七月十四日
顧問がまたわけのわからないことでキレた。自分自身も真剣に諭しているつもりなのを生徒から「キレた」とされてはらわたが煮えくりかえる思いをしたが、なるほどあれは確かに「キレ」てる。
人間どうすると間抜けに見えるかというのがよくわかった。
いったい彼はうちの部員たちに何を望んでいるのだろうか。体育会系に自己中なやつが多いから体育会系は嫌いだといつか行っていたように思うのだがそれは自分の気のせいだったのだろうか。
「すいませんでした」
「すいませんじゃねえんだよ。おまえら何が悪かったかわかってんのか?」
「はい」
「はいじゃねえよ。わかってねぇだろ。うそついてんじゃねえよ」
「うそついてません。体育館にいました」
「いなかっただろ。二時から練習だって予定表にもかいてあったのな。あ?なんだよ、なんでお前が切れてんだよ?」
「きれてないです」
「きれてんじゃねえか。おまえほんとになんにもわかってねぇな。やめちまえ、学校やめろ。迷惑なんだよお前らみたいなやつがいると」
・・・なにをさせたいのかさっぱりわからない。謝っても受け付けないし、黙ってれば怒鳴るし、質問に答えればやっぱり怒鳴るし。
40分近く好きなだけどなり散らした顧問を仕方なしに追う。
「先生」
「や、樋口先生。どうもすみません」さっきの今でニコニコしている。
「あの、これからどうしたら」
「いやいいんですよ。僕はもうあいつらのことなんかなんにも知りませんから」
うそつけ。趣味も恋人もいなくて部活しか居場所がなくて夏休みにちっとも休めない予定組んだ癖に。唯一自分が王様でいられる部活って箱庭が好きで好きでしかたがないくせに。ていうかなにその顔。裏表使い分けちゃうじぶんかっけーとか思ってるんですか。
そもそも、うちの子たちが規律ある行動とか時間厳守とか、できると思ってんですか。できないからこそここにいるんでしょうが。あんたの要求は脚のない人に歩けっていうようなものです。
今日講堂で薬物乱用に関する講話がありましたけどね。あんなのでたらめですよ。薬物は別に悪くない。っていうかただのモノに、いいとかわるいとかそういうものありませんから。薬物で身を持ち崩す人はね。たとえ薬物と出会わなくたって、遅かれ早かれ何か別のもので破滅するんですよ。それだけの人間だったってだけです。それをモノのせいにするのはどうかしている。ギャンブルだって薬だってお金だって恋愛だってセックスだって車だって掃除だって水だって猫だって太陽だってタバコだって観葉植物だってダーウィンだってシェイクスピアだってAKB48だって田村正和だって洗濯機だってかぴパラさんだって怒りや、嫉妬や、怠惰や、悲哀や、空気だってある人にとっての破滅のスイッチ(あるいは原因)になるわけだけど、それらが悪いわけじゃ決してない。モノでだめになる人は、結局それだけの人間だったってこと。進化論だよ。弱い種は滅びて強い種だけが生き残る。たった一粒の種のくせに思考能力があるから人間だけはこうやってぐちぐちぐちぐち悩まなきゃならないわけだけど、その悩みだってしたってしなくたって同じようなもの。経路がどうねじ曲がってもひとは自分が生まれついたようにしか生きられない。
ふう。
とりあえず、自分の武勇伝ときれいな理想論をここで、世の中のくずの吐きだまりでドヤ顔して語るのは勘弁してほしい。
明日の授業がいや過ぎてリバった上にビールまで飲んでしまった。ろれつがあやしい。
ようこちゃんは寝ます。明日もあるし。おやすみ!