単に大きな蛇って感じね。毒はなく、力が強い。表皮が堅くて強靭みたいだから、魔法で全身を焼き尽くすか頭部を狙って攻撃するのがセオリーみたいよ』


 生物は大概急所と呼べる場所があるが、蛇ってのは弱点と呼べそうなのは頭だけという戦いづらさだ。

 しかも蛇には手足がないので動きも予測しづらいし、全身筋肉の塊なため関節を狙うということもできない。


『このデカさだと頭を狙うのも容易じゃないんだよな。かと言って全身を燃やすとなるとナパーム弾でもないと難しいしな』


 対抗策を考えていると、大蛇を相手にしている領軍の兵士たちのほうがなんだか慌ただしい。

 先程勇ましいことを言って向かっていった割には、攻めあぐねているみたいだ。


『なあ、あの兵士たちの声は拾えないか?』


 小さな虫型ドローンなら兵士の近くまで行って音を拾えるはずだ。


『待って、やってみる』


 リリーがそう言ってからしばらくするとノイズ交じりに音声が入ってきた。


”おい、どういうことだ?大鎧蜥蜴(オオヨロイトカゲ)のはずじゃなかったのか?ありゃあどう見ても大口大蛇(オオグチオロチ)だぞ?”

”私には何が何だか……あいつらは確かに大鎧蜥蜴(オオヨロイトカゲ)の卵を用意したと言っていましたが”

”ちっ、使えない奴らだ。……大鎧蜥蜴だろうと、大口大蛇だろうと我々のやることは変わらん。その魔導鎧が伊達ではないことを示せ!”


 威勢のいいことを言ってるが、隊長格は後ろで指示しているだけだ。


『あ、この偉そうな奴。領軍軍団長の息子よ。親の七光りで隊長になったボンボン。ってことはこの部隊もこのボンボンの指揮する小隊ね』

『なあ、大鎧蜥蜴ってどんな魔物だ?』

『大鎧蜥蜴?ちょっと待って調べるから……ええと、草食でかなりの大型の魔物ね。大きくて力は強いけど、比較的おとなしい魔物みたいね。見た感じステゴサウルスってところかしら』

『この大口大蛇と比べてどっちが厄介だ?』

『そりゃあ勿論大口大蛇よ。危険度が段違い』


 なるほど。

 あのボンボンの口走っていた発言を遂行すると、ひとつの仮説が頭に思い浮かんできた。


『これは匂うな』

『あー、これってマッチポンプってやつかしら?』


 リリーも思い至ったらしい。

 

『ああ、恐らくこれは領軍の魔導鎧部隊のデモンストレーションだったんだろう。魔物の卵を用意して街の外で魔物を孵化させ、まだ力の弱い成長しきっていない状態で討伐できる環境をお膳立てしたんだ』

『なるほどね、この選民思想の強い連中の事だから、スラムに被害が出ても痛くもかゆくもないってわけね。それに少し被害が出たほうが自分たちの功績を誇りやすくなるって算段でしょうし』


 そこまで考えて俺はあることに気付く。


『ってことは領主の娘の誘拐も、これの前段階だった可能性もあるか』

『というと?』

『つまり領主の娘を誘拐して魔物の仕業であるかのようにして殺し、買収した”赤の剣戟”に護衛の生き残りを演じさせて魔物に対する恐怖を煽って、無能な領主に代わり軍団長は魔導鎧を装備した部隊を率いて魔物を討伐ってシナリオだ』


 どんな思惑があったのかとか、それをやることによる効果や、メリットとかは知らん。


『でも想定外なことに、領主の娘は生き残って盗賊の仕業であるとバレちゃったし、利用した”赤の剣戟”を口封じしようとしても失敗しちゃうし、用意した危険度の低い大鎧蜥蜴だと思っていた卵は実は大口大蛇の卵で、しかも成長が想像以上に早かったというわけね。……元”悪の組織の女幹部”として意見を言わせてもらうと、気の毒になるくらい計画がザルね』


