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《君の香》前編

T「せやからね、俺女の子同士でイチャイチャしたらええと思うねん」

O「え?何?何いきなりトチ狂ったこと言ってやがるの?君?」

T「え?ここってそういう事主張する場所やないの?」

O「お前、帰れよー!」

「え~、本日をもちまして同性での婚姻が法的に可能となりました」

 ある日突然夕方のニュース番組で総理大臣がそんな発言をしたもんだから、私春日井歩の世界は変わった。


 いや、ま、前々から日本は同性愛に対して保守的だと思ってたし、海外みたいにもっとリベラルになっても良いと思ってたし、改革は必要だとも思ってた。法制化されたのが結局、選挙で票を集めるのが目的だとかそういうのだって分からなくはない。

 だけど、だからそれでその日から世界が変わるわけじゃない。相変わらず太陽は東から昇って、リンゴは木から地面に落ちる。だからって皆が皆同性愛に目覚めるわけでも、それが原因で国内の出産率が下がるわけでもない。

でも、私の場合少し状況が違った。

「ね、聞いた昨日のニュース、私マジで夕ご飯吹いた」

「あはは、マジ汚ね~。でも私達女子高だし、けっこうそういうのヤバくない」

 そう、私の通うのは花も恥じらう乙女の園、女子高。

 共学だったらたいした話題にもならないかもしれないが、女子校生徒それも多感でセンシティブな私たちにとっては昨日のニュースは刺激的だった。

今だって、クラスの窓際で一群の女生徒がそのニュースで盛り上がってる。

「そうそう、ヤバいって。マジヤバいって」

「でもアレ本気にして女同士のカップルとか増えるのかな?マジ無いってそれ!」

「チョー受けるんだけどー、あははは」

 喋って騒がしいグループはクラスでも割と賑やかで活発的な娘たち。女子高と言えばお嬢様がいて品が良いなんていう古風なイメージがあるかもだけど、入学一日目にしてそんな幻想は打ち砕かれる。彼女たちも入学時こそよそよそしく淑女の雛だっただろうけど、今じゃ他校の男子生徒と合コンして月曜日にはその結果を言い合うは当然、校則ギリギリの化粧はもちろん、スカートは短くして下にジャージを履くなんて普通だ。「あー、しくった」「え?何?」「アレ、忘れた」っていう不明慮極まりない会話だけで生理用品の貸し借りなんて日常茶飯事。

 かくいう私も…。

「ねぇ、歩はどう思う?」

 一群の中の一人が、マンガを読むふりをしていた私に向かって声をかけた。

 私はめんどくさそうに机の上にあげていた両足の上にマンガを置いて振り向く。

「興味無ぇし。女同士ってエロい事する時どうすんの?道具使うの?ヤバくない?」

「あはは、歩マジエロス!」

「私、舐めるとかマジやだから」

「あはははは!」

 どうやら私の下ネタ発言は彼女らの琴線に触れたらしく集団は大笑い。

 そうワタクシ春日井歩は、同性しかいないことをいいことに両足を机の上に投げ出しパンツ丸見えでマンガを読む、いわゆる品の無い不良なのだ。…なのだ、ではないのだけど。

「……」

 彼女たちが満足したのを確かめ、私はまたマンガに視線を落とした。ちょうどラムちゃんがいつものように浮気が発覚したあたるに電撃を放ったところだった。


 突然だが、あのような発言はしたがワタクシ春日井歩は女の子が好きだ。

 女の子の胸とお尻と細い首と細い手首と鎖骨と…。うん、自重しよう。初めはそれが変だとは思わなかった。小中学生の頃は友達の女子同士で誰々ちゃん可愛いとか、誰々ちゃんの髪綺麗とか、誰々ちゃんのこと大好きなんて口が腐るほど言ってた。

