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「20080808 am10:00-11:00 森にて」

さて、阿蘇チームでは、宝探し開始です。

「20080808 am10:00-11:00 森にて」





「はいはい、ちゅうも〜く!!!」



 パンパンと手を叩きながら、明はその場に集まった仲間の視線を自身へと集めた。

 メンツは、昨日と同じである。騒いでいる場所は、昨日暦の親父さんにお仕置きされた、神木の傍。


 ちなみに、そこに居る全員が全員、長袖長ズボンに水筒及び首掛けタオルという、フル装備の出で立ちだ。

 


「それでは、これより裕也副総監から本日のミッションについて説明がある!

全員、心して聞くように!」



 話を振られた裕也は、「サー、イエッサー」と、明らかに管轄が違うだろうという人の返事を返す。

 それを見た信也は反笑いのあきれ顔。暦に至っては真顔で、「死ねば良いのに」と呟いていた。



 そんな冷めた二人を余所に、裕也は話を進める。



「昨日、明総督のPCあてに、このようなものが送られてきた!

一見するとミミズがのたうち回っているようにしか見えないが、ところが!

ところがよく見ると、これは地図なのだ!ーーーということに、俺は気がついた!」



 でん!とばかりに裕也は地図という名のコピー用紙を、二人に押し付けた。その際、少しばかり、暦の控えめな胸にソフトタッチをかまして二三発しばかれたのは、ご愛嬌だとしておこう。



「まぁ、地図っちゃ地図じゃね?

しかも、ピンポイントで此処に宝が埋まってそうな地図だな……で、これが?」



 信也達が覗き込んだ地図は、まさに、地図だった。それは、あからさまに自分たちの神木を中心点において描かれたものである。

 刻まれている地名や、ちょっとした目印となる自然物、あるいは山のカタチなど、それらすべては、『地元の人間』しか分からないだろう書かれ方だ。




 ……あからさまに、うさん臭い代物である。仮に、これが地図だとすれば、これを書いたのはどう考えたところで地元の人間なわけで。

 そんなものが、明のPCに送られてくるようなシュチュエーションはあり得ないわけで。しかも、誰から送られてきたものかを二人は語らないわけで。


 そんなわけで、だらだらと汗をかきながら信也は、裕也に問い返したのだ。

 暦も、信也と同じように感じている様子。

 



「だから、さがすんだよ、宝をさ!

いやーーーー夢を、探すんだ! 皆で!」




 声高に叫ぶ裕也と、それにウンウンとうなづいている明。

 信也と暦はそんな二人を背に、下山しようと身支度を始めた。


 あまりにも、連れなさすぎる光景である。



「ちょっ、おまえら、ひどくない!?

もうちょっとつき合えよ!」



 あわてて暦と信也の袖を掴んだのは、明だ。二人の行動が理解できないとばかりに、その顔には驚愕が満ちていた。



 それを見下ろしながら、暦はため息まじりに返す。



「あのね、いきなり朝一で

『9時半に登山フル装備で縁結びの神木までこい、さもなくばマジで後悔するぞ』とか、何の説明もなく、そんな分けのわかんない電話されただけでもーーー腹立つのに、オチがこれ?」



 暦に同意するとばかりに、信也もうなづいた。

 ちなみに信也に関しては、「登山装備、昨日の神木、9時半、作戦実行」という、イタ電レベルの集合大号令である。



「だいたい、これが地図として、だからなに?

おまえら、やるならもうちょっとやりこめよ……こんなの、だれも引っかからないって」



 イタ電レベルの電話を受けた信也は、二人の言う宝探しをやはり、ただのイタズラとしてしか認識していなかった。信也の中では、地図にそって宝箱を探し当てると、『はい、残念でした、また来週!』と書かれた紙が一枚きり入っているというオチまで見えている。




「いや、これマジだって!俺たちもそんなに暇じゃねぇよ!?」


 

 時間は無限にあり、俺はそのすべてを遊びに費やすと言ったのは、だれだったか。暦の記憶では、目の前のサルだったように思えてならない。


 ……喚く裕也に、暦は「だったら、だれから送られてきたのよ、その地図?」とため息まじりに問い返した。暦的には、これで試合終了、3-0で、自分と信也の勝ちーーーと、成るはずだった。



 ところがである。




「送っての来たのは、おれの彼女だよ。

雫って、前にも話したろ?あいつが、それ送ってくれたんだ……」




 答えたのは裕也ではなく、明だった。




 空気が、微妙に凍る。

 それは、KYの日本代表に選ばれてもおかしくないと評される明にも、読み取れる程に。



 具体的には、暦がその場の空気を凍らせていたーーー裕也に。

 目の前にたまたま居た、無実の裕也に無表情でアイアンくろーを掛ける事によって、

 ギチギチと、裕也の頭から快音を響かせる事によって、暦は真夏の空気を、背筋が寒くなるくらいにはーーー凍らせていた。



 


次回は、松島へ。

雫たちは、祖母の病院へと向かいます

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