 そういった悪企みに関しては第一人者であるリリーは、今回の騒動の計画性に関して苦言を呈するようだ。


『まあ大体の裏は見えてきた。あとは証拠固めと立件だが……当座の問題はこの状況、あの部隊が持て余さなきゃいいんだが』

『なんだか無理そうね。あなたの出番じゃないの?』


 俺は巨大蛇を相手に奮戦する領軍の兵士たちを眺めて吐息をついた。



 * * *



 三十分後、領軍の一般兵によって周辺の封鎖と避難が完了していたが、肝心の魔導鎧を装備した部隊による攻撃がどれも功を奏さず、ジリ貧の状態が続いていた。


 魔導鎧の出力は一般兵を凌駕するんだろうが、部隊の練度が微妙なのか、魔導鎧の扱いに慣れていないのか、全然有効な攻撃ができていない。


 俺はというと、高いところに位置取ってそれを傍観しているだけだ。

 兵士たちの戦い方が少しは今後の参考になるかと思ったんだが、期待外れもいいところだ。


 さて、これからどうしようか。

 領軍の兵士に任せておいたらいつになったらあの巨大蛇が討伐できるかわからない。

 そもそもあいつら、討伐できるのか?


 とはいえ今出て行けば領軍から邪険に扱われるだろうし、そもそも俺自身あの巨大蛇を倒す算段があるわけじゃない。

 ミラが呼びに行っている応援を待ってから対応策を考えてもいいかもしれない、などと考えていた時だった。


「お待たせー」


 そう言って現れたのは全身真っ黒なコスチュームを身に纏う、元”悪の組織の女幹部”ことリリーだ。


「いや、待ってないぞ」

「つれないわね」


 そう言ってリリーは口を尖らせる。


「さっきの通信の後からこっちに向かったにしては随分早い到着だな」

「途中でうちに出入りしているノイマン商会の丁稚のパウル君に会ってね、途中まで馬車に乗せてもらったのよ」

「へえ、で、もしかしてお前も参戦するのか?」


 そう言う彼女の恰好は普段の研究スタイルではない。

 防御力が高い例の黒いボディースーツと全身を包む真っ黒なマントの戦闘スタイルだった。


「遂に完成した新兵器の実戦試験をするには丁度いいじゃない」


 そう言ってリリーは見たことのない杖を掲げて見せた。

 歩行補助に使うような杖ではなく、長さは一メートル五〇センチほどで、上のほうにゴテゴテとして装飾のついた見た目は魔法使いが使っていそうな感じの杖だ。


「そいつが新兵器とやらか?」

「そうよ。こちらの魔法を解析して遂に完成した”魔法の杖”。これがあれば私も魔法少女って寸法よ」

「あー、余計なことかもしれないが、魔法少女って歳じゃないだろう」


 俺の指摘にリリーは無言で杖を振りかぶってくるが、俺は造作もなくその攻撃を避けた。

 リリーは追撃してくるかと思ったが、すぐに諦めて憤然とした態度で俺を見た。


「本当に余計なことね。……まあ、いいわ。兎に角この杖は一般的魔法使いが行う処理を複数並列処理できる優れものなのよ。つまりは魔法の複数同時使用が可能。しかも魔力貯蔵量も大きいので大規模魔法にも対応。今のところ使える魔法の種類は少ないけど、徐々にアップデートしていくつもりよ」