 でも、皆の好きと自分の好きが全然別の物だとある日唐突に気づかされた。

 そう思い出したくないけど忘れられない記憶。中二の秋の文化祭、大親友を屋上に呼び出し私は告白した「大好き」と、それを捕捉するように「どこが」「いつから」「なんで」なのかを思いつく限り捲し立てた。けど、結果は大親友だと思っていた彼女の戸惑いと拒絶と嫌悪感を抱いた眼差し。「ごめん」って言葉が核弾頭以上の兵器だなんて知らなかった。

 それから大親友だった彼女とは一言も言葉を交わさず中学を卒業した。この女子高に入学を決めたのは、彼女から少しでも遠くへ行きたい一心だった。――それと、女子高なら私と同じ考えの人間がいるかもという、今じゃな鼻で笑ってしまうような浅知恵だった。

 そう、浅知恵だったのだ。入学初日に「あれ?」と先輩方に違和感を覚え、一週間後には「思ってたのと違う!」と絶望した。校内にはお姉さまと呼び慕う風習も女子同士が愛を語らう風景も無く、代わりに有ったのは異性の目が無いからと共学生徒よりもだらしなくなった女の末路だけだった。

 とはいえ入学した以上、卒業までは花の女子高生として慎ましやかに野原に咲く一輪のヒナゲシのように生きようと決めていたのだ、当初は。


「あ!歩~。明日の助っ人よろしくね~?」

 放課後、カバンを担ぎ廊下を歩く私を呼び止めたのは、三年生の猪瀬美祢先輩。

 私は会釈で返す。

 助っ人というのは部活の助っ人、なんていう牧歌的な物ではない。繁華街の地下ライブハウスで明日の夜9時から開催されるライブの助っ人の事だ。私は最近人の抜けた猪瀬先輩のバンドのベースとして時々助っ人に入る。

 黒の長髪に改造していないスカートと一見猪瀬先輩は優等生に見えるが、私は知っている髪はズラだということ、本当の髪の色がショッキングピンクなこと、実は不良生徒のメインストリームを行く人だということ、そしてこの人こそ私を不良の道にいざなった張本人だということも。

 いや、人のせいにするのは良くない…。

「それでさ、ライブの後他の出演者と打ち上げするんだけど出る?かっこいいの紹介するよ。ボンバーチキンズのキーボードとか今フリーだって」

 先輩は不良生徒だが、別に悪い人ではない。こうして一人者の私に時々男を紹介してくれる。勿論そこにあるのは先輩が後輩に示す親切心しかない。

 ――だけど先輩は私の本性と本心を知らない。

「すいません、さすがに遅すぎると親煩いんで…」

「あは、歩って真面目~」

「先輩こそヤバくないんですか?」

「いいのいいの~、うちなんてもう完全放任主義ってやつだし。親の期待とか全部弟に向いてっし」

 先輩は笑って返す。たぶん明日の晩、打ち上げの後先輩は家に帰らないんだろうな、なんて考えてしまう。先輩が同じバンドのメンバーと付き合ってることを私は知っている。

 そんなことを考えると胸の奥がチクリ疼く。いつもいつも厄介で嫌な痛みだ。

「あ~アタシ、歩みたいな妹欲しかったな~」

 そう言って先輩は冗談交じりに私に抱き付いてくる。シャンプの甘い匂いと先輩の汗の匂いが私を包む。大好きな先輩の大好きな匂い、その中に微かに彼氏に教わった煙草の臭いが混じっているのが、私はたまらなく嫌いだ。

「先輩、私寄る所有るんで…」

 私は先輩の腕を解いて、廊下を右にそれる。

「んじゃ、明日の助っ人お願いね~」

「分かりました」

 私はそっけなくそれだけ答える。


 この学校に入学して理想と現実のギャップに打ちひしがれていた私は、初夏の昼下がり猪瀬先輩に出会った。

 それこそ一目惚れというものだったのだと思うのと同時に、今ではその恥ずかしい勘違いで悶死してしまいかねない心境に陥る。

 そりゃ誰だって勘違いするはずだ。新緑を蓄えた桜の木々、陽光にきらめく噴水、それらを背景に立つ黒髪の美女を見てときめかないはずがない。事実私はときめいた。そして恋に落ちた。出会いは一瞬、黒髪の美女はすぐに校舎へ姿を消したが、私はその美しい光景に午後の授業が近いのも忘れ立ち尽くしていた。

 名前を知るのは簡単で、あれだけの美人だから少しの聞き込みの後、猪瀬美祢という名前は私の口癖になっていた。

 その頃の私はまだ先輩を清楚でこの腐敗した女子高にあって唯一の希望の光なんだって勘違いして、ほぼほぼ崇拝に近いような感情さえ抱いていた。嗚呼、恥ずかしい。

 だから、先輩が放課後出入りしているという音楽室で偶然を装って出会い、お互い自己紹介をして可愛い名前だねと言ってもらった時の喜びと言ったら無かった。舞い上がった私は、先輩が楽器を得意とすることを知ってさらに尊敬の念を深め、あろうことか「先輩の演奏聞いてみたいです」なんて目を輝かせて聞いてしまった。せいぜいチェロとかヴァイオリンだろうなんて思っていた。

 先輩は快く承諾して私に一枚の紙片を手渡しこう言った。

「週末の7時ここで演奏する予定だから」

 そんなこと言われたら他に答えなんてあるはずがない。はい、喜んで!って私は寿司職人かよ…。

 それで当日私が見たのは、生まれて初めてのロックのライブ。音と熱気が充満した狭いライブハウスのステージ上で、どピンクの髪を逆立てギターを弾く先輩の姿だった。

 とは言え、その程度で冷めないから恋は盲目なんて言うわけで。私は今まで経験したことのない熱気にあてられ、ライブ後先輩に自分も楽器を教えて欲しいと申し出ていた。そこから放課後、音楽室で行われた一対一のギター教室はまさに至福の時間だった。経緯や先輩の本性はともかく、優しくて美人の先輩をその時間だけ独占できるという思いで毎日が輝いていた。先輩に褒められたい一心で私のギターテも上達した。少しでも先輩のようになろうとして不良じみたファッションや態度で振る舞った。気づいた時には私は先輩一色になってて、それが気持ちよかった。

 そんな時、先輩のバンドからベースが脱退した。先輩はすごく悲しんでいたけど、私は不謹慎にもチャンスだと思い、すぐにベースを練習して先輩のバンドに入れるようにと画策した。

 だけど先輩が新しくバンドに招いたベースは私じゃなかった。25歳の男、ベース歴は8年の元バンドマンで社会人で、そして先輩の恋人。私の全ては足元から崩れ落ちた。

 ――自分以外の世界全てを、呪った。

 新たなメンバーが初のライブでお披露目された時、ライブの後楽しそうに話している時、その夜先輩の横に誰がいるのか想像した時、吐き出したくなった。

 また、私の思いは砕け散った。

 それでも、私はいまだに先輩と仲良くしている。明日のライブのように先輩の彼氏が本業で忙しい時、先輩は私に代役を頼むが、私はそれを一度も断ったことは無い。たぶんまだ未練があるからだ。私がベースでライブに出る以上、先輩の横にいるのは私。先輩を独占できるっていう錯覚に全身を捧げる。

 でも、いつまでもそれじゃいけないんだってのも、心のどこかで思っている。


「失礼します」

 放課後の保健室は今日も薬品くさい。

「いらっしゃ~い、春日井さん」

「ん?今日も優姫だけ?」

 間延びした声で出迎えてくれたのは青矢優姫。私と同じ2年生。

 クラスは違うが、合同授業の時知り合いそこから話が合うのと彼女のマンガの貯蔵に惚れこんで友人のような付き合いをしている。はきはきして煩いわけでも、かといって暗いわけでもないので、クラスで不良している私でもとりたて気を使わなくてもいいのがちょうど良い。