 彼女が自慢げに語るその内容は、こちらの魔法使いが聞いたら卒倒するような内容に違いない。

 こいつ、自重する気全くねぇな。


「チートめ。こっちの世界の技術に喧嘩売ってるだろ」

「あなたも十分こっちの世界ではチートよ。あなたに言われる筋合いないわ」


 そう言われるとぐうの音も出ない。


「それで?さっきのボンボンは巨大蛇を倒せたわけ?」

「お前、倒せるわけがないのわかってるくせに意地の悪い奴だな。見ての通り未だ奮戦中だ」


 そう言って下で戦う連中を指し示そうとしたところ、野太い悲鳴が聞こえた。

 何が起きたかと巨大蛇のほうを見ると、魔導鎧を装備した部隊が半壊しているのが見えた。

 どうやらド派手に巨大蛇にやられたらしい。


「あ、ボンボンがやられたみたいね」


 見れば軍団長の息子とやらが大口大蛇に噛みつかれて腕を持っていかれたようだった。

 他にも兵士の何人かが戦闘不能になっており、人数も明らかに減っていた。

 ボンボンは仲間の兵士に担がれて後退し、指揮する人間がいなくなったことで部隊も撤退することになったようだった。


「まあ、順調に領軍の兵士さん方は見事敗走したようだし、そろそろ私たちの出番かしらね」


 ミラが呼びに行った応援もまだ到着しないし、今ここにいる領軍の兵士たちに勝ち目があるとは思えない。

 無駄にボンボンたちが刺激したために巨大蛇の動きが活発になってきており、放っておけば被害は拡大するだろう。


「そのようだな。……仕方ない、仕事するか」


 俺たちは建物の屋上から地面へと降り、巨大蛇に向かって歩を進める。

 当然、巨大蛇のもとに行くには兵士たちの警戒線を抜ける必要があり、近づいてくる俺たちに気付いた兵士たちは俺たちの前に立ちふさがった。


「おい、お前たち止まれ!」


 兵士の中のリーダーらしき男が俺たちに睨みを利かすが、リリーは気にした風でもなく兵士を見据えた。


「どきなさい。私たちがあの蛇を倒すから」


 リリーの威圧に兵士がたじろぐ。

 流石は悪の組織で幹部をやっていただけあって、こういった迫力があるようだ。


「あいつらじゃどうにもなんなかったんでしょ?それともあなたがあの蛇をどうにかするの?」

「いや、それは……」


 ボンボンが敗走しているのを目の当たりにしているからか、彼らの語気は弱い。

 大勢で囲んで攻撃し続ければ、いつかは討伐できるかもしれない。

 ただそれは多くの犠牲を積み重ねてやっと手に入れられる勝利だ。

 犠牲を払う側の一般兵からしてみれば、嬉しくはない勝利だろう。


「あんたらの領分を犯す気はないんだが、流石にこれ以上はほっとけないんでね」


 俺の言葉を受け、彼は何か言いたげだったが結局無言で道を譲った。

 彼らとて、自分たちだけでは対応できないことを悟っているのだろう。

 

 俺は軽く会釈をしてから警戒線の中へと足を踏み入れる。

 リリーも俺に続き、背後を振り返って警戒線に立ち続ける兵士たちを一瞥して言った。


「ほんと縄張り意識って面倒よね。こういう時こそ協力し合えばいいのに」

「こういう時が彼らの仕事の時なんだ。仕事が横から奪われるのは気分がいい話じゃないさ」

「あら、なに?向こうでも経験済み?」

「まあ、俺のほうが奪う側だったがな」


 警察では手に負えない一件を”正義の味方”が後からしゃしゃり出てきて奪う形になる。

 それまで警察が行ってきた地道な捜査の成果さえも掻っ攫っていく形になるため、警察関係者からのやっかみも少なくなかった。

 警察には対応不可能という事実があっても、彼らには気分の良いものではなかっただろう。


 ”正義の味方”の認知度の向上や、警察関係者が”正義の味方”に出向することによって関係強化が図られることにより、徐々にだが改善されたが、それでも軋轢はなくなりはしなかった。


 大口大蛇に近づきながらリリーに声を掛ける。


「で、お前はどの程度やれる?」

「たぶん止めは刺せないわね。デカいの一発決めて動きを封じるくらいかしら」

「そうか、じゃあ動きを封じてくれれば後は俺がやる」


 そう言って背中の大剣を抜き放つと、銀色の刀身が鈍く光った。

 リリーが動きを止め、俺が大剣で頭を狙う。

 あとは臨機応変だ。


「じゃあいくわよ。私の雄姿を刮目して見るがいいわ」


 リリーが杖を掲げると、幾つもの火の玉が宙に生じ始めた。

 以前に見た魔法使いの使った火の玉よりも小さいが、明らかに温度が高い。


「いっけー」


 リリーの掛け声とともに複数の火球は巨大蛇向かって解き放たれ、着弾と共に周囲に爆炎が広がった。

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