 ツリ目で不愛想な私と違って、いつもにこにこして受け答えも優しく人の受けが良い。あとまな板な私と違って巨乳だ。本人は胸やお尻の肉付きが良すぎると悩んでいるが、持たざる者代表の私にしてみれば女性的でセクシーだと思う。ザ・女の子って感じ。

 その少女は困った風も無く答える。

「うん、先生購買部行くって」

「いつもの職務怠慢か…」

 我が校の保険医の職務怠慢はもういつもの事だ。よく保健室に足を運ぶ私だけど、ここの本来の主に会ったのは片手分ぐらい。何かあったらどうするんだと聞いたら、かすり傷程度なら優秀な助手こと優姫が応対して、ヤバい時は救急車を呼べばいいという職務放棄宣言をされてしまった。とんだ不良教師だ。

「はい、マンガ返す」

 教室で呼んでいたマンガを手渡す。

「どうやった?」

 いつも優姫はこうやって私に感想を求めてくる。曰く、他の人がそのマンガにどう感じたのかを知って、感想を語り合いたいらしい。マンガオタクだね、と言った時否定するのではなく、そんなまだまだだよと返答したから間違いなくガチでマンガオタク。

 ま、だからって友達やめるわけでもないけど。

「借りた私が言うのもなんだけど、前回貸したやつまた貸すなよと言いたい」

 ただおっちょこちょいな所はいただけない。

「あ?あれれ?うち何巻貸してた?え?17巻ちゃうかったけ」

「次は18巻たのむ」

「はい…」

 しゅんとなって優姫はカバンにマンガを戻すのだった。

 マンガを返す用事は済んだ。ここで帰ってもいいんだけど、私はいつも通りベッドに横になりケータイをいじる。どちらがそう決めたわけでもないけど、私が保健室に来た時は一緒に帰るということになっている。

 帰りに一人ってのも味気無いし、寄り道するには誰かいた方が楽しいので、私も特にそれを気にしたことは無い。

 ふと、優姫が私の寝るベッドの隣のベッドに腰掛ける。膝小僧が私の顔に向いていた。

「あんな~、春日井さんこんな事聞いてええかな?」

「ん?何?内容言わないと良いも何もないじゃん」

 スマホをいじりながら生返事。無遠慮な態度に意地悪な返答だけど、優姫は特に気にした様子は無い。

「あんな?昨日のニュース見た?同性同士で結婚できるっちゅうやつなんやけど…」

「ん、知ってる」

 我知らず画面を撫でる指が止まる。

「どう思う?春日井さんは?」

「どう、って…」

 いや、そりゃ私としては大歓迎だけどね。でも一応ノーマルで通してるんだからそんな簡単に「うん、いいことだよね」って言えるか!それに教室ではあんなにディスってたんだからなおの事そんなこと言えるわけない。

 私が口籠ってると、いつもの優姫にしては珍しく積極的にぐっと身を乗り出してきた。拍子でスカートの中のパンツが見えそうで少しドキドキした。

「あんな、春日井さんうちに優しいから、春日井さんだけに言うけど…。ウチな、好きな女の人おんねん…」

「え!」

 ちょ、ちょっと待って!え?まさか…。まさかそういう展開?放課後のアンニュイな時間帯、二人だけの保健室、真剣なまなざしの優姫。いやいや、いくらなんでも…。まさか、こ、告白されちゃったりするの?マジで?興味無いとか言ったのに?

 ヤバい、私まで心臓がどきどきしてきた。さすがに寝たまんまはまずいかな?

 そんな私の気持ちなど別に、優姫はその綺麗な唇を揺らした。

「三年の、猪瀬先輩って春日井さん知ってる?」

 ――知ってるも何も知り過ぎてますから―――――!!

「前な先生んところに皆のノート持っていくときな、半分持ってくれてん。めっちゃ優しくて黒髪が綺麗な人やねん。うち、本当にあの人大好きやねん」

 ――うわー!うわー!猪瀬先輩、あんたって人は本当にいい人だよ!私と同じ勘違いしてる人間が他にいるとか、むしろ自分が恥ずかしい。

 もう、私への告白かもという痛い勘違いすら優姫の言葉に吹き飛ばされていた。

「あ、うん、へ~」

 返事になってない返事をするのが精いっぱい。まさか優姫の口から猪瀬先輩の名前が飛び出すとは思ってなかったし、その上好きな相手だとカミングアウトされるなんて思ってるわきゃない。

 ――でも優姫ゴメン…。

「あ~、夢つぶして悪いんだけど…。猪瀬先輩、ノーマルだし、彼氏いるよ?」

 自分でそう言って、その言葉が自分の胸の奥の何かをまた突き刺した。まるで自分で自分に言い聞かせているみたいだ。

「それに優しいけど、優姫が知ってるような優等生ってわけでもないし…」

 さすがにあの黒髪はズラでじつはピンクの髪なんだよとは言えない。

 猪瀬先輩がなんでズラをかぶっているのかってのは、学校との約束らしい。

 私が入学する前、猪瀬先輩と学校との間で一悶着あったらしくバンドを続けるかわり、学校では他生徒への悪影響にならないよう鬘をかぶってピンクのロック過ぎる髪を隠すように言われているらしい。だから鬘とバンドの事は、生徒は知らなくても教師は知っている暗黙の取り決めらしい。

 私もライブに行くまで知らなかったのだ。優姫が知るわけがない。

「春日井さんって先輩の事詳しいの?」

 しまったとは思ったがもう遅い。私があんまり知っているように喋るものだから、優姫の目には興味の文字がありありと映っていた。

「いや、詳しいっていうか…」

 ――優姫と同じで私も先輩の事好きなんだ、なんて言えるわけないですよ!

 もうここは話せることを素直に話してしまう方がいいか。優姫には悪いけど、私のように猪瀬先輩に幻想を抱く被害者は減らした方がいいと思うのだ。

「あのね、私がベースやってることは言ったよね。でね、時々それで猪瀬先輩のロックバンド手伝ってるんだ」

「バンド?猪瀬先輩が?」

 驚きに目を丸くする優姫。

 ま、確かに学校での先輩しか知らないと、バンドとかロックとかとは結びつかないよね。

「優姫をからかってるわけじゃないよ。ホントだから。だから先輩に彼氏がいるのも知ってるし…」

「うち見てみたい。先輩のバンド見てみたいわ」

 丸くなっていた優姫の目は、次に憧れの先輩の勇士を想像して期待と好奇心に輝いていた。

 見たいと言われて見せていいのかどうかは分からない。私でもあの姿には驚愕した。ましてやヘドバン上等なロックよりポップで可愛い音楽が似合いそうな優姫を、あの環境に放り込んでいいのかと問われれば、首を傾げる。

 そんな私が思い悩んでいるのも知らずに、優姫はぐっと距離を縮めて私に顔を近づける。近付くその両目には私への信頼が有る。

「しょうがないな…。明日、祇園のライブハウスでライブやるから来てみれば。たしか、チケットが…」

 カバンの中から友人知人を誘ってと先輩がくれたチケットを取り出す。今まで誰かにあげたことなんて一度も無いそれを差し出す。

「一応渡しておくけど、あんまり優姫には向いてないと思うよ」

「ありがとう、春日井さん。ほんま嬉しいわ~」

 ――ああ、もう、そんなにニコニコしやがって…。

 なんだろうか。心の奥がもやもやして軋む。友達が同じ人を好きになっていたから、嫉妬なのだろうか?私にはどうしてもその痛みの正体が分からなかった。

「うち、ライブってホンマ初めてや」